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第十二章 三日目の朝
(5)ブーちゃんの傷&コロサレタイカ
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ブルー・タニアンの青い鱗に傷が……
私はケイツアーが檻の中にいるかどうかを確かめたかったの。どうかいません様に……祈る気持ちで……ご法度の火口からダンジョンに飛び込んだけど……
其の時に、青い色が見えたのよね、あの火口に設置された槍刃の切っ先に……そしたら……
檻の前にブルー・タニアン。鱗は鋭く剣で切り裂かれて、蛍光色の青い血が流れている。
「ど、どうしたの、ブーちゃん……」
思わず触ったら、手が青く染まって……
「此れはブーちゃんの血なの……怪我しているのね。何があったの。あ、ケイツアー。ケイツアーいたの」
ブーちゃんの身体の向こうにケイツアーの心配そうな顔が見えた。心臓が跳び跳ねる。
「ラーポ……ブルー・タニアンはあの火口から私を出してあげると言って……」
「えっ、何故……」
やっぱり別人だ……あぁ……
私が驚くのも当然よね、騙されるのも当然よね、生き写しだもの……何で……もしかしたら双子ぉぉ……
ブルー・タニアンこっちを見た。厳しい目付き……
「お前……俺様に隠していることがあるな、ラーポ」
隠している……いるけど…」
「な、何を……何も隠してなんか……其れよりケイツアー…此処にいたの。夕べ……何処で寝たの」
ケイツアーを確かめなきゃ。
「何処で……此処よ、ラーポ。昨日も同じことを訊かれ……」
ケイツアーはきょとんと小首を傾げる。リンジョネルラ王女とそっくりだ。何で似ているのおおお……
「あぁ……わかった。わかってしまった。あなたは間違いなくケイツアーだよ。私が間違った」
目が痛い……涙が……
「何故泣くのだ。ケイツアーはずっと此処にいるに違いないだろう」
「ブーちゃん……」
ブルー・タニアン、ちょっとだけ抱きつかせて。涙が止めどなく流れるよ……
私は間違った……私は間違った……私は間違った……私は……私は取り返しのつかない間違いを犯した。ケイツアーと間違えた。ケイツアーと間違えて王女と……
あっ……涙がブルー・タニアンの傷口にかかっちゃった。
「ううっ……」
「ど、どうかした……ブーちゃん、痛いの」
上手く喋れない。しゃくりあげてしまうけどブルー・タニアンを見上げたら眼の色から厳しさがなくなって……
「いや……沁みた。傷口にお前の涙が……」
傷口を確認中してみるね。あ……傷口は小さくなって消えかかっているんじゃない……
「傷口、無くなったよ、ブーちゃん……凄い。早い回復力。凄いぃ……」
自分でも涙を流しながら喜んでいるのか悲しんでいるのか、わからないよ……
「ラーポ……何故泣くの……ブルー・タニアンの傷は治ったのでしょう。何かあったの」
ケイツアー、ごめんね…・
「私、あなたを守ると言ったのに」
「俺様からか……」
あはは…・そう思ったときも確かにあった。ケイツアーに初めて会った時……
「う……うん。ほかのなにものからも……絶対に守ると思ったのに……」
でも、ブーちゃんからではないような気もする。何でかな……
「泣くな、ラーポ。お前は間違ってなどいない。お前は優しい子だ。愛する者を守りたいと思うのは当然だ」
「うえぇん……ブーちゃあああん……」
ブーちゃんの傷のあった場所は綺麗に塞がっていくね……鱗に少しの裂け目が残ったけど……
私の胸は痛いよ。
リンジョネルラ王女の甘いキスを思い出す。辛い。ケイツアーと間違えたの。夕べも一昨日も、どうやって伝えようか……涙が出る。リンジョネルラ王女の体温……王女の髪……腕の感触……ケイツアーだと思い込んで……そして……全てのものからあなたを守ると約束したのに……
相手を間違えた。私は取り返しのつかない間違いを犯した……
何で間違えるの。ケイツアーが好きなのに……王女はとっても可愛いかったの。傷つけた……私は私から王女を守れなかった。傷つけた……どうしたらいいの……
