94 / 165
第5章 婚前交渉ヤバ過ぎる
(18)アントローサの思い
しおりを挟むカナンデラとラルポアは二人揃ってアントローサ総監にお目玉を食らった。アペロを楽しんでから帰宅すると連絡してから数時間後、ショナロアの心尽くしのディナーはすっかり冷めて、帰宅したのは10時を過ぎていた。
「昨日は外泊、今日は門限破り」
「でもね、そんなお子様タイムではラナンタータだって婚活できませんよ、伯父さん」
言い訳はカナンデラに任せて、ラルポアはラナンタータを見た。
ラナンタータは
デカダンス・ジョークから様子がおかしい。
あのローランとかいう
タワンセブジュニアのせいだ。
少し話をしただけなのに
女子学園で男免疫のないラナンタータは
秒殺された。
仕方のないお姫様だ。
急に笑ったりため息を吐いたり
気分のアップダウンが激しい。
もしかして恋……
恋の病は躁鬱障害を併発するものらしい。
一目惚れと言うやつか。
女の罹患る病。
しかし、アントローサ総監には
伝えられない。
ローランはマフィアの跡継ぎだ。
ラナンタータ姫の恋の相手には
相応しくない。
僕がなんとかしなければ……
ラナンタータは、デカダンス・ジョークでの楽しい論議を思い出していた。議題は『封建制度からの女性解放』と『数の暴力と権力』について。店内が沸き立った。
ラ・メール・ユウコが議長で、番号札の上がったテーブルの番号を指名すると、そのテーブルの論客がステージで議題に対する持論を展開できるという仕組み。
論客は客席からの質問にも答える。次々に論客が替わり、ローランがステージにたった。
ラナンタータはため息を漏らす。
素敵。ローラン……
お友達になりたい。
金髪に紺のハイネックのセーター。
『此の国にも、隣国の革命を語らずには通れない闇の時代があった。今は民衆からも代議士が選出されるが、それは民衆の側から貴族院政治に対する数の力という一つの権力であったはずだ。
しかし現在、代議士は全国民の意志を反映しているだろうか。
九年前に周辺国で起きた大戦に参加するか否かで国が二つに分かれ内紛まで起きたのは、貴族院と一般大衆が混じり合っての二極化が起きて混迷したからだ。
先の大戦には参加しなかったものの、大戦が一度起きたのであれば、あのような世界大戦が再び起こる可能性は十分にある。
此の国が平和な国家であり続けることができるかどうか、我々が国民として手にしたはずの数の力を、その国民力を、如何に使うかが問われている。
僕は若輩者だが、代議士制度と貴族院は廃止すべきだと考えている……』
廃止してどのような政治形態を構築するかと質問されて、ローランは国民投票政治の考えを提示した。
『先ずは貴族制度の廃止。国民は皆一人に一つだけの命を持った平等の生き物であり、生まれで身分が決められるのはおかしい。身分制度という古い権力を廃止すること。全てを平等から始める。
貴族の占めていた地域の経済活動全てを企業化すれば人員は給料で雇われ、経済が回り、国が豊かになる。非雇用者は数の力を手にすることになるが、それを暴力にさせない為に雇用法を作る。どの地域でも適応される法で、法の地域格差を無くす。法は、全ての国民の投票で決める。政策も同じく、全国民の投票で決める』
ラナンタータは一生懸命拍手した。
『素敵、素敵』
素敵を連発してローランを目で追う。
『個人的にお話ししたい。其のアイデアはまだ詰める処が沢山あるよ』
興奮した。
『駄目だよ、ラナンタータ。もう帰らなければ。アペロだけの約束だ』
ラルポアにはアントローサ総監顔がちらつく。
『もう少し、ね。ラルママと一緒だから安全だし、私はもっと早く来たかったな』
それで帰りが遅くなった。
ラルポアはアントローサにローランについて話せなかった。
階段を上りながら、明日も行こうねとラナンタータがこっそり囁く。
ラルポアは廊下の曲がり角で先を歩くラナンタータの腕を引いた。力が入りすぎたかラナンタータの身体が胸にぶつかる。ラルポア自身が驚いたが、そのまま抱き締めた。
「駄目だよ。もしも他の男にこういうことをされたらどうするの」
「どうするか考えていないけど、もしもローランなら私は嬉しい。恋だと思う」
「ラナンタータ、相手はマフィアだよ。君は警視総監の娘だ。許されない恋だ」
親のように抱き締めながら呟く。
「でも、好きなの。ラルポア、私、おかしいの。とっても好きになっちゃって、恋だよね」
「駄目だよ、ラナンタータ。君は貴族の娘だ。立場が違う。身分が違う」
「ラルポア、身分なんか関係ない」
廊下の曲がり角に差し掛かったアントローサは、此のやり取りを途中から立ち聞きした。
そういうことだったのか
娘よ。
やっとラルポアの良さに気づいたか。
ああ、なんという素晴らしい展開だ。
こんなことなら二人とも
門限など気にぜずとも良い。
バンバン破れ。
ラルポア、身分など最早関係ないぞ。
私はお前がまだ幼い頃から
跡継ぎにしたかったのだ。
私はお前の父親になる。
結婚式はいつにする。
私とショナロアは
お前たちとダブル婚出来る訳だ。
早速、ショナロアと話そう。
アントローサ、それは早とちりだと教える者はいない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる