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第五章 一日目の夕方 スメタナ仰け反る魔女
(7)魔法術研究員の最後とGPS
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細い首を強く締めた。
苦しみに眉根をきつく寄せて、魔法術研究員はガーネットの手首を掴む。
「此れはどうだ」
ガーネットは魔法術研究員から装具を引き抜き、うつ伏せに組敷いていた華奢な身体を仰向けに回転させると、激しく咳き込む研究員の首を再び締め上げる。
「ううっ……」
「子供がいるのは本当か……」
「うううっ……」
ガーネットは魔法術研究員のそそり立ったものに騎乗した。何度も射精したはずの一物は麻薬の力で萎えることを知らず、同じ麻薬で狂暴さを増した洞穴に飲み込まれた。
「子供のことが嘘なら、お前を生かしておく必要はない。私に剣を向けた者は死罪だ」
ガーネットは飲み込んだ物の上で腰を跳ね回しながら研究員の首を締め続ける。
「お前にゲヘナの土産に見せてやろう」
ガーネットが黒眼帯を外す。隠れていた眼のなかに、黒目が二つ光っている。
「重瞳と言うのだ。私は噂に違わぬ魔女なのだよ。観念しろ」
「うう……ああぁぁ……」
魔法術研究員は両手でガーネットの手首を掴んで離そうともがき続けたが、ガーネットは力を入れて、ついに研究員の手はぱたりと落ちた。
「未だ膨らんでおるな……此れが薬物の成せる業か」
ガーネットの腰は死人の上で円を描き跳ね続ける。
シノビ、お前ならガリラヤを斬れる。姉弟のお前たちだが、各々にリンジャンゲルハルト帝国の飼い犬。女帝の命ならば親をも子をも…それがリンジャンゲルハルトの律法。リンジャンゲルハルトで生きる者の従う律法だ。
「其の、ケミヒス文明国の遺跡からの土産物は、確かに放射能汚染されておるのだろうな」
宝飾座上から小さな女帝が問うた。床から浮いた靴の爪先が神経質に動く。
謁見の間の床に身を屈めて、魔法術研究員三人のうちの一人が答えた。
「はい、我が主ノアル様。確かなことでございます。先ほど、研究室の地図盤上で針が動きました。其の『GPS』は首尾よくガーネットに着床致しました。」
「あの女め、男と交わった訳だな」
鼻で笑う。
笑いながら少し残念な気もする。
「左様でございます。あの女めは、何と、スメタナ教皇の寝所の近くで男と関係したようでして……」
「破廉恥な女。我がリンジャンゲルハルトなら失脚問題だ。スメタナ教皇殿に教えてしんぜたいわ」
語気強く吐いた。
他国の戦士のプライバシーを、しかも自分で陥れておいての此の言い種だ。
三人の魔法術研究員は俯いたまま言葉を探して、やっと「御意」と小声で言った。
「して、成果はいつになるのか」
女帝の脳裏に、銀色の甲冑も光り輝く若く覇気のある女戦士の姿が浮かぶ。其の女は赤みのある暗い髪と黒眼帯の片目だった。
二人めの魔法術研究員が恭しく答える。
「放射能汚染の『GPS』は、ガーネットの胎内で確実に宿主を蝕みながら我々にガーネットの護衛するスメタナ教皇の居場所を教え続けるでしょう」
黒眼帯の女は翼ある者のように映った。
スメタナ軍は精鋭で成り立つ極小軍だが、その中にあって女の身でありながら宙を舞い、飛び道具を持つケミヒス文明国生き残り軍のほとんどを、一人で二千人を討ち倒した様を、女帝は移動塔の上から驚きを以て眺めた。
其れが『スメタナの魔女』の異名を持つガーネットだった。
「成果はいつ…」
リンジャンゲルハルト帝国に厚遇するとの使者を遣わしたが、一笑に伏され、恥をかかされた。『スメタナの魔女』は、どのような手段をとってしても手に入れたい駒だったが、まさかのハニートラップに掛かり死すべき者となるとは。
三人めの魔法術研究員が答えた。
「それは臨床件数が少ないのですが、一年は持たないかと……ほぼ一年、其れがガーネットの余命です」
リンジャンゲルハルトの王宮殿にも既に数えきれないほどの灯火が輝いていたが、小さな女帝の双眸は其の灯火を集めたほどに輝く。
「あの魔女を、仕留めたも同じと云うことだな」
打ち震える。
痺れるような喜びが脳に渦巻き、小さな身体中に広がる。
女帝は、空に浮いた爪先をぴくぴくと小刻みに揺らせた。
成る程。辿ってみれば此のような理由に行き着くとは……此のツィフィーネも舌を巻くほどの邪悪さよ……リンジャンゲルハルトの毒豚ノアルとは……
宵闇に白く浮かぶ魔法術研究員の吸い付くような乳房を鷲掴みにして、ガーネットは雄叫びを上げた。身体が仰け反る。
「ルモンダレナにこんな使い方があろうとは」
亡骸の傍らに倒れこみ、自分の締め殺した首に腕を回して抱き寄せた。密着したままの腰はひくつく快感に痺れ、死人の唇に軽く唇を合わせる。