***
「王女様……お目覚めでしたか。今、外で飛ぶ者が見えたと騒ぎがありましたが、ご無事で……」
「ガリラヤ……抱っこ……」
リンジョネルラ王女は震えている。ガリラヤは騒ぎに恐れをなしたのだと勘違いして王女の肩を抱いた。
「安心してください。飛ぶ者はもういませんから。ガリラヤがお守りします」
「ガリラヤ……もっと強く抱きしめて……」
えっ……
ガリラヤは声には出さないものの身体が震撼した。
強く……
王女の顔を見ないように大きく腕を回す。
「ラーポが来たの……一緒に寝たの……」
「そ、其れはあり得ないことです、王女様。この寝室は護衛が就いております。誰かが来るなど……」
ぎゅっと抱きしめて暫くすると王女はだいぶ落ち着いて、ガリラヤは自分の心音がこれ以上高まる前に直ぐに離れた。
「ラーポを探しますか」
「いいえ。待ちます。ラーポが来るまで……有り難うガリラヤ」
ガリラヤは侍女を呼び入れた。ベッドで食べる軽食の膳を持っている。俯き加減の顔は確かにシノビだった。
「お昼から神宮大臣のご子息シュタイナー・タンジャリン様とのお茶会があります」
「シュタイナー……」
「婚約者様でございます、王女様」
「忘れてしまったわ。私、熱を出して……忘れてしまったの。ラーポだけは覚えているのに」
「無理もありませぬ。王女様は死の淵をさ迷っておいででした。ドラゴルーンの鱗とルモンダレナの塗り薬とラーポ様の機転が合わさっての奇跡で生還されたのでございます。王女様がラーポ様を覚えておられるのは、死の淵で出逢った命の恩人だからでございましょう。以前のご記憶は消えて仕舞われましたが、新しく生まれ変わられたのでございます。苦しみの最中に助けてくれたラーポ様以外のことはお忘れになっても、命あればこそでございます」
「お前もあの時いてくれたわね、シノビ」
シノビはにこやかに頷いて腰を折り曲げた。王女の目線が外れた隙にガリラヤを睨む目は、オマエコロサレタイカと問う。
***
ツィフィーネが残したものは大きい。リンジョネルラ王女はラーポを慕っている。ツィフィーネはラーポを如何様にも操れる。楽しみだ。暫くは退屈しないであろう。此のサライラン様を楽しませてくれよ、人間ども……
私はケイツアーが檻の中にいるかどうかを確かめたかったの。どうかいません様に……祈る気持ちで……ご法度の火口からダンジョンに飛び込んだけど……
其の時に、青い色が見えたのよね、あの火口に設置された槍刃の切っ先に……そしたら……
檻の前にブルー・タニアン。鱗は鋭く剣で切り裂かれて、蛍光色の青い血が流れている。
「ど、どうしたの、ブーちゃん……」
思わず触ったら、手が青く染まって……
「此れはブーちゃんの血なの……怪我しているのね。何があったの。あ、ケイツアー。ケイツアーいたの」
ブーちゃんの身体の向こうにケイツアーの心配そうな顔が見えた。心臓が跳び跳ねる。
「ラーポ……ブルー・タニアンはあの火口から私を出してあげると言って……」
「えっ、何故……」
やっぱり別人だ……あぁ……
私が驚くのも当然よね、騙されるのも当然よね、生き写しだもの……何で……もしかしたら双子ぉぉ……
ブルー・タニアンこっちを見た。厳しい目付き……
「お前……俺様に隠していることがあるな、ラーポ」
隠している……いるけど…」
「な、何を……何も隠してなんか……其れよりケイツアー…此処にいたの。夕べ……何処で寝たの」
ケイツアーを確かめなきゃ。
「何処で……此処よ、ラーポ。昨日も同じことを訊かれ……」
ケイツアーはきょとんと小首を傾げる。リンジョネルラ王女とそっくりだ。何で似ているのおおお……
「あぁ……わかった。わかってしまった。あなたは間違いなくケイツアーだよ。私が間違った」
目が痛い……涙が……
「何故泣くのだ。ケイツアーはずっと此処にいるに違いないだろう」
「ブーちゃん……」
ブルー・タニアン、ちょっとだけ抱きつかせて。涙が止めどなく流れるよ……
私は間違った……私は間違った……私は間違った……私は……私は取り返しのつかない間違いを犯した。ケイツアーと間違えた。ケイツアーと間違えて王女と……
あっ……涙がブルー・タニアンの傷口にかかっちゃった。
