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第十二章 三日目の朝
(3)大臣議会リンジョネルラは渡さぬ
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王座から見る世界に、シンミョリーゼは喜びに打ち震えた。朝の謁見に諸大臣が打ち揃いシンミョリーゼに傅く。シンミョリーゼの抱っこしているリンジャンゲルハルト帝国ノアル(女帝)に対する敬服が、其のままシンミョリーゼに服しているかのような形になる。毒豚を膝に抱っこして、私は母親代理……と心に止めた。
謁見の後は会議になった。
昨晩もエスメラルダ軍の夜襲に軍艦が爆破された。襲撃を受けて使い物にならない軍艦は数えきれない。
エスメラルダ軍は悪賢い。魔の海テリンエレーズ海で縦横無尽に暴れリンジャンゲルハルト帝国海軍軍艦を多数沈めてきた。もう小さな紛争を繰り返すだけの戦いでは世界にリンジャンゲルハルト帝国の顔が立たない。どうしてもエスメラルダ軍を叩き潰したい。
しかし我が軍の海軍に仕官する兵士は皆無だ。報復戦としてサザンダーレ王国宮殿に核を搭載した飛行船を飛ばそう。撃ち落とすならサザンダーレ王国は滅ぶ。
いやいや、核は完成していない。あの国は分割後も軍事的には世界最大だ。我らの魔法術研究員さえも使い方を知らないレーザー砲もあると聞く。表立っての戦争は不利だ。
しかし、小賢しく紛争しても我が国の損害補填はできない。婢呼眼を奪え。あの軍師を取り込むのだ。でなければ殺せ。ならば我が国の未来にも光明をもたらすだろう。
無理だ。婢呼眼はリンジャンゲルハルト帝国を憎んで敵視している。もしかすると我々の最大の敵は婢呼眼かもしれない。
婢呼眼を殺せば……
其れは何度も議題に上った。ノアル様が隠し玉をお持ちだ。婢呼眼をリンジャンゲルハルト帝国に呼ぶ策が成功すれば……
そんな悠長なことを言っている場合ではない。今夜もエスメラルダ軍が来れば我々の海軍は壊滅する。
膝の上で軽い寝息をたてていたノアルが眼を開けて叫んだ。
「開戦だ。皆の者、戦え。婢呼眼は封じる。先ずはスメタナ教国を狙え。隣国とはいえスメタナ教国はサザンダーレ王国の同盟国。ぶっ潰せぇ。開戦の使者を出せぇ」
「ノアル。しかしながらスメタナ教国は高地の国。いと高き処の国でございます。国内からも物議が沸き立つかと」
「だから其の前に、此のリンジャンゲルハルト帝国にスメタナ教皇をお連れするのだ。世界大戦の明文が立つではないか」
「我々が教皇様をお守りするのですね」
おおおと、大臣たちが奮い立つ。
「そうだ、教皇様をお守りしろ」
ノアルの脳裏を様々な策が過る。ガーネットは持って一年。其れを思えば開戦は早すぎる。あのスメタナの魔女をどうにかして封じる方法はないか……
あの魔女の腹にはGPSを仕込んである。教皇殿の居場所は手に取るようにわかる。しかし、世界一の剣豪ガーネットに生きていられたら教皇をお連れするのは溶鉱炉に入るも同じ。生きては帰れない。どうにかして封じる方法は……
其れまでじっと黙していた神宮大臣アレナロイター・タンジャリンが口を開いた。
「我々にはリンジョネルラ王女がおります。あのダンジョンに閉じ込められたドラゴルーンを助け出し『世界一の美少女』として王女を差し出すと約束するのは如何がであろうか。さすればドラゴルーンは我らの側……」
「其方はリンジョネルラ王女の婚約者の父親ではなかったか。何を血迷う」
「ですから、口約束であれば後は後の話かと……」
「その場しのぎの為になどリンジョネルラは出さぬ。五年前に斎姫を出したではないか。口約束とはいえリンジョネルラまでドラゴルーンに捧げろと言うのか」
神宮大臣アレナロイター・タンジャリンを指さしてノアルが叫ぶ。
「こやつを牢に入れよ」
