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第十章 二日目の夕方
(1)ヒエラルキー頂点の役目&真っ当過ぎて飽き飽きさせる者
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大きな死火山の下にダンジョンがある。ぽっかり開いた火口は人為的に鼠取りの入り口の仕掛けがなされ、ブルー・タニアンが火口からの脱出を図れば槍に全身を引き裂かれる。其の真下辺りから少しずれた処にケイツアーの檻があった。
ラーポは火口の仕掛けを見た。
人間って恐ろしい生き物よね。此の大がかりな鼠取りも婢呼眼軍師長の作戦の一部だなんて……
火口の周辺を、降りられる処まで降りた。鋭い槍がきらりと光る。
ブーちゃん可哀想。此れでブーちゃんを閉じ込めたのか。此れと岩戸付近のパーピー剣山植物で……
でも今の私には、此の世界の人たちはブーちゃんと仲良くした方が良いように思えるんだけど。ブーちゃんには人間と敵対する気持ちはなかったのよね。戦いを仕掛けられたのよね。家族を殺されて復讐に燃えたのよね。其れもやがて終わりよね。今の王様の寿命が尽きれば……他の人たちと戦う気なんてないのよね。
婢呼眼軍師長と連絡取れるかな。何て言おう……話せるかな。私は自分の感じていることをちゃんと話せるかな……
ブーちゃんは本来、人間にとっては……ううん、自然界にとって豊穣をもたらす生き物で、人間を支配していたのではなく、自然界のヒエラルキーの頂点に存在している生き物だということ……
ブーちゃんたちは自然界のヒエラルキー頂点の役目を果たしていたのよね。だから懐深い感じがするのか。豊穣をもたらす生き物だもんね。
其れって素晴らしいことじゃない。人間は自然界を食い潰すだけの生き物みたいだもの……
おおお……
人間って、自然界に対する考えを変えなきゃならないよね。難しいけどさ……だって、生まれた時から既に便利な世界だったもの。いやいや、其れでも変えなきゃ。私、元の世界に戻れたら、レジ袋とかゴミの分別とか当たり前のことからちゃんとやる。身の回りからちゃんとやる。自然界に感謝する。
って……今の、現実逃避じゃないからね……
でも現実は、私の今の現実は此の世界で、此のファンタジックでアニメチックな此の世界が現実で……ブーちゃんを守りたいのに守れないの。婢呼眼軍師長に何て伝えればいいの……
火口の縁に座った。雲海の広がりは傾いた日の橙色の光に染まり美しい。火口の真下までは届かないだろう夕焼けに胸が痛む。
何故、ケイツアーは檻から出られない振りをするのか。何故、あの夜のことがなかったことになっているのか。ソゴドモ村でも夢を見たことになっている。其れも婢呼眼軍師長に話すべきか……ケイツアーが生きていることを知ったら、作戦に影響するはずだ。ラーポの頭は出口のない疑問が渦を巻く。
ケイツアーにも見せてあげたいな……美しい夕焼け雲海の世界……一緒に見たかったな……ブーちゃんも一緒に……
火口にとぐろを巻く若いブルー・タニアンの青い鱗が夕日を受ける。其の傍らに二人の少女が座る。一人は古風なドレスの神秘的な少女、もう一人は学生らしい現代的な少女。三者仲良く夕日に照らされて明日の希望が柔らかな笑顔になる。
成る程、私には見えた。三者の美しい姿が見えた。其の日がくるのを望んでいると言うのだな、此の異世界の少女は……
小さな望みだ。真っ当過ぎて飽き飽きするほどの小さな望みだが、其れが世界を変えることを私は知っている……
さて、唆す者である此のツィフィーネ様は、此の少女に対してどのような者になろうか……どのように唆せば面白くなるだろうか……
あぁ、サライラン。あの悪霊の力を借りるか……王女と此の少女を逢わせてあげようではないか。リンジョネルラ王女……此の少女をとち狂わせるにはうってつけの存在だからな……ふふふ……
歪め……真っ当過ぎて飽き飽きさせる者よ……
此のツィフィーネ様を楽しませろ……
ふわははは……
***
ケイツアーどうしているかな….
嘘つきだと責めたから悲しんでいるのかな….
