元公爵令嬢の冒険者ライフ

文字の大きさ
10 / 60

第10話 パーティー

しおりを挟む
朝早くから、クロエは街外れにある武器屋を訪れていた。

「やっぱり、冒険者と言えば魔物退治よね!」

触手型モンスターを倒した事で自信が付いたクロエは、魔物の討伐依頼を受ける為に、武器を調達する事にした。



「それにしても、武器っていっぱいあるのね」

棚には大剣や片手剣だけでなく、槍や弓矢に鎧や盾、怪しい仮面など、見たことも無い武具が数多く展示されていた。
また、武器以外にも、砥石や武器の手入れに使う薬品など様々な商品が並べられており、素人のクロエには、訳が分からない。

「こんな武器使い熟せたらカッコ良さそうね!」

目の前にあった巨大な戦斧に手を伸ばすと、柄を掴んで持ち上げようとする。

「ンンッ!」

しかし、クロエの身の丈より大きい戦斧は、重過ぎてビクともしない。

「・・・私にはサイズが合わなそうね」

仕方無く、その隣に置いてあった刀を手にしてみる。

「これなら、何とか・・・持ち上がる・・けど・・・ちょっと重いかしら?」

刃渡り60cmくらいの刀は、両手で何とか持ち上げる事は出来たが、クロエの腕はプルプルと震えており、到底、振り回す事など出来そうに無かった。

その後も、色々な武器を手に持って見たが、弓矢は弦を引けず、鎧も重くて身動きが取れなくなる始末で、真面に使えそうな武器はダガーナイフくらいしか無かった。



「ナイフか・・・こんなんで魔物と闘えるのかしら?」

武器のリーチが短いという事は、自ずと魔物との距離も近くなる。
魔物との戦闘経験が無いクロエにとって、リーチの短さはかなり不安が大きい。

「やっぱり、単独ソロは危険よね?」

調べて分かった事だが、冒険者にはパーティー制度という仕組みが有るらしい。
パーティー制度とは、仲間と契約する事でパーティーを組み、共同で依頼を受注する仕組みだ。
報酬は頭数で割られるので、取り分は減ってしまうが、魔物討伐やダンジョン探索などにおいては、単独ソロに比べて、死亡率は格段に低く、安全性が高いのが特徴だ。

「パーティーを組むなら、やっぱり女冒険者よね!」

パーティーは、危険なダンジョンや森の中で背中を預ける存在であると同時に何日も生活を共にする一種の運命共同体の様な存在だ。

当然、冒険者はトイレも風呂も無い野営生活をする事も少なく無いので、男女のパーティーでは、様々なトラブルが発生しやすい。

クロエも得体の知れない平民の男と一緒にパーティーを組めばどうなるかは分かっており、トラブルの少ない同性の冒険者を探す事にしていた。

「コイツが紹介できる唯一の女冒険者ユナだ」

冒険者ギルドは、パーティー制度の為の人材紹介も行なっており、受付の老人に頼んだら、早速女冒険者を紹介してくれた。



「アンタが私とパーティーを組みたいって?」

紹介されたユナは、エメラルドグリーンの瞳でジロジロと品定めするかの様にクロエの事を見て、鼻で笑った。
だが、同様にクロエもユナの姿をジロジロと見て、怪訝な表情を浮かべていた。

豊満な胸や美しい体型にも目を惹かれるが、何よりクロエの視線を奪ったのは、ユナの茶髪頭から生えている狼の耳とお尻から生やしたフサフサな茶色い尻尾だった。

「獣人?」

獣人は亜人種の一種であり、王都では、奴隷として扱われている事が多く、貴族令嬢だったクロエは、見た事は殆ど無かったので驚いていた。

また、獣人は気性が荒かったり、野生的で犯罪に手を染める者も多いので、パーティーを組むには少し不安はある。

しかし、受付の話では、ユナはこの街で唯一の女冒険者らしいので、背に腹は変えられない。

「仕方ないわね、私はクロエ、宜し」

渋々だが、クロエが右手を差し出して握手を求めようとした瞬間、ユナが小さな声で、しかし、クロエにハッキリ聴こえる様に呟いた。

「・・・随分と弱そうね」

「は?」

一瞬にして、場の空気が凍り付く。

ユナの見下した様な目付きから、こちらの事を舐めている事がありありと伝わって来た。

「何よ!せっかく私が仲間になってあげようとしてんのに喧嘩売ってるの?」

ユナに舐められた事が許せないクロエは、つい昔の癖で買い言葉を返してしまう。

「ニャハハ!喧嘩?アンタみたいな弱っちい奴がウチに勝てるわけ無いじゃん?」

ユナは腹を抱えて嘲笑う。

「アハハッ!ワンちゃんの癖に猫みたいな笑い方ね!」

負けじとクロエがユナの笑い方をバカにした瞬間、ユナの顔色が変わった。

「へぇ~・・・良いわ、アンタとパーティー組んであげる」

その瞳は獲物を見つけた獣の様にギラついており、凶悪な笑みを浮かべていた。

「は? パーティー組むの?」

今の流れで、パーティーが成立すると思っていなかったクロエは、予想外の返事に困惑する。

「ほら、申請書にサインしたからパーティー成立ね」

ユナはクロエが事前に準備していたパーティー申請書にサインをして、受付に提出した。

「ああ、確かに受理した」

受付の老人は、受け取った申請書を魔導具に読み込ませると、クロエとユナの冒険者証にパーティー情報を書き込んだ。

「・・・これでパーティー成立?」

パーティーを組む事を希望していたはずなのに、何故か不安が込み上げる。

「・・・ついてきな」

ユナは小さく呟くと、冒険者ギルドを出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

処理中です...