33 / 70
第2章 ギースの塔
第33話 トロール
しおりを挟む
◆巨大草原に響く衝撃波
背の高い草に囲まれた湖の辺に、ぽっかりと開けた場所があった。
草は3メートル近くにもなり、大地を覆い隠すように密集している。
その中で、まるでサークルのように平らになったその場所には、二人の男女が立っていた。
一人は、美しい金髪を肩のあたりで切り揃えた少女。
彼女は、西洋風の蒼いワンピースを着こなし、大きな青い瞳で、もう一人の男の背中をじっと見つめていた。
もう一人の男は、この世界では珍しい黒髪と黒い瞳を持ち、背が高い。
ジーパンに黒いTシャツを着込み、その上からプレートアーマーを装備し、さらに黒いジャケットを羽織っている。
服は少しくたびれていたが、それでも戦い慣れた雰囲気を漂わせていた。
男は、自然体のまま、ゆっくりと呼吸をする。
「……じゃあ、行くか!」
そう言うと、男の体から光る透明なオーラのようなものが流れ出てきた。
それは次第に力強く、大きく膨らんでいく。
ミーナの青い瞳が大きく見開かれた。
男のオーラは半径3メートルほどの球状に広がり、凄まじいエネルギーを発していた。
大気が揺れ、周囲の草木がざわめく。
やがて、そのオーラは階層全体を包み込んだ。
ざわめく木々、飛び交う鳥や虫、土を這う小動物――
それらの一つ一つが、男の意識に鮮明に伝わってくる。
この空間のすべてを、男は正確に把握していた。
「これが……レンの、本気? あなた、本当に何者なの……?」
ミーナは、驚きに息をのんだ。
「かなり上の階層にも行ったことがあるけど、あなたほど化け物じみた魔力を持つ魔物はいなかったわよ?」
男――レンは、苦笑しながら肩をすくめた。
「酷いなぁ、魔物と一緒にしないでくれよ。それに、正確には、まだ全力じゃないよ」
「……あなた、本当に人間なの?」
ミーナの声が、かすかに震える。
「私、知ってるわよ。塔の魔力の泉を浴びた人間は魔法を使える。でも、あなたの力は、そういう次元の話じゃない。まるで――生まれながらに魔力そのものを操る存在みたい。」
レンは、その言葉には答えずに、ただミーナに手招きをした。
「な、何よ?」
ミーナは、若干警戒しながら、一歩後ずさる。
「いいから、来てって」
渋々、ミーナが近づくと――
一瞬のうちに、レンが彼女をお姫様抱っこした。
「……えっ!? な、何するのよ!? お、下ろしなさいよ! この、変態!!」
ミーナは一瞬、何が起きたのか理解できずに呆けたが、直後に顔を真っ赤にして、ジタバタと暴れた。
「こらこら、騒いでると、舌を噛むぞ? ……しっかり掴まってろよ?」
「えっ?」
次の瞬間――
空間干渉を発動したレンの足元の空間が歪む。
そして、一瞬にして音速を超えた。
気づけば、二人は上層への階段の前に立っていた。
◆暗黒の洞窟とトロールの襲撃
31階――そこは、光の一切差さない闇の洞窟だった。
今までの階層とは違い、松明のような明かりすら存在しない。
一寸先も見えず、ほんの少し動けば帰り道すら見失いそうなほどの完全な暗闇。
しかし――
「……なるほど」
レンにとっては何の問題もなかった。
即座にフォースを拡げ、空間認識を発動する。
洞窟全体が透けるように把握できた。
最短ルートも、上の階へ続く階段の位置も、一瞬で認識できる。
そして、前方に動く者の存在も――
岩のようにゴツゴツとした肌を持つ巨大な魔物。
身の丈15メートルの巨体に、鉄で覆われたフルフェイスの兜。
持っているのは、自分の体と同じくらいの大きさの棍棒。
「……通してくれそうにないな」
レンが一歩踏み出すと、トロールは気配を察知し、棍棒を振り上げた。
「ちっ」
巨大な棍棒が地面を砕き、洞窟全体に衝撃が走る。
レンは素早くミーナを下ろし、拳を握った。
「剣なんか、いらねぇな」
右腕に魔力を凝縮する。
「魔力圧縮拳」
拳の周囲に亀裂が走る。
次の瞬間――
ドンッ!!!
