32 / 136
第三章 一日目の昼前 タランの森でゴキホイ食うな
(7)王女の神輿
しおりを挟む
「みかんさん、あれ、あの黄色い草。あれも袋に詰めて」
「何に使うのよ」
「しっ、声が大きい。あのね、多分、あの草がアレルゲンだから……ほら、匂うよね。万一にもドラゴンに追われたら、みかんさんはチート能力無いからあの黄色いやつを」
ひええええ……
あんた、まさかだけど失敗しないでよぉ……
ドラゴンに追われた場合ってぇ……
恐ろしいぃ……
「ドラゴンダンジョン潰したら、次はリンジャンゲルハルトと戦争になる。その時、ドラゴンチートが役に立つかもしれないから、私はドラゴンの血を……」
「や、止めて。危ないことは……」
「言わずもがな。決まってる。チャンスがあればの話。さあ、早くっ。私はここでドラゴンが寝るのを待ってからポールを探すから。じゃあね」
「うん、ダンジョンで迷子にならないでね。気をつけて」
「みかんさんも、黄色い草を忘れないで」
***王女の御神輿***
青ざめた顔で茂みから出た男は、小さな野原に佇む御輿の行列に近づいた。
「シュタイナー様」
リンジョネルラの御側女官が恭しくお辞儀をする。行列も膝をついた。
何故こちらに……と聞きたい処を堪えて静かに俯いている女官だが、シュタイナーは女官の肩に手を触れて耳に口を寄せた。
「リンジョネルラ様はいずこにいらした」
耳に息がかかる。
「わ、わたくしどもには何も……侍従様とご一緒ですので…」
「ガリラヤか。まあ、奴がついておれば心配ない。あの細面のイケメンは命にかけても王女様をお守りするだろう」
御側女官は心の中で、シュタイナー様も十分過ぎるほどイケメンでございますけれども……と言い返して表情が和らぐ。
「しかし、灰色侍従とはいえ、元は男。二人きりでいずこに参ったのか、宦官の奴め」
『どこで生きるべきとかどうあるべきとか、他の人が決める問題かな』
ラーポの言葉をドラゴンは反芻した。
俺様はドラゴルーンとして生まれドラゴルーンとして育ちドラゴルーンとして生きてきた。誰が決めるものでもなく俺様はドラゴルーン以外の何者でもなく、当然、何者にもなれないドラゴルーンだ。ドラゴルーンであることを辞めようとなどと考えたことはない。
何処で生きるべきとかどうあるべきとか考えたこともない。ただただ生きようとしてきただけだけだ。それしかなかったからだ。
しかし……
薄暗い洞穴で独り、自分以外に寝息をたてていた遠い存在をいとおしく偲び、ドラゴンは眠りに落ちた。
三ヶ月ぶりの青草には安眠剤として使う薬草が
混じっていた。胃が小さくなっていたのか、俵一個分くらいの草に満足しての泥沼の眠りだ。
ぐぅごぅ……こここ……
鼾がダンジョンに木霊する。
「ブーちゃん、寝たの。じゃあ、探検してくるね。命がけの探検よ」
言うが早いかラーポは軽くステップして消えた。目にも止まらぬ速さで移動したのだ。
眠るドラゴンの前に、ラーポが土産物に持ち帰った黄赤の木の実が幾つか積まれていた。
ブルー・タニアン殿。寝ておられたか。
ドラゴルーンが此の木の実を知らぬはずがない。
私は此の世界を知る為に緩く巡って来たのだが……
ドラゴルーンの敵対者である婢呼眼を見いだした。
あれは何かをやるだろう。
手を貸すか……邪魔をしようか……
ツィフィーネ
「何に使うのよ」
「しっ、声が大きい。あのね、多分、あの草がアレルゲンだから……ほら、匂うよね。万一にもドラゴンに追われたら、みかんさんはチート能力無いからあの黄色いやつを」
ひええええ……
あんた、まさかだけど失敗しないでよぉ……
ドラゴンに追われた場合ってぇ……
恐ろしいぃ……
「ドラゴンダンジョン潰したら、次はリンジャンゲルハルトと戦争になる。その時、ドラゴンチートが役に立つかもしれないから、私はドラゴンの血を……」
「や、止めて。危ないことは……」
「言わずもがな。決まってる。チャンスがあればの話。さあ、早くっ。私はここでドラゴンが寝るのを待ってからポールを探すから。じゃあね」
「うん、ダンジョンで迷子にならないでね。気をつけて」
「みかんさんも、黄色い草を忘れないで」
***王女の御神輿***
青ざめた顔で茂みから出た男は、小さな野原に佇む御輿の行列に近づいた。
「シュタイナー様」
リンジョネルラの御側女官が恭しくお辞儀をする。行列も膝をついた。
何故こちらに……と聞きたい処を堪えて静かに俯いている女官だが、シュタイナーは女官の肩に手を触れて耳に口を寄せた。
「リンジョネルラ様はいずこにいらした」
耳に息がかかる。
「わ、わたくしどもには何も……侍従様とご一緒ですので…」
「ガリラヤか。まあ、奴がついておれば心配ない。あの細面のイケメンは命にかけても王女様をお守りするだろう」
御側女官は心の中で、シュタイナー様も十分過ぎるほどイケメンでございますけれども……と言い返して表情が和らぐ。
「しかし、灰色侍従とはいえ、元は男。二人きりでいずこに参ったのか、宦官の奴め」
『どこで生きるべきとかどうあるべきとか、他の人が決める問題かな』
ラーポの言葉をドラゴンは反芻した。
俺様はドラゴルーンとして生まれドラゴルーンとして育ちドラゴルーンとして生きてきた。誰が決めるものでもなく俺様はドラゴルーン以外の何者でもなく、当然、何者にもなれないドラゴルーンだ。ドラゴルーンであることを辞めようとなどと考えたことはない。
何処で生きるべきとかどうあるべきとか考えたこともない。ただただ生きようとしてきただけだけだ。それしかなかったからだ。
しかし……
薄暗い洞穴で独り、自分以外に寝息をたてていた遠い存在をいとおしく偲び、ドラゴンは眠りに落ちた。
三ヶ月ぶりの青草には安眠剤として使う薬草が
混じっていた。胃が小さくなっていたのか、俵一個分くらいの草に満足しての泥沼の眠りだ。
ぐぅごぅ……こここ……
鼾がダンジョンに木霊する。
「ブーちゃん、寝たの。じゃあ、探検してくるね。命がけの探検よ」
言うが早いかラーポは軽くステップして消えた。目にも止まらぬ速さで移動したのだ。
眠るドラゴンの前に、ラーポが土産物に持ち帰った黄赤の木の実が幾つか積まれていた。
ブルー・タニアン殿。寝ておられたか。
ドラゴルーンが此の木の実を知らぬはずがない。
私は此の世界を知る為に緩く巡って来たのだが……
ドラゴルーンの敵対者である婢呼眼を見いだした。
あれは何かをやるだろう。
手を貸すか……邪魔をしようか……
ツィフィーネ
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる