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王総御前試合編
85 カード封じ
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魔法の衝撃波で土煙がおきる。
やがてだんだんと消えて景色は晴れていく。
「なに……!?」
俺はおもわず息を呑んだ。闇の騎兵団は墓地に送ることができた。なのに、なぜ、悪魔のカードはキズひとつついていない。
「フ、フフ……。『封印の悪魔(デビル)』レコード【生死の超越】このカードは物理・魔法によるいっさいのダメージを受けない。また破壊もされない」
センは悪魔のカードをかまえて言う。
ば、ばかな……。
「破壊……されない……だと」
破壊、できない……
これが災厄カードの強さ。理不尽なまでの圧倒的な暴力。
失意のままに、エリュシオン、アグニオン、ケセラン、すべてが敵の攻撃によって一瞬で倒された。
俺の意識とともに、炎も消えかけていく。
身体から力が抜けていく。膝から崩れ、地面に突(つ)っ伏(ふ)くす。
だ、だめなのか。
このターンで……終わってしまうのか。
どうしていつもあと少しってところで……
カードゲームってやつは勝てないんだろうな……
あとすこしなのに……
「……けて……!」
薄れていく感覚のなかで、なにか声が聞こえた。
わずかな気力で顔をうごかすと、センが苦しそうに自分の顔を手で覆っていた。
「な、なにがどうなってるのかわからない……! た、ターンを終わらせる……! エイト……たすけて……!」
センの言葉をきいて、奇跡みたいに戦うためのエネルギーが回復したきたわけではないが、呼吸が激しくなってきた。自分のどこにまだこれだけ息をする力が残っていたんだというほどに。
本当のカードゲーマー……か。
地面になさけなくしがみついている自分の手。そこにある腕輪があたたかい光を放っているのが見えた。
これは……
「ま……まだまだァッ!!!」
俺は地を押し出すように力をふりしぼって立ち上がる。限界は越えている。もうこれからなにをしても最後だ。
「そんなちんけなカードで……なにができる?」
センはふたたび自我をうしない、狂気に満ちた目で言う。
俺の前のテネレモはまだ勇敢に四足で立っていて、まるで勝負を捨てていない。こいつがまだやれるというのに、カードゲーマーの俺が逃げるわけがない。
「たしかにこのカードより強いカードはいくらもあるぜ。だがな……俺はこのカードを信じている。強さってのは圧倒的な破壊力のことだけじゃない。命を守り育む力。どんな逆境にも屈しない心。それもまた強さだ! 俺たちの信じる強さで、お前に勝つ!」
カードを引く。光がしなる。何度も何度も、何度も何度も繰り返してきた動作だ。
「俺のターン! ドロー!! 『古(いにしえ)の一族フォッシャ』を召喚!」
まばゆいオーラを放ち、犬だかネコだかわからない、俺の相棒が召喚される。
「これが最後のターンワヌ!」
「なんだ……!? そのカードは……!?」
センが驚くのも無理はない。そもそもこいつはカードじゃないんだからな。
フォッシャのアドバンス【カード封じ】。これによって非常事態にそなえてフォッシャをカードとして出せるようにしておいたんだ。
「テネレモ【ドレインフラワー】、ヘハセートと悪魔を攻撃! さらにフォッシャアドバンス……【カード封じ】! ダメージを与えたカードを封印しこのゲームから除外する!」
吸収の種がヘハセートに取り付き、オドの力が収束して1枚のカードへともどっていく。このゲームからは除外されもう使うことはできない。
フォッシャの新しい力。彼女が努力して手に入れた世界を救うための力。
「ただのんびり食っちゃ寝してたわけじゃないワヌよ! 特訓の成果と……みんなが支えてくれて手に入れたちからワヌ!」
「バカな……!? だ……だが封印の悪魔に攻撃は通じないッ」
