中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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112 ノートの取り方

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今日は持っている教科書の全教科を軽く復習した。一教科がだいたい十分から十五分の間くらい。


「チョコちゃん、授業中に先生の話で印象に残ったことを、ノートのここ、上の白いスペースに書いておくと役に立つよ。冗談でも良いんだ。短く簡単にメモしてみて。僕のノートを見る。落書きだらけだよ」


物理のノートを開く。

大体のページは黒板の丸写しだけれど、あちこちに黒板に書かない先生の話をメモしてある。それも、ノートの大部分を使って。白いスペースにはタイトルをつけたり、思いつきや疑問点をメモしたから、ノートは落書き帳並みに大小様々な文字が踊って、しかも丸で囲んだ部分もあるから賑やかだ。


「凄い。面白いノートだね」

「楽しんでいるよ」

「授業を楽しむって、こういうことなんだね」


お母さんも「どれどれ」と覗き込む。


「あら、本当に華やか。これなら直ぐにポイントが分かるわね。便利ね」


誉められたから嬉しい。


「チョコちゃんのノートも見せて」

「ええ、ノート……嫌だ」


嫌だと言いながら渋々出す。

ノートの端っこに「ハルクンスキ」って小さな文字で書かれている。


「あはは、嬉しい。チョコちゃんありがとー。チョコちゃんの字は小さいね」

「うん。ノートを節約してお化粧品を買うんだ。ノートは長く使えるから」


お母さんが感嘆の声を上げた。


「へえ……それはそれで凄いね。女の子はそうなのかな」

「じゃあさ、僕の雑記帳をあげるからそれに一旦授業をメモしてさ、此処でノートに整理するってどう。それなら復習にもなるから」

「名案かも。雑記帳は何回も消して使えるし」


僕はお母さんの表情が少し曇ったのを見逃さない。


「どうしたの、お母さん」


直ぐに尋ねた。


「ううん、何でもない。そうだ、チョコちゃん。今日は夕食を一緒に食べようね」


チョコちゃんは笑顔で頷く。


「八時まで帰って来れば良いって言われています」

「ふふ、腕を振るわなきゃ」
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