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12 全員マスク
しおりを挟む『だから、チョコはアレだよ。お父さんにも似てないから、きっとアレ。う、わ、き……浮気の子供』
其れがバレて離婚したのだろうか……
僕は、チョコちゃんの多分話を鵜呑みにして思い込みで考えてみたけれど、チョコちゃんママにとっては失礼極まりない話だよな。
何も知らない中坊が大人の人生に口出しするな、と激怒するだろうな。勿論、僕は何かを思ったからといって何でも口に出すのは嫌いだから、此のことも口には出さない。
「波流、お前はどうなんだ。そんな関係ではないと夕べも話したよな。お父さんは信じているけど」
けど何……
そう言えばチョコちゃんも、けど何……って顔で僕を見たっけ。コンパクトの小さな鏡に向かいながら。何の話をしていたんだっけ。
「お父さん、お母さん、僕を信じてくれて有り難う。僕たちを信じてくれてっていうべきだね。音理ちゃんのお母さん、僕たちが何をしていたのか、これを見てくれればわかります」
僕はスマホの画像を出して、手渡した。
「あら、可愛いじゃない」
チョコちゃんママは、ついうっかりといった調子で褒めてくれたけど、続きがあった。
「でも、だからレズビアンごっことか言うわけね。女の子に変身してエロいことをするなんて」
うわあ、参った。そう来るか。
「大体、親が留守だから気兼ねがなくて二人で刺激的なレズビアンごっこをしてめちゃくちゃ遊ぶとか、そんなことはラインを読めば何のことかわかります」
「波流、何のことだ。レズビアンごっことは」
「まだやっていないよ。スマホ画像の自分にチューすることだよ。僕たちはメイクして遊んでいただけです。しかも、コマルナが怖いから庭でやってたんです」
コマルナというフレーズで大人たちは顔を見合わせた。そう言えば、全員がマスクだ。僕とチョコちゃんは笑った。大人たちも追従して仕方なさそうに笑う。
「コマルナ感染しないようにノーコー接触って無理さ」
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