「……。フォッシャは場にあるすべてのカードを強化する。さらに一度だけ無条件にカードのシークレットスキルを使用することができる。テネレモシークレット【真化:テネレハ】ドレインフラワーは蘇生魔法【生命の息吹】に変化する!」
「蘇生魔法……だと!?」
「生死を超越しているなら、逆に命を与えればいい。蘇生させるのは……悪魔のカード!!」
悪魔の身体から花が咲き、植物のつるが伸びてまるで生け花のように豊かな自然の命が芽吹く。
最後に繰り出したのは、なんてことはない。フォッシャとテネレモによる悪魔へのただの体当たりだ。
だが命がある今ならあんなのでもわずかなダメージになる。そして同時に、センへのダメージにも。
白い煙(けむり)があたりに満ちだす。センの炎が揺らぎ、そしてセン自身もだんだんと煙とともに消えていく。やつのなかにある神の知恵のカードはなくなりつつある。
封印の力でだんだんとやつのデッキにあった災厄も、1枚のカードに帰っていっているのだろう。
「まだだ! 勝者は僕だ!」
カードをかまえるセン。まだなにか手があるのか。
もう俺は力を使い果たした。最後のとどめを刺すことはできない。
立っていられずに、地面に膝と手をつく。
……ここで、限界か。
もう気合でもどうもできない。感覚がないだけじゃない、動けって信号が脳から行ってねえし、筋肉はうごかない。
でも……カードは友をつなげてくれる。
先手は打った。あとは信じるだけだ。
ハイロ……カードで……決めてやれ……!
さっきのテネレモのドレインフラワーでハイロとローグを閉じ込めていたオドの檻にダメージを与えておいた。さらにカード封じの力で解除し、全てをハイロとフォッシャに託した。
「フォッシャアドバンス……『カード封じ』!」
ハイロが力のかぎり叫び、スキルを発動する。
生死を超越した悪魔、そして神の知恵により暴走したセン、すべてが終息に向かっていく。
光と煙が街を覆っていた闇を払い、ウォリアーはカードへと戻っていく。
この場所から煙がなくなったとき、数枚のカードと、気絶しているセン、そして静けさだけがあった。
「終わった……」
ハイロが言ったのか、自分が言ったのか、わからない。かすれるようなそんな声が、しぜんと出てきた。
やがてだんだんと消えて景色は晴れていく。
「なに……!?」
俺はおもわず息を呑んだ。闇の騎兵団は墓地に送ることができた。なのに、なぜ、悪魔のカードはキズひとつついていない。
「フ、フフ……。『封印の悪魔(デビル)』レコード【生死の超越】このカードは物理・魔法によるいっさいのダメージを受けない。また破壊もされない」
センは悪魔のカードをかまえて言う。
ば、ばかな……。
「破壊……されない……だと」
破壊、できない……
これが災厄カードの強さ。理不尽なまでの圧倒的な暴力。
失意のままに、エリュシオン、アグニオン、ケセラン、すべてが敵の攻撃によって一瞬で倒された。
俺の意識とともに、炎も消えかけていく。
身体から力が抜けていく。膝から崩れ、地面に突(つ)っ伏(ふ)くす。
だ、だめなのか。
このターンで……終わってしまうのか。
どうしていつもあと少しってところで……
カードゲームってやつは勝てないんだろうな……
あとすこしなのに……
「……けて……!」
薄れていく感覚のなかで、なにか声が聞こえた。
わずかな気力で顔をうごかすと、センが苦しそうに自分の顔を手で覆っていた。
「な、なにがどうなってるのかわからない……! た、ターンを終わらせる……! エイト……たすけて……!」
センの言葉をきいて、奇跡みたいに戦うためのエネルギーが回復したきたわけではないが、呼吸が激しくなってきた。自分のどこにまだこれだけ息をする力が残っていたんだというほどに。
本当のカードゲーマー……か。
地面になさけなくしがみついている自分の手。そこにある腕輪があたたかい光を放っているのが見えた。
これは……
「ま……まだまだァッ!!!」
俺は地を押し出すように力をふりしぼって立ち上がる。限界は越えている。もうこれからなにをしても最後だ。
「そんなちんけなカードで……なにができる?」
センはふたたび自我をうしない、狂気に満ちた目で言う。