叫んだ後、ノアルはシンミョリーゼの首に抱きついた。
「一番信頼できる者が裏切るとは……」
シンミョリーゼの耳をノアルの泣き声が打つ。シンミョリーゼはノアルを優しく抱きしめて頬擦りした。
「リンジョネルラは渡さぬ……私の愛し子リンジー……あの子の為にリンジャンゲルハルト帝国はあるのだ。それを……それを……」
謁見の後は会議になった。
昨晩もエスメラルダ軍の夜襲に軍艦が爆破された。襲撃を受けて使い物にならない軍艦は数えきれない。
エスメラルダ軍は悪賢い。魔の海テリンエレーズ海で縦横無尽に暴れリンジャンゲルハルト帝国海軍軍艦を多数沈めてきた。もう小さな紛争を繰り返すだけの戦いでは世界にリンジャンゲルハルト帝国の顔が立たない。どうしてもエスメラルダ軍を叩き潰したい。
しかし我が軍の海軍に仕官する兵士は皆無だ。報復戦としてサザンダーレ王国宮殿に核を搭載した飛行船を飛ばそう。撃ち落とすならサザンダーレ王国は滅ぶ。
いやいや、核は完成していない。あの国は分割後も軍事的には世界最大だ。我らの魔法術研究員さえも使い方を知らないレーザー砲もあると聞く。表立っての戦争は不利だ。
しかし、小賢しく紛争しても我が国の損害補填はできない。婢呼眼を奪え。あの軍師を取り込むのだ。でなければ殺せ。ならば我が国の未来にも光明をもたらすだろう。
無理だ。婢呼眼はリンジャンゲルハルト帝国を憎んで敵視している。もしかすると我々の最大の敵は婢呼眼かもしれない。
婢呼眼を殺せば……
其れは何度も議題に上った。ノアル様が隠し玉をお持ちだ。婢呼眼をリンジャンゲルハルト帝国に呼ぶ策が成功すれば……
そんな悠長なことを言っている場合ではない。今夜もエスメラルダ軍が来れば我々の海軍は壊滅する。
膝の上で軽い寝息をたてていたノアルが眼を開けて叫んだ。
「開戦だ。皆の者、戦え。婢呼眼は封じる。先ずはスメタナ教国を狙え。隣国とはいえスメタナ教国はサザンダーレ王国の同盟国。ぶっ潰せぇ。開戦の使者を出せぇ」
「ノアル。しかしながらスメタナ教国は高地の国。いと高き処の国でございます。国内からも物議が沸き立つかと」
「だから其の前に、此のリンジャンゲルハルト帝国にスメタナ教皇をお連れするのだ。世界大戦の明文が立つではないか」
「我々が教皇様をお守りするのですね」
おおおと、大臣たちが奮い立つ。
「そうだ、教皇様をお守りしろ」
ノアルの脳裏を様々な策が過る。ガーネットは持って一年。其れを思えば開戦は早すぎる。あのスメタナの魔女をどうにかして封じる方法はないか……
あの魔女の腹にはGPSを仕込んである。教皇殿の居場所は手に取るようにわかる。しかし、世界一の剣豪ガーネットに生きていられたら教皇をお連れするのは溶鉱炉に入るも同じ。生きては帰れない。どうにかして封じる方法は……
其れまでじっと黙していた神宮大臣アレナロイター・タンジャリンが口を開いた。
「我々にはリンジョネルラ王女がおります。あのダンジョンに閉じ込められたドラゴルーンを助け出し『世界一の美少女』として王女を差し出すと約束するのは如何がであろうか。さすればドラゴルーンは我らの側……」
「其方はリンジョネルラ王女の婚約者の父親ではなかったか。何を血迷う」
「ですから、口約束であれば後は後の話かと……」
「その場しのぎの為になどリンジョネルラは出さぬ。五年前に斎姫を出したではないか。口約束とはいえリンジョネルラまでドラゴルーンに捧げろと言うのか」
神宮大臣アレナロイター・タンジャリンを指さしてノアルが叫ぶ。
「こやつを牢に入れよ」
叫んだ後、ノアルはシンミョリーゼの首に抱きついた。
「一番信頼できる者が裏切るとは……」
シンミョリーゼの耳をノアルの泣き声が打つ。シンミョリーゼはノアルを優しく抱きしめて頬擦りした。
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