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第20話 騎士の誇り
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それは渾身の一撃だった。
純粋な殺意が込められた刃。
しかし、それ故に、殺気に敏感な獣の本能を目覚めさせてしまった。
ギリギリの所で目を覚ました少女は、寝起きとは思えない様な反応速度で、身を翻して亡霊の騎士 の大剣を躱した。
ベッドを両断した亡霊の騎士 は、間髪入れずに大剣を横薙ぎに振るう。
確実に当たる距離であり、少女の胴体を両断できると確信した瞬間、信じられない事に、少女は自らに向けて風の弾丸を放った。
衝撃波によって加速した少女は、一瞬にして亡霊の騎士 の刃が届かない距離まで後退していた。
二度も攻撃を避けられた。
脅威的な動体視力と反射神経だけでは無い。
信じられない事に、目の前の少女からは、冷静な判断力と熟練の冒険者の様な経験を感じた。
「侮っていた様だ・・・戦士として相手をしよう」
より一層、目の前の少女を生かしておく事は出来ないと亡霊の騎士 は、警戒心を上げる。
「その前に、誰よ貴方・・・変質者?」
犬耳の少女から、まるで汚物を見るかの様な軽蔑の視線を向けられている事に気付いた亡霊の騎士 は、困惑する。
「へ、変質者だと!?」
かつては英雄と呼ばれており、名誉ある騎士だった亡霊の騎士 にとって、変質者呼ばわりされた事は、心外だった。
「女子の寝室に無断で入ってくるなんて、変質者か泥棒くらいでしょ?」
犬耳の少女は、警戒心を顕にして、近くのカーテンに体を隠した。
その行為が、まるで変態だと言われている様な気がして、怒りが込み上げる。
「我が名はアダン・ローグマイヤー、誉高きエルダム王国の騎士である!断じて変質者などでは無い!」
頭に血が上った亡霊の騎士 は、つい昔の癖で生前の名を名乗ってしまった。
「眠っている無防備な女の子に不意打ちをする卑怯者が騎士なわけ無いでしょ」
「ウグッ!?」
犬耳の少女に、ド正論を返されて、亡霊の騎士 は、言葉に詰まる。
「しかも、エルダム王国って、千年前に滅んだ王国の名前じゃない、もう少しマシな嘘はつけなかったの?」
もう人々の記憶から忘れ去られたと思っていた祖国の名前を、目の前の少女が知っていた事に、亡霊の騎士 は、驚きと嬉しさが込み上げる。
「博識な娘だな、どこでエルダム王国の名前を聞いたのだ?」
亡霊の騎士 は、興味本位で質問する。
「古代語の本で読んだことがあるのよ」
古代語は、神々の時代に使われた言語であり、亡霊の騎士 が生きていた時代にも読める者は少数だった。
しかし、いつの時代にも、その時々の歴史が刻まれた謎の石板が発見されており、ダンジョンや遺跡などで発掘される魔導具にも古代語が使われている事が多い。
未だ解明されていない謎の多い文字だ。
「なるほど、古代語が読めるのか・・・ふむ」
亡霊の騎士 は、目の前の少女が古代語を読めると知り、顎に手を当てて考え込む。
「そんな事より、服くらい着させてくれるかしら?」
犬耳の少女は、カーテンから顔だけ出して、恥ずかしそうにジト目で亡霊の騎士 を睨みつけている。
「・・・好きにしろ」
本来なら、即座に斬り殺すべきだが、これ以上、騎士として不名誉な呼ばわれ方をしたくない亡霊の騎士 は、頭に手を当てて後ろを向いた。
それに、祖国の名を知る少女に対して、無意識の内に好意を抱いてしまっている自分がいた。
しかも、長年求めていた古代語を読める人物でもある。
亡霊の騎士 の中で葛藤が生まれていた。
「・・・準備は良いか?」
それでも、かつての主君である魔王との約束を守る為に・・・この娘を殺さなければいけない。
「ええ、良いわよ」
亡霊の騎士 が振り返ると、白いシャツに黒のホットパンツ姿に着替えた少女が立っていた。
「では、再開するとしよう」
亡霊の騎士 の全身から禍々しい漆黒のオーラが溢れ出る。
漆黒のオーラは、無数の槍になり、音速で射出された。
