つまずいたら異世界へ

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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第十章 二日目の夕方

(2)家来る? おいでよ……(ちょっとBL)

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あの日からどれくらいしてからかなぁ……きゃあぁ……思い出すだけで赤くなるわぁ……まだ福岡に越してからそんなに日にち経ってない頃、誘われたのぉ。

いやぁん「家来る。おいでよ。激しい受験競争の最中に気分転換したいからさ、沖縄の話を聞かせて。沖縄、憧れてるんだよ」って。

きゃあぁ……一緒に帰ったわぁ。いやぁ、もう……

先輩はぁ、二人兄弟の次男でぇ、長男は東京の大学に行ってて、父親は単身赴任。母親と二人暮らし。其の母親もカルチャースクールに通って忙しい。ダイニングのテーブルにメモがあって、おやつは冷蔵庫にチーズケーキがあったの。

「お前、可愛いな。やっぱり可愛い」二人でチーズケーキ食べていたときにどきっとさせられたけどねぇ、あたし、立ち上がって「お部屋を確認させて」って、押し入れを開けたりベランダを見たりしたの。

だってぇ……いろんな情報あったから。笑い者にするために友達が隠れていたりするって……皆で押さえ付けて良からぬことをって……何かで読んだことがあってぇ……怖くなったのぉ……

でも誰もいなかった。
いやぁん、バカよねぇ、あたしって……
でもぉ、今の時代っていろんな人がいるからぁ……

部屋に家族写真があって、お父さんとお兄さんが凄くイケメンで……ああ、こんな血なんだ、先輩の家系って……って……

で、なんとなくくっついて……チーズケーキにかかっていたイチゴジャムの味のする口もくっついて……きゃあぁ……

いやぁん、あとはエロチックなエロ記憶よぉ。毎日くっついていたっけ……

でも、先輩も東京に行ったの。あたしは捨てられて其のタイミングで沖縄に戻ったの。親の都合で。で、沖縄の大学に進学してみたものの、二週間前にやめてショーパブでアルバイト生活。

福岡の記憶ってくっついていただけの記憶……
東京に行けなくて……なんとなく気後れして……

婢呼眼軍師長様にも同じ匂いを感じていたのだわぁ。先輩にとってあたしは手駒だったのぉ……くすん……泣けるわぁ……ラーポ……あなたも婢呼眼軍師長様にとっては手駒の一つに過ぎないのよぉ。何だか涙が……




庭に出て空を眺めるファンビーナにカブスが近づく。


「お前、何をしているんだ。タコなどに用はない。婢呼眼を狙え」

「侍従様、お言葉ですが、婢呼眼のやつはまだ帰宅しておりませぬ。此処で暮らしているのではないようです。洗濯屋の二階と申しておりました。如何致しますか」

「暫し待とう。洗濯屋を聞き出せるなら其れも良し。しかし何れは此処に戻るであろう」


侍従の言葉が終わらないうちに、婢呼眼が飛んで来た。ガーネットも一緒に、両手に弱った修道女を抱えている。

タコが台所から転がり出て出迎えた。ファンビーナも膝をついてうつむく。カブスがつられて傅くように腰を落とし、いきなりキェーと叫び、走り去った。彼は遠くで、私が傅く相手はノアル様だけだ……と青くなった。


「此の人たちを休ませてくれ」

「食事の準備出来てるよ」

「有難い」


修道女四人と婢呼眼とガーネットがテーブルに着く。甲斐甲斐しく働くタコとファンビーナにガーネットの視線が注がれる。


「奥さんはなかなかの美人だ」

「ボクは独り身だよ。ファンビーナさんも……」


ガーネットはファンビーナの顔の傷に関心を持って見つめ、ファンビーナは二階へ上がった。


「不躾過ぎたかな」

「そんなに見つめられたらいたたまれないだろう。ああ云うのが好みなのか」


婢呼眼の言葉に修道女たちもガーネットを見る。


「いやいや、なかなかの美人だと思って。傷などアクセサリーみたいなものだ」

「おお、其れは慰めになるかもしれない。下心さえなければ……」


修道女たちの間に小さな笑いが生じた。カブスのシチューが身体を温めて疲れを癒す。メインはカブスの蒸し肉、其れにパンとサラダが付いただけの簡単なメニューだが、お腹も心も満ち足りた。

修道女四人は二階の部屋に通されて、後からまた八人が加わり、さらに十二人が増え、婢呼眼とガーネットは六往復して合計二十四人をタコの屋敷に運んだ。


「明日は百七十人になる。皆で手伝って部屋を整えるように」

「百七十人が此処に駐留するのか……」

「ガーネット将軍、もう一人いれば鱗の呼び寄せチートでダンジョンと此処を空間移動出来るのだが……」

「サンダー王国の将軍たちは全員飛べるはずだが……」

「王妃の反対でダンジョン修道院の問題は据え置きになった。だが、崩れる可能性が少しでもあれば其のままいさせる訳にはいかない」

「其れにしても、此処は半壊して手狭だ。昔は豪族の館だったらしいが、此れでは困るだろう。他に物件はないのか。」

「まあ、そう長い間ではないが、必要なら自分たちで補修するさ」

「補修って……」

「ダンジョン修道院は、人数が増える度に自分たちで煉瓦を焼いたりして部屋を作る。あの巨大な形はリンジャンゲルハルトの罪の形でもあるが、彼女たちは必要に応じて全てのことを行う能力を示して生きてきた。心配しなくても大丈夫だよ」


婢呼眼は好意を示す為に微笑んでみせたが、ただ片頬が痙攣しただけだった。




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