中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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「それでな……」

お父さんはソファーに座って僕を向く。僕はキッチンのテーブルだから、目線が見下ろす形。

「お父さんも悩みがある」

「へぇ、お父さんの悩み……」

茶化さないで聞こう。

「ある。あの女の子ではない事務員のことなんだけどな、お父さんは今がモテ期らしい。困っている。
好意を持たれて確かに嬉しかったんだ。お母さんのこともあったからデレデレしたかもしれない。迂闊に誉めすぎたり、優しくしすぎたような気もするな。
そういうことは反省しても遅いんだ。相手も感情を持つ人間だからな。
お父さんは、今年で四十になるから、そういうこともあったかも。まだまだいけるぞ……と、思った。
そういう邪な気持ちでヤバいことになり掛けたんだ。一緒に飲んでホテルの前を通った」

「え」

「大丈夫だ。お父さんは疲れていて、しかも、ネクタイの子が声をかけてくれた。それでその夜は三人で立ち話をして別れた。それからコマルナで仕事が半減したから彼女は休んでいる。怖いのは、出てきた時だ」

「怖いの」

「傷つけずにわかってもらいたい。お父さんにはそういうことに突っ走る気持ちはないと。壊れかけた夫婦関係でも、お父さんが外で勝手に壊わすようなことはしない」

「成る程」

「浮気のチャンスだったんだけどね」

「タイプじゃなかったとか」

「違う。怒るぞ。相手は可愛い若い子だ。ただお父さんは、お母さんと上手くいってなくても浮気はしない。お母さんは誤解しているだけだ」

「じゃあ、お母さんに相談してホームパーティを開いたら。ネクタイの人と彼氏さんと、お父さんの上司の人と」

「コマルナ休業中だから六月以降か。お母さんには何と言うんだ」

「ああ、さっぱりした」

いきなりお母さんの声がして、僕とお父さんは驚いた。

「六月以降ならそれまでに料理の腕を上げて、そのお父さんのタイプの若くて可愛い子をギャフンと言わせられるかも。ふふ、楽しみ」





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