流星の如く放たれた無数の黒槍を、全てギリギリの所で躱しながら、壁や天井を四つん這いで縦横無尽に駆け巡る少女の姿は、まさに獣の如きだ。
「まさに獣だな」
防戦一方の様に見えても、少女のエメラルドグリーンの瞳は、常に亡霊の騎士 に向けられており、攻撃のチャンスを伺っている。
一瞬でも隙を見せれば、喉元に喰いつかれる様な野性じみた殺気を感じる。
黒槍の攻撃が途切れた瞬間、少女は天井を蹴り、真上から奇襲を仕掛けて来た。
生物の警戒が一番薄い頭上からの攻撃を亡霊の騎士 は、大剣の腹でガードする。
ガキンッと金属がぶつかり合う様な音が鳴り、大剣の腹に爪痕が残る。
「ほう、鋼鉄より硬い我が肉体に傷を付けるか」
亡霊の騎士 の魂と融合した鎧や武器は、暗黒物質と呼ばれる特殊な金属であり、砲弾を受けても傷一つ付かない強度を誇っていた。
亡霊の騎士 は、そのまま大剣を振り下ろすと、少女は大剣の腹を踏み台にして壁に跳躍した。
風を纏っているのか、音もなく綺麗に壁に着地した少女は、次の瞬間には、懐に潜り込んできていた。
亡霊の騎士 が大剣を振り下ろすよりも速く、少女の爪がギャリンっと鎧の脇腹を削り取った。
そのまま背後を取られた亡霊の騎士 は、振り向き様に大剣を横薙ぎに振るうが、少女は姿勢を下げて回避すると同時に、右腿を切り裂く。
亡霊の騎士 は、切り裂かれた右足で少女を蹴り上げるが、ガードされた上に、咄嗟に後ろに跳んだので、効いていない様だ。
「・・・面白い」
戦闘を愉しいと感じたのは何年振りだろうか?
亡霊の騎士 は、久しく忘れていた感情を思い出していた。
だが、何故だろうか?
この少女から、懐かしい気配を感じる。
まるで、旧友に出会ったかの様な感覚に違和感を禁じ得ない。
しかし、思考に耽った一瞬の内に、少女は、目にも止まらぬ速度で、亡霊の騎士 の懐に踏み込んでいた。
鋭い一撃だった。
右手の鋭い爪に風の刃を纏わせた一撃は、容易く亡霊の騎士 の胸を貫いた。
「やった!」
それは、油断だった。
勝利を確信した瞬間に訪れる緩みであり、驕りから来る致命的な隙だ。
笑みを浮かべた少女の腹にカウンターの膝蹴りを放つ。
「カハッ!?」
油断して弛緩した腹筋に亡霊の騎士 の鋼鉄より硬い膝がめり込み、少女の体はくの字に折れ曲がり、吹き飛ばされて、壁に激突した。
純粋な殺意が込められた刃。
しかし、それ故に、殺気に敏感な獣の本能を目覚めさせてしまった。
ギリギリの所で目を覚ました少女は、寝起きとは思えない様な反応速度で、身を翻して亡霊の騎士 の大剣を躱した。
ベッドを両断した亡霊の騎士 は、間髪入れずに大剣を横薙ぎに振るう。
確実に当たる距離であり、少女の胴体を両断できると確信した瞬間、信じられない事に、少女は自らに向けて風の弾丸を放った。
衝撃波によって加速した少女は、一瞬にして亡霊の騎士 の刃が届かない距離まで後退していた。
二度も攻撃を避けられた。
脅威的な動体視力と反射神経だけでは無い。
信じられない事に、目の前の少女からは、冷静な判断力と熟練の冒険者の様な経験を感じた。
「侮っていた様だ・・・戦士として相手をしよう」
より一層、目の前の少女を生かしておく事は出来ないと亡霊の騎士 は、警戒心を上げる。
「その前に、誰よ貴方・・・変質者?」
犬耳の少女から、まるで汚物を見るかの様な軽蔑の視線を向けられている事に気付いた亡霊の騎士 は、困惑する。
「へ、変質者だと!?」
かつては英雄と呼ばれており、名誉ある騎士だった亡霊の騎士 にとって、変質者呼ばわりされた事は、心外だった。
「女子の寝室に無断で入ってくるなんて、変質者か泥棒くらいでしょ?」
犬耳の少女は、警戒心を顕にして、近くのカーテンに体を隠した。
その行為が、まるで変態だと言われている様な気がして、怒りが込み上げる。
「我が名はアダン・ローグマイヤー、誉高きエルダム王国の騎士である!断じて変質者などでは無い!」
頭に血が上った亡霊の騎士 は、つい昔の癖で生前の名を名乗ってしまった。
「眠っている無防備な女の子に不意打ちをする卑怯者が騎士なわけ無いでしょ」
「ウグッ!?」
犬耳の少女に、ド正論を返されて、亡霊の騎士 は、言葉に詰まる。
