聖書サスペンス・領主殺害

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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第二章 カリギュラ暗殺

(62)金貸しの最後

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領地は潤い全ての民もリトワールの命日には「勤勉慰労の日」と銘打っての祭りを楽しむことができるように、その日に付随する特典を幾つか設けた。

その中に、金融業に関する貸借の金利の引き下げを含めた。年率いくらまでと上限を定め、今年の初旬に遡って適用するとし、全ての金貸しの帳簿を没収して調べた。新たな利率以上の稼ぎのあった金貸しには、それを過払い金として返却するように求め、役人が監視した。

アントワーヌの両親は既に数年前に亡くなっており、借金過払い金については対象外となった。
が、それでも息子であるアントワーヌに労働を強いたことへの処罰によって、金貸しに大きな打撃を与えることができた。

金貸しの利率の引き下げは、国を潤す。多くの民が返済しやすい金利で利用できるために、経済がスムーズにはかどり、ジグヴァンゼラの領地の民は領主の辣腕に感服した。

金貸しの中には首を吊る者も出た。それがアントワーヌの雇い主だった。

「やれやれ、金を返せなくて首を吊る者は大勢いたが、金を貸して首を吊るようになるとは思いもよらなかった。情けは人の為ならず自分に巡ってくるものなのだな」

金貸しはそう呟いて首吊りの縄に首を掛けた。

アントワーヌはその死体を下ろす処を自分の目で見たいと言う。綺麗に着飾らせて四頭立ての馬車に乗せて執事見習いの若者と共に町に行かせた。

役人と死体を処理する葬儀屋が、アントワーヌの到着を待っていた。醜く糞尿を垂らした首吊り死体を其のままに、家屋の外に並んでいた。

アントワーヌは、生まれてからこのように装ったことは一度もないという豪華な衣装に身を包んでやってきた。その衣装はアントワーヌの為に夜を徹して急遽用意した、大金を掛けたきらびやかな衣装で、王族にも負けない華やかさは辺りにため息の渦を生む。

見知った屋内に入って憎い敵の最後の姿を目にしたアントワーヌの身体を激震が突き抜ける。執事見習いが支えなければ崩れ落ちるほどの衝撃だった。

「あははははは、あははははは」

アントワーヌは狂ったように笑う。涙を流しながら高らかに。

母親の貞操を奪い父親と母親の命を奪い、まだ世間を知らない幼い子供を犯した金貸しの最後は、醜い首吊りの姿になってぶらさがっている。首には掻き傷があり、顔は苦悶の表情を浮かべていた。直ぐにでもジグヴァンゼラと抱き合いたい。身体が奮えた。

金貸しの首吊りは予見していた。それはジグヴァンゼラが画策した計画的殺人だった。領主はこの地域の法律だったから、理由さえ正当なら処刑の名目で誰を殺すのも自由だ。

ジグヴァンゼラはその恐るべき権力を、気に入った少年のために生まれて初めて行使した。過払い金返金政策は計画的殺人のためだった。ジグヴァンゼラに罪悪感はない。美しく装ったアントワーヌの喜びに満たされた顔に満足した。それは痺れるほどの快感だった。

本来、アントワーヌを館に雇い入れる為には、金貸しとの間で契約を結ばなければならない。ジグヴァンゼラはその契約を無視して、金貸しを滅びに陥れ、アントワーヌを奪い取ったことになる。

魔王カリギュラと呼ばれた若き日の噂が、民の中で蘇る。

ご領主様は魔王カリギュラであらせられる。しかしそれは民の繁栄を願ってのこと。懐の深いお方なればこそ。魔王カリギュラ万歳。我々はこの領地を守り、豊かな社会を作ろうではないか。

民の声はアントワーヌの甘い囁きになってジグヴァンゼラの耳に入った。アントワーヌはジグヴァンゼラに甘えて熱烈に求める。ジグヴァンゼラの萎えた一物は役に立たなかったが、手慣れた愛撫でアントワーヌを可愛がり、何でもしてやろうと溺れて誓った。

「ああ、ご領主様。最高の気分。私の人生最高の日です。ご領主様、ジギー……ジギー」




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