中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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96 スリルと理性

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学校で誰が聞いているかわからないのに溺愛王子とかメロメロとか言われると、スリルがあって新鮮で頬っぺたが弛む。


チョコちゃんの耳元にマスクの口を近づけて「良かった、喜んでもらえて」と伝えた。


チョコちゃんとハグしたら噂になるだろうな。

チョコちゃんの為にやめておこう。

でも、気づいたら壁ドンになっている。

知らない男子がピーピーと口笛を吹いて囃し立てた。何人かが廊下に出ている。僕はVサインを出した。女子も出てきた。


「何だか見られているね」

「恥ずかしいの。僕は平気だよ」


慣れてるから。


「動物園の檻の中にいるみたい。見物人に見られて話するって」

「わははは。動物園の檻の中……」


チョコちゃんは天才だ。


「僕はずっと独りで檻の中にいたよ」


チョコちゃんがマスクの顔で僕を見上げる。目だけが出た顔は驚いていて、それから目の色が深まって「そうだよね」と呟く。


「波流君はいつも見られていたもんね」

「ふふ、だから」


僕はチョコちゃんの耳に「ハグもできる」と囁いた。


「どうせ見られるならハグもできるもんね。でも、大丈夫、しないから。学校では皆が騒ぐから面倒だ」


チョコちゃんは感電死寸前だ。

壁ドンした僕の腕に頭を凭れて「し、信じられん」と奮えた。


「信じてよ」


本当は男らしく『信じろよ』と言ってみたかったけど、そう言ったらハグしなきゃあ気が収まらなくなるか、引っ込みがつかなくなるかのどっちかだ。

言葉に操られそうな気がする。

チョコちゃんと長く付き合う為に理性は必要だ。


チョコちゃんが小さな声で「波流君、スキップ百万回」と言った。

僕も「チョコちゃんすき焼き百万回」と返す。

周りの目が集まって中から冷やかしが飛ぶ。


「怪しい関係」


チョコちゃんが「親戚だよ」と返す。


巧いな。

流石だけど、それはそれで少し寂しい。

しかし、何と答えてほしかったのだろう。

僕は何なのだろう。

チョコちゃんも僕の何なのだろう。














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