「ううっ……」
「ど、どうかした……ブーちゃん、痛いの」
上手く喋れない。しゃくりあげてしまうけどブルー・タニアンを見上げたら眼の色から厳しさがなくなって……
「いや……沁みた。傷口にお前の涙が……」
傷口を確認中してみるね。あ……傷口は小さくなって消えかかっているんじゃない……
「傷口、無くなったよ、ブーちゃん……凄い。早い回復力。凄いぃ……」
自分でも涙を流しながら喜んでいるのか悲しんでいるのか、わからないよ……
「ラーポ……何故泣くの……ブルー・タニアンの傷は治ったのでしょう。何かあったの」
ケイツアー、ごめんね…・
「私、あなたを守ると言ったのに」
「俺様からか……」
あはは…・そう思ったときも確かにあった。ケイツアーに初めて会った時……
「う……うん。ほかのなにものからも……絶対に守ると思ったのに……」
でも、ブーちゃんからではないような気もする。何でかな……
「泣くな、ラーポ。お前は間違ってなどいない。お前は優しい子だ。愛する者を守りたいと思うのは当然だ」
「うえぇん……ブーちゃあああん……」
ブーちゃんの傷のあった場所は綺麗に塞がっていくね……鱗に少しの裂け目が残ったけど……
私の胸は痛いよ。
リンジョネルラ王女の甘いキスを思い出す。辛い。ケイツアーと間違えたの。夕べも一昨日も、どうやって伝えようか……涙が出る。リンジョネルラ王女の体温……王女の髪……腕の感触……ケイツアーだと思い込んで……そして……全てのものからあなたを守ると約束したのに……
相手を間違えた。私は取り返しのつかない間違いを犯した……
何で間違えるの。ケイツアーが好きなのに……王女はとっても可愛いかったの。傷つけた……私は私から王女を守れなかった。傷つけた……どうしたらいいの……
***
「王女様……お目覚めでしたか。今、外で飛ぶ者が見えたと騒ぎがありましたが、ご無事で……」
「ガリラヤ……抱っこ……」
リンジョネルラ王女は震えている。ガリラヤは騒ぎに恐れをなしたのだと勘違いして王女の肩を抱いた。
「安心してください。飛ぶ者はもういませんから。ガリラヤがお守りします」
「ガリラヤ……もっと強く抱きしめて……」
えっ……
ガリラヤは声には出さないものの身体が震撼した。
強く……
王女の顔を見ないように大きく腕を回す。
「ラーポが来たの……一緒に寝たの……」
「そ、其れはあり得ないことです、王女様。この寝室は護衛が就いております。誰かが来るなど……」
ぎゅっと抱きしめて暫くすると王女はだいぶ落ち着いて、ガリラヤは自分の心音がこれ以上高まる前に直ぐに離れた。
「ラーポを探しますか」
「いいえ。待ちます。ラーポが来るまで……有り難うガリラヤ」
ガリラヤは侍女を呼び入れた。ベッドで食べる軽食の膳を持っている。俯き加減の顔は確かにシノビだった。
「お昼から神宮大臣のご子息シュタイナー・タンジャリン様とのお茶会があります」
「シュタイナー……」
「婚約者様でございます、王女様」
「忘れてしまったわ。私、熱を出して……忘れてしまったの。ラーポだけは覚えているのに」
「無理もありませぬ。王女様は死の淵をさ迷っておいででした。ドラゴルーンの鱗とルモンダレナの塗り薬とラーポ様の機転が合わさっての奇跡で生還されたのでございます。王女様がラーポ様を覚えておられるのは、死の淵で出逢った命の恩人だからでございましょう。以前のご記憶は消えて仕舞われましたが、新しく生まれ変わられたのでございます。苦しみの最中に助けてくれたラーポ様以外のことはお忘れになっても、命あればこそでございます」
「お前もあの時いてくれたわね、シノビ」
シノビはにこやかに頷いて腰を折り曲げた。王女の目線が外れた隙にガリラヤを睨む目は、オマエコロサレタイカと問う。
***
ツィフィーネが残したものは大きい。リンジョネルラ王女はラーポを慕っている。ツィフィーネはラーポを如何様にも操れる。楽しみだ。暫くは退屈しないであろう。此のサライラン様を楽しませてくれよ、人間ども……
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