でも、騙されたくないから、暫くは会えない。
抱き締めたい……会いたい……ケイツアー……
***
そうだ、其れだよ。ケイツアーも本当は望んでいるんだよ、ラーポ。
ラーポ……ラーポ……ほら、ケイツアーの声だよ、ラーポ……
ラーポは火口の仕掛けを見た。
人間って恐ろしい生き物よね。此の大がかりな鼠取りも婢呼眼軍師長の作戦の一部だなんて……
火口の周辺を、降りられる処まで降りた。鋭い槍がきらりと光る。
ブーちゃん可哀想。此れでブーちゃんを閉じ込めたのか。此れと岩戸付近のパーピー剣山植物で……
でも今の私には、此の世界の人たちはブーちゃんと仲良くした方が良いように思えるんだけど。ブーちゃんには人間と敵対する気持ちはなかったのよね。戦いを仕掛けられたのよね。家族を殺されて復讐に燃えたのよね。其れもやがて終わりよね。今の王様の寿命が尽きれば……他の人たちと戦う気なんてないのよね。
婢呼眼軍師長と連絡取れるかな。何て言おう……話せるかな。私は自分の感じていることをちゃんと話せるかな……
ブーちゃんは本来、人間にとっては……ううん、自然界にとって豊穣をもたらす生き物で、人間を支配していたのではなく、自然界のヒエラルキーの頂点に存在している生き物だということ……
ブーちゃんたちは自然界のヒエラルキー頂点の役目を果たしていたのよね。だから懐深い感じがするのか。豊穣をもたらす生き物だもんね。
其れって素晴らしいことじゃない。人間は自然界を食い潰すだけの生き物みたいだもの……
おおお……
人間って、自然界に対する考えを変えなきゃならないよね。難しいけどさ……だって、生まれた時から既に便利な世界だったもの。いやいや、其れでも変えなきゃ。私、元の世界に戻れたら、レジ袋とかゴミの分別とか当たり前のことからちゃんとやる。身の回りからちゃんとやる。自然界に感謝する。
って……今の、現実逃避じゃないからね……
でも現実は、私の今の現実は此の世界で、此のファンタジックでアニメチックな此の世界が現実で……ブーちゃんを守りたいのに守れないの。婢呼眼軍師長に何て伝えればいいの……
火口の縁に座った。雲海の広がりは傾いた日の橙色の光に染まり美しい。火口の真下までは届かないだろう夕焼けに胸が痛む。
何故、ケイツアーは檻から出られない振りをするのか。何故、あの夜のことがなかったことになっているのか。ソゴドモ村でも夢を見たことになっている。其れも婢呼眼軍師長に話すべきか……ケイツアーが生きていることを知ったら、作戦に影響するはずだ。ラーポの頭は出口のない疑問が渦を巻く。
ケイツアーにも見せてあげたいな……美しい夕焼け雲海の世界……一緒に見たかったな……ブーちゃんも一緒に……
火口にとぐろを巻く若いブルー・タニアンの青い鱗が夕日を受ける。其の傍らに二人の少女が座る。一人は古風なドレスの神秘的な少女、もう一人は学生らしい現代的な少女。三者仲良く夕日に照らされて明日の希望が柔らかな笑顔になる。
成る程、私には見えた。三者の美しい姿が見えた。其の日がくるのを望んでいると言うのだな、此の異世界の少女は……
小さな望みだ。真っ当過ぎて飽き飽きするほどの小さな望みだが、其れが世界を変えることを私は知っている……
さて、唆す者である此のツィフィーネ様は、此の少女に対してどのような者になろうか……どのように唆せば面白くなるだろうか……
あぁ、サライラン。あの悪霊の力を借りるか……王女と此の少女を逢わせてあげようではないか。リンジョネルラ王女……此の少女をとち狂わせるにはうってつけの存在だからな……ふふふ……
歪め……真っ当過ぎて飽き飽きさせる者よ……
此のツィフィーネ様を楽しませろ……
ふわははは……
***
ケイツアーどうしているかな….
嘘つきだと責めたから悲しんでいるのかな….
でも、騙されたくないから、暫くは会えない。
抱き締めたい……会いたい……ケイツアー……
***
そうだ、其れだよ。ケイツアーも本当は望んでいるんだよ、ラーポ。
ラーポ……ラーポ……ほら、ケイツアーの声だよ、ラーポ……
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