「しかも、エルダム王国って、千年前に滅んだ王国の名前じゃない、もう少しマシな嘘はつけなかったの?」
もう人々の記憶から忘れ去られたと思っていた祖国の名前を、目の前の少女が知っていた事に、亡霊の騎士 は、驚きと嬉しさが込み上げる。
「博識な娘だな、どこでエルダム王国の名前を聞いたのだ?」
亡霊の騎士 は、興味本位で質問する。
「古代語の本で読んだことがあるのよ」
古代語は、神々の時代に使われた言語であり、亡霊の騎士 が生きていた時代にも読める者は少数だった。
しかし、いつの時代にも、その時々の歴史が刻まれた謎の石板が発見されており、ダンジョンや遺跡などで発掘される魔導具にも古代語が使われている事が多い。
未だ解明されていない謎の多い文字だ。
「なるほど、古代語が読めるのか・・・ふむ」
亡霊の騎士 は、目の前の少女が古代語を読めると知り、顎に手を当てて考え込む。
「そんな事より、服くらい着させてくれるかしら?」
犬耳の少女は、カーテンから顔だけ出して、恥ずかしそうにジト目で亡霊の騎士 を睨みつけている。
「・・・好きにしろ」
本来なら、即座に斬り殺すべきだが、これ以上、騎士として不名誉な呼ばわれ方をしたくない亡霊の騎士 は、頭に手を当てて後ろを向いた。
それに、祖国の名を知る少女に対して、無意識の内に好意を抱いてしまっている自分がいた。
しかも、長年求めていた古代語を読める人物でもある。
亡霊の騎士 の中で葛藤が生まれていた。
「・・・準備は良いか?」
それでも、かつての主君である魔王との約束を守る為に・・・この娘を殺さなければいけない。
「ええ、良いわよ」
亡霊の騎士 が振り返ると、白いシャツに黒のホットパンツ姿に着替えた少女が立っていた。
「では、再開するとしよう」
亡霊の騎士 の全身から禍々しい漆黒のオーラが溢れ出る。
漆黒のオーラは、無数の槍になり、音速で射出された。
流星の如く放たれた無数の黒槍を、全てギリギリの所で躱しながら、壁や天井を四つん這いで縦横無尽に駆け巡る少女の姿は、まさに獣の如きだ。
「まさに獣だな」
防戦一方の様に見えても、少女のエメラルドグリーンの瞳は、常に亡霊の騎士 に向けられており、攻撃のチャンスを伺っている。
一瞬でも隙を見せれば、喉元に喰いつかれる様な野性じみた殺気を感じる。
黒槍の攻撃が途切れた瞬間、少女は天井を蹴り、真上から奇襲を仕掛けて来た。
生物の警戒が一番薄い頭上からの攻撃を亡霊の騎士 は、大剣の腹でガードする。
ガキンッと金属がぶつかり合う様な音が鳴り、大剣の腹に爪痕が残る。
「ほう、鋼鉄より硬い我が肉体に傷を付けるか」
亡霊の騎士 の魂と融合した鎧や武器は、暗黒物質と呼ばれる特殊な金属であり、砲弾を受けても傷一つ付かない強度を誇っていた。
亡霊の騎士 は、そのまま大剣を振り下ろすと、少女は大剣の腹を踏み台にして壁に跳躍した。
風を纏っているのか、音もなく綺麗に壁に着地した少女は、次の瞬間には、懐に潜り込んできていた。
亡霊の騎士 が大剣を振り下ろすよりも速く、少女の爪がギャリンっと鎧の脇腹を削り取った。
そのまま背後を取られた亡霊の騎士 は、振り向き様に大剣を横薙ぎに振るうが、少女は姿勢を下げて回避すると同時に、右腿を切り裂く。
亡霊の騎士 は、切り裂かれた右足で少女を蹴り上げるが、ガードされた上に、咄嗟に後ろに跳んだので、効いていない様だ。
「・・・面白い」
戦闘を愉しいと感じたのは何年振りだろうか?
亡霊の騎士 は、久しく忘れていた感情を思い出していた。
だが、何故だろうか?
この少女から、懐かしい気配を感じる。
まるで、旧友に出会ったかの様な感覚に違和感を禁じ得ない。
しかし、思考に耽った一瞬の内に、少女は、目にも止まらぬ速度で、亡霊の騎士 の懐に踏み込んでいた。
鋭い一撃だった。
右手の鋭い爪に風の刃を纏わせた一撃は、容易く亡霊の騎士 の胸を貫いた。
「やった!」
それは、油断だった。
勝利を確信した瞬間に訪れる緩みであり、驕りから来る致命的な隙だ。
笑みを浮かべた少女の腹にカウンターの膝蹴りを放つ。
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