過去に戻るインスタッレ(完結)

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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11) 未遂

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あの女の人は誰……
何故そこにいたの
まるで私が何をするかを
知っていたように



「美衣祢さん、死ぬ気でしょ」



私の名前も知っていた
だからってあの笑いかたは……



私の知らない人なのに
彼女は私を知っている
誰……



「貴女のために多くのものを失った人を可哀想だと思わないの。勝手に死ぬって、そんな命なら最初から……」



言い淀んだのは何故
彼女は
四阿野原しあのはら君の親戚なのかしら
奈利子ちゃんに似ているけれど
やっぱり
奈利子ちゃんのように
お兄さんの人生を
台無しにされたと
恨んでいるかしら



マンションの屋上に上ってみたら
フェンスを背にしていた彼女に
「やっぱり来ると思ってた」
と言われた



「え、貴女どなたですか」



「美衣祢さん、死ぬ気でしょ」



「え……」



その時になって初めて
私は自分が何をしようとしていたのか
彼女に問質といただされて混乱しながらも……



「貴女が死んでも誰も報われない。却って傷つくだけよ。余計なことは止めてね」



私への思い遣りではない
鋭い語調で『余計なこと』と……
私は辛い
どうすれば良いのかわからない



「犯人を野放しにする気なの。探しなさいよ。そうすれば美衣祢さんだって救われるのよ」



彼女はフェンスから離れて
すれ違い様
冷たい目で私を見た



まるで四阿野原しあのはら君の妹さんの
奈利子ちゃんの目付き
同じ目付きだ
痛い……


彼女が立ち去り際に言った一言
「自分一人が辛いみたいな顔で、何もしないで死んだら許さないから」



自分一人が辛いみたいな顔……












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