此の『スメタナの魔女』は明日、将軍となる。
苦しみに眉根をきつく寄せて、魔法術研究員はガーネットの手首を掴む。
「此れはどうだ」
ガーネットは魔法術研究員から装具を引き抜き、うつ伏せに組敷いていた華奢な身体を仰向けに回転させると、激しく咳き込む研究員の首を再び締め上げる。
「ううっ……」
「子供がいるのは本当か……」
「うううっ……」
ガーネットは魔法術研究員のそそり立ったものに騎乗した。何度も射精したはずの一物は麻薬の力で萎えることを知らず、同じ麻薬で狂暴さを増した洞穴に飲み込まれた。
「子供のことが嘘なら、お前を生かしておく必要はない。私に剣を向けた者は死罪だ」
ガーネットは飲み込んだ物の上で腰を跳ね回しながら研究員の首を締め続ける。
「お前にゲヘナの土産に見せてやろう」
ガーネットが黒眼帯を外す。隠れていた眼のなかに、黒目が二つ光っている。
「重瞳と言うのだ。私は噂に違わぬ魔女なのだよ。観念しろ」
「うう……ああぁぁ……」
魔法術研究員は両手でガーネットの手首を掴んで離そうともがき続けたが、ガーネットは力を入れて、ついに研究員の手はぱたりと落ちた。
「未だ膨らんでおるな……此れが薬物の成せる業か」
ガーネットの腰は死人の上で円を描き跳ね続ける。
シノビ、お前ならガリラヤを斬れる。姉弟のお前たちだが、各々にリンジャンゲルハルト帝国の飼い犬。女帝の命ならば親をも子をも…それがリンジャンゲルハルトの律法。リンジャンゲルハルトで生きる者の従う律法だ。
「其の、ケミヒス文明国の遺跡からの土産物は、確かに放射能汚染されておるのだろうな」
宝飾座上から小さな女帝が問うた。床から浮いた靴の爪先が神経質に動く。
謁見の間の床に身を屈めて、魔法術研究員三人のうちの一人が答えた。
「はい、我が主ノアル様。確かなことでございます。先ほど、研究室の地図盤上で針が動きました。其の『GPS』は首尾よくガーネットに着床致しました。」
「あの女め、男と交わった訳だな」
鼻で笑う。
笑いながら少し残念な気もする。
「左様でございます。あの女めは、何と、スメタナ教皇の寝所の近くで男と関係したようでして……」
「破廉恥な女。我がリンジャンゲルハルトなら失脚問題だ。スメタナ教皇殿に教えてしんぜたいわ」
語気強く吐いた。
他国の戦士のプライバシーを、しかも自分で陥れておいての此の言い種だ。
三人の魔法術研究員は俯いたまま言葉を探して、やっと「御意」と小声で言った。
「して、成果はいつになるのか」
女帝の脳裏に、銀色の甲冑も光り輝く若く覇気のある女戦士の姿が浮かぶ。其の女は赤みのある暗い髪と黒眼帯の片目だった。
二人めの魔法術研究員が恭しく答える。
「放射能汚染の『GPS』は、ガーネットの胎内で確実に宿主を蝕みながら我々にガーネットの護衛するスメタナ教皇の居場所を教え続けるでしょう」
黒眼帯の女は翼ある者のように映った。
スメタナ軍は精鋭で成り立つ極小軍だが、その中にあって女の身でありながら宙を舞い、飛び道具を持つケミヒス文明国生き残り軍のほとんどを、一人で二千人を討ち倒した様を、女帝は移動塔の上から驚きを以て眺めた。
其れが『スメタナの魔女』の異名を持つガーネットだった。
「成果はいつ…」
リンジャンゲルハルト帝国に厚遇するとの使者を遣わしたが、一笑に伏され、恥をかかされた。『スメタナの魔女』は、どのような手段をとってしても手に入れたい駒だったが、まさかのハニートラップに掛かり死すべき者となるとは。
三人めの魔法術研究員が答えた。
「それは臨床件数が少ないのですが、一年は持たないかと……ほぼ一年、其れがガーネットの余命です」
リンジャンゲルハルトの王宮殿にも既に数えきれないほどの灯火が輝いていたが、小さな女帝の双眸は其の灯火を集めたほどに輝く。
「あの魔女を、仕留めたも同じと云うことだな」
打ち震える。
痺れるような喜びが脳に渦巻き、小さな身体中に広がる。
女帝は、空に浮いた爪先をぴくぴくと小刻みに揺らせた。
成る程。辿ってみれば此のような理由に行き着くとは……此のツィフィーネも舌を巻くほどの邪悪さよ……リンジャンゲルハルトの毒豚ノアルとは……
宵闇に白く浮かぶ魔法術研究員の吸い付くような乳房を鷲掴みにして、ガーネットは雄叫びを上げた。身体が仰け反る。
「ルモンダレナにこんな使い方があろうとは」
亡骸の傍らに倒れこみ、自分の締め殺した首に腕を回して抱き寄せた。密着したままの腰はひくつく快感に痺れ、死人の唇に軽く唇を合わせる。
此の『スメタナの魔女』は明日、将軍となる。
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