俺の前のテネレモはまだ勇敢に四足で立っていて、まるで勝負を捨てていない。こいつがまだやれるというのに、カードゲーマーの俺が逃げるわけがない。
「たしかにこのカードより強いカードはいくらもあるぜ。だがな……俺はこのカードを信じている。強さってのは圧倒的な破壊力のことだけじゃない。命を守り育む力。どんな逆境にも屈しない心。それもまた強さだ! 俺たちの信じる強さで、お前に勝つ!」
カードを引く。光がしなる。何度も何度も、何度も何度も繰り返してきた動作だ。
「俺のターン! ドロー!! 『古(いにしえ)の一族フォッシャ』を召喚!」
まばゆいオーラを放ち、犬だかネコだかわからない、俺の相棒が召喚される。
「これが最後のターンワヌ!」
「なんだ……!? そのカードは……!?」
センが驚くのも無理はない。そもそもこいつはカードじゃないんだからな。
フォッシャのアドバンス【カード封じ】。これによって非常事態にそなえてフォッシャをカードとして出せるようにしておいたんだ。
「テネレモ【ドレインフラワー】、ヘハセートと悪魔を攻撃! さらにフォッシャアドバンス……【カード封じ】! ダメージを与えたカードを封印しこのゲームから除外する!」
吸収の種がヘハセートに取り付き、オドの力が収束して1枚のカードへともどっていく。このゲームからは除外されもう使うことはできない。
フォッシャの新しい力。彼女が努力して手に入れた世界を救うための力。
「ただのんびり食っちゃ寝してたわけじゃないワヌよ! 特訓の成果と……みんなが支えてくれて手に入れたちからワヌ!」
「バカな……!? だ……だが封印の悪魔に攻撃は通じないッ」
「……。フォッシャは場にあるすべてのカードを強化する。さらに一度だけ無条件にカードのシークレットスキルを使用することができる。テネレモシークレット【真化:テネレハ】ドレインフラワーは蘇生魔法【生命の息吹】に変化する!」
「蘇生魔法……だと!?」
「生死を超越しているなら、逆に命を与えればいい。蘇生させるのは……悪魔のカード!!」
悪魔の身体から花が咲き、植物のつるが伸びてまるで生け花のように豊かな自然の命が芽吹く。
最後に繰り出したのは、なんてことはない。フォッシャとテネレモによる悪魔へのただの体当たりだ。
だが命がある今ならあんなのでもわずかなダメージになる。そして同時に、センへのダメージにも。
白い煙(けむり)があたりに満ちだす。センの炎が揺らぎ、そしてセン自身もだんだんと煙とともに消えていく。やつのなかにある神の知恵のカードはなくなりつつある。
封印の力でだんだんとやつのデッキにあった災厄も、1枚のカードに帰っていっているのだろう。
「まだだ! 勝者は僕だ!」
カードをかまえるセン。まだなにか手があるのか。
もう俺は力を使い果たした。最後のとどめを刺すことはできない。
立っていられずに、地面に膝と手をつく。
……ここで、限界か。
もう気合でもどうもできない。感覚がないだけじゃない、動けって信号が脳から行ってねえし、筋肉はうごかない。
でも……カードは友をつなげてくれる。
先手は打った。あとは信じるだけだ。
ハイロ……カードで……決めてやれ……!
さっきのテネレモのドレインフラワーでハイロとローグを閉じ込めていたオドの檻にダメージを与えておいた。さらにカード封じの力で解除し、全てをハイロとフォッシャに託した。
「フォッシャアドバンス……『カード封じ』!」
ハイロが力のかぎり叫び、スキルを発動する。
生死を超越した悪魔、そして神の知恵により暴走したセン、すべてが終息に向かっていく。
光と煙が街を覆っていた闇を払い、ウォリアーはカードへと戻っていく。
この場所から煙がなくなったとき、数枚のカードと、気絶しているセン、そして静けさだけがあった。
「終わった……」
ハイロが言ったのか、自分が言ったのか、わからない。かすれるようなそんな声が、しぜんと出てきた。
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