つまずいたら異世界へ

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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第十四章 三日目の夕方

(1)婢呼眼異世界探訪

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「さっきの衛兵詰所みたいな処は……」

あはは……衛兵詰所って云うんだ、フアンタジアでは……

「彼処は交番って言うの。警察官がいて、近隣住民の困り事を解決してくれるの」
「ならば、裁判所みたいな処か」
「裁判所の下かなぁ。悪い人を捕まえて裁判所に連れてったりもするしぃ、さっきみかんが紛失物の届けとかしたでしょぉ。届けて出てくれる人がいたらアパートに連絡くれるって。他にも道案内とか酔っぱらいの保護とかいろんな仕事をしてくれるの。宇宙人に観光バスの乗り方を教えたって噂もあるしぃ……あはは……」
「宇宙人……ミケーロみたいな者のことか。ドラゴルーンを倒しに来るとか云う」
「ぇ、宇宙人とブーちゃんが戦うのぉ。凄い話しぃ……」

ええぇ……宇宙人と戦うったら噂でしか知らないはるまげどんのこととかぁ……違うか。

「私たちフアンタジア人はいつかそうなると信じてスメタナ詣りをするのだが……」

ん……信じているのぉ。だってだってあれは神様の最終戦争って言われてるんじゃない。生き残る人が少ないとかぁ……

「ぇぇぇ……スメタナ教国って宇宙人信仰なのぉ……」
「いや、神を奉じている。が、宇宙から来るとか……みかん、此の街に宇宙人が観光に来るという噂があるのか」

ええっ、其処、ポイントですかぁ。まさかぁ……面白いけどぉ……

「わははは、噂ですよぉ、噂ぁ」
「ふん、いたら面白いのだが……」

軍師長ぉ、本気まじですね。物珍し気な顔であれこれ触りながら店員にすっとんきょうな質問をする処も爆笑ですけどぉ、宇宙人に会いたがるのも本気ぃ。受けるんですけどぉ……

まぁ、暫くぶらぶら探索してパレット久茂地からモノレールのコースにしましょ。

「あのコンビニで換金してて良かったですね。結構いろいろ買いましたねぇ。ハブの卵と輪ゴムと電池、ゴキブリ撃退スプレー、キーホルダー、其から……」
「明日開戦だ。役に立ちそうなものを選んだ」

ぁ、そういえば戦争って言ってたかもぉ。修道女さんたちが鱗の袋を縫っているのも戦争に使うからでしょぉ。

ええぇ、フアンタジアで戦争ぉ……

「此処に来ても戦争のことを考えているのですかぁ」
「其れが私の仕事だ。他に何をして生きる」

ええぇ、此処はフアンタジアではないですよぉ。
帰れなかったらどうするんですかぁ。

「あれこれありますよぉ。んふ、軍師長が六法全書読んでたから裁判官とか弁護士とか検察とかぁ、探偵事務所ぉ」

帰れなかったらあたしの責任ってことぉ。きゃああぁ……

しかもハブの卵と輪ゴムと電池とゴキブリスプレーとキーホルダーで何をするんですかぁ……

「みかん、此の街では誰もお前のような大女を物珍し気に見たりしないのだな」
「ん……見られてないですかぁ。軍師長様ってどことなく珍しいから目立ちますけどねぇ。大女と異世界人が歩いていても、多分此の街は忙しない観光客で溢れかえっているからですかねぇ、気にする暇がないのでしょうね」
「自由だな。様々な人種、衣服、物質、音楽。自由な雰囲気だ。サザンダーレ王国の歓楽街ですらまだ此の比ではない。此処は自由を謳歌している。素晴らしい」

わぉぉぉ、お誉めに預かりぃ……
いいえぇ、沖縄県ってぇ、いろんな問題が山積しててぇ……でも軍師長様には関係無いですよねぇ。あぁ、誉められても素直に喜べないぃ。

あ、スクランブル交差点に来た。

「軍師長様っ、青です。渡りましょう」
「青……何れが青だ」

ぇ……青……

「信号ですよぉ……信号ぉ……」

人波を上手く歩く。軍師長は早いぃ。あたしもぉ普段は運動しないから息ヒーハー言うんだけどねぇ。あれだ、鱗だ。此の爽快さは。二秒で渡ったよ。周りの人波に違和感持たれることもなく。神業あああぁ……

「私は色弱だ。色が見えない」
「ぇ……じゃあ信号は……」
「覚えた。何処が青か……青が光ると『進め』だな…」

パレット久茂地のエレベーターホールまで二秒ぉ……計四秒くらいでスクランブル交差点からエレベーターホールぅ……チートって凄いぃ……

「そうです、そうです。黄色は真ん中で『注意』。赤が端で『止まれ』です」
「なるほど。覚えておく。戦場では声が届かないからな。できれば信号に⭕❌🔺のマークを付けてほしいな」
「またぁ、此処は戦場ではありませんよぉ、軍師長ぉ。戦争のことは忘れましょぉ」
「私はフアンタジアに帰らなければならないのだが」
「あ、エレベーターです。乗りましょう」

エレベーターのガラス越しに下を見ている。何を考えているのかなぁ。戦争のことだけぇ……軍師長には此の世界を堪能してもらいたいな。もっと別の人生もあるはずだしさぁ……まぁ、あたしが言うことでは無いかもしれないけどさぁ……戦争ばっかりというのも殺伐としてるよぉ……

軍師長が男であたしが女だったら良かったのにねぇ。何だか生まれるのを間違って来ちゃってぇ。あたし女の子なのに落ちん呼があるから悲しいぃ……早く切って捨てて本当の自分になりたいぃ……

あっ……ぎゃあああああああああああああああああああぁ……
お宝ザクザクぅ……忘れたああああああああああああああああああぁ……

うわああああああああああぁ……

忘れたああああああああああああぁ……

あああぁ……

あれがなければ落ちん呼切れないぃ……


い、き、しょう、ちーん……


「此れは、そうか、モノレールだ」

軍師長ぉ……能天気ですね。あたしがしょんぼりしているのにさぁ、気づいてくれないのぉ。モノレールに目を輝かせてるぅ。小学生の男の子みたいですぅ。

わあん……お宝ぁ……

「どうした、みかん、乗るぞ」

あぁ……モノレール来てた……

「はい、はい……乗りましょ乗りましょ」

空港まで乗りましょ。ルートビア飲みに行きましょ。ついでにデブの好物フライドポテトも……

あああぁ……
夢だったら良かったのにぃ……
夢だったらまだ諦めもついたのにぃ……

こうなりゃあさぁお宝ザクザクを取り返しにフアンタジアに戻らなきゃあ……其の前にルートビアとフライドポテトだけどねっ。絶対に取り返しに行くっ……


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