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第二章 楽園のアイデア
(2)篠田さん
しおりを挟む「お前ら、舐めた歩き方しやがって。今度私を待たせやがったらこうしてやる」
バキバキッと音が鳴って黒板に皸が入る。
教室中に悲鳴が渦巻く。全員が蹴りを入れられたものだからその恐ろしさは身をもって知っている。
「「「「「「ひえあああ……」」」」」」
担任教師の青田が真っ青になって黒板を振り向いた。
「おわっ、何だ、これは……これも猫斑か……」
先生、濡れ衣ですが、おそらく私です
いえ、私じゃない
魔王ですっ
チクりたくないけど
魔王がやりましたっ
「そうだ、私だ。私がやった。わははは」
ああ、魔王……
あんたがやったと言ってもあんたの姿は見えないのだから私に濡れ衣が掛かるだけじゃないか
「いいか、お前ら、今日は青田の言うことを少しだけ聞こう。それから私の話を完全に聞け。わかったな。じゃあ、青田、何か話せ」
先生、済みません
魔王に憑依されまして、困っているのですけど、信じてもらえませんよね……
「こほん。あの、みんな……今日はぼや騒ぎで午後からの授業は無しになった。これから警察が取り調べを行う。ガソリン缶を持ってきた人は正直に言いなさい」
「聞いても無駄だ。無いものはない」
魔王っ
あんたなの……
「ふふふ、ガソリン缶を一缶……あんなものを学校に持ち込める奴がこの中にいると思うのか」
「ね、猫斑……お前、女の子じゃないか。ガソリン缶は重いんだぞ。女の子には持てない」
何でガソリン缶が重いって思うの
「そうだ。ガソリン缶が空なら女の子でも青田でも持てる。しかし、見ろ」
ガソリン缶が宙に浮く。蓋が離れて缶が傾く。
「「「「「「きゃああああ」」」」」」
ドバドバドバと音を立てて黒いガソリンが吹き出した。
魔王おおお、止めてえええ
缶から吹き出して流れ落ちたはずのガソリンが、匂いだけ残して消える。
「お前ら、今此処で煙草を吸えるやつはいるか」
「い、引火するから止めろ」
「青田、誰が喋って良いと言った。しかし、事故の時点でガソリン缶には引火しなかったわけだな。それなら騒ぐな」
「あ、はい、済みませ……猫斑。お前は担任に向かって……」
せ、先生、濡れ衣です
私じゃないって何回言わせるんですか
もう、疲れました
あ、警察だ
魔王、私も座りたい……
「おい、お前、椅子を引け」
私の後ろの席は篠田さん
クラス一の美少女
白い腕
美しい
「ふふん、美しいか……」
魔王、何をするの
嫌ぁ……私の身体を使わないで
ごめんなさい、篠田さん
魔王なんです
あなたの腕を掴んだのは
魔王なんです
あなたの顎を上げたのは
嫌ぁ……
篠田さんの顔が近いいいい
魔王おおおそれ以上近づかないでえええ
「おお、かなりの美少女だな。篠田か。覚えておくぞ」
魔王おおお
私はレズビアンじゃないッ
完全に誤解された……
はふぅ……
どっと疲れた……
警察の皆さん、何とかしてくださあい
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