レンの拳がトロールの腹に突き刺さる。
空間が歪み、衝撃波が四方八方へ広がった。
トロールの巨体がのけ反り、背中が砕けるように抉れる。
「ブ……ブギィ……」
トロールの目から光が消え、ゆっくりと崩れ落ちた。
◆ミーナの叫び
レンが振り返ると、ミーナが顔を真っ青にしていた。
「……はぁ……俺には、剣は向いてないな。やっぱり素手が一番か」
そう言いながら、レンはミーナの方へ歩み寄る。
「ま、まさか、またやるつもり!?」
ミーナが後ずさる。
「だって、この方が早いだろ?」
「ちょっと待って! 先に心の準備を――うわああああああ!!!」
洞窟に、ミーナの悲痛な叫びが響き渡った。
背の高い草に囲まれた湖の辺に、ぽっかりと開けた場所があった。
草は3メートル近くにもなり、大地を覆い隠すように密集している。
その中で、まるでサークルのように平らになったその場所には、二人の男女が立っていた。
一人は、美しい金髪を肩のあたりで切り揃えた少女。
彼女は、西洋風の蒼いワンピースを着こなし、大きな青い瞳で、もう一人の男の背中をじっと見つめていた。
もう一人の男は、この世界では珍しい黒髪と黒い瞳を持ち、背が高い。
ジーパンに黒いTシャツを着込み、その上からプレートアーマーを装備し、さらに黒いジャケットを羽織っている。
服は少しくたびれていたが、それでも戦い慣れた雰囲気を漂わせていた。
男は、自然体のまま、ゆっくりと呼吸をする。
「……じゃあ、行くか!」
そう言うと、男の体から光る透明なオーラのようなものが流れ出てきた。
それは次第に力強く、大きく膨らんでいく。
ミーナの青い瞳が大きく見開かれた。
男のオーラは半径3メートルほどの球状に広がり、凄まじいエネルギーを発していた。
大気が揺れ、周囲の草木がざわめく。
やがて、そのオーラは階層全体を包み込んだ。
ざわめく木々、飛び交う鳥や虫、土を這う小動物――
それらの一つ一つが、男の意識に鮮明に伝わってくる。
この空間のすべてを、男は正確に把握していた。
「これが……レンの、本気? あなた、本当に何者なの……?」
ミーナは、驚きに息をのんだ。
「かなり上の階層にも行ったことがあるけど、あなたほど化け物じみた魔力を持つ魔物はいなかったわよ?」
男――レンは、苦笑しながら肩をすくめた。
「酷いなぁ、魔物と一緒にしないでくれよ。それに、正確には、まだ全力じゃないよ」
「……あなた、本当に人間なの?」
ミーナの声が、かすかに震える。
「私、知ってるわよ。塔の魔力の泉を浴びた人間は魔法を使える。でも、あなたの力は、そういう次元の話じゃない。まるで――生まれながらに魔力そのものを操る存在みたい。」
レンは、その言葉には答えずに、ただミーナに手招きをした。
「な、何よ?」
ミーナは、若干警戒しながら、一歩後ずさる。
「いいから、来てって」
渋々、ミーナが近づくと――
一瞬のうちに、レンが彼女をお姫様抱っこした。
「……えっ!? な、何するのよ!? お、下ろしなさいよ! この、変態!!」
ミーナは一瞬、何が起きたのか理解できずに呆けたが、直後に顔を真っ赤にして、ジタバタと暴れた。
「こらこら、騒いでると、舌を噛むぞ? ……しっかり掴まってろよ?」
「えっ?」
次の瞬間――
空間干渉を発動したレンの足元の空間が歪む。
そして、一瞬にして音速を超えた。
気づけば、二人は上層への階段の前に立っていた。
◆暗黒の洞窟とトロールの襲撃
31階――そこは、光の一切差さない闇の洞窟だった。
今までの階層とは違い、松明のような明かりすら存在しない。
一寸先も見えず、ほんの少し動けば帰り道すら見失いそうなほどの完全な暗闇。
しかし――
「……なるほど」
レンにとっては何の問題もなかった。
即座にフォースを拡げ、空間認識を発動する。
洞窟全体が透けるように把握できた。
最短ルートも、上の階へ続く階段の位置も、一瞬で認識できる。
そして、前方に動く者の存在も――
岩のようにゴツゴツとした肌を持つ巨大な魔物。
身の丈15メートルの巨体に、鉄で覆われたフルフェイスの兜。
持っているのは、自分の体と同じくらいの大きさの棍棒。
「……通してくれそうにないな」
レンが一歩踏み出すと、トロールは気配を察知し、棍棒を振り上げた。
「ちっ」
巨大な棍棒が地面を砕き、洞窟全体に衝撃が走る。
レンは素早くミーナを下ろし、拳を握った。
「剣なんか、いらねぇな」
右腕に魔力を凝縮する。
「魔力圧縮拳」
拳の周囲に亀裂が走る。
次の瞬間――
ドンッ!!!
レンの拳がトロールの腹に突き刺さる。
空間が歪み、衝撃波が四方八方へ広がった。
トロールの巨体がのけ反り、背中が砕けるように抉れる。
「ブ……ブギィ……」
トロールの目から光が消え、ゆっくりと崩れ落ちた。
◆ミーナの叫び
レンが振り返ると、ミーナが顔を真っ青にしていた。
「……はぁ……俺には、剣は向いてないな。やっぱり素手が一番か」
そう言いながら、レンはミーナの方へ歩み寄る。
「ま、まさか、またやるつもり!?」
ミーナが後ずさる。
「だって、この方が早いだろ?」
「ちょっと待って! 先に心の準備を――うわああああああ!!!」
洞窟に、ミーナの悲痛な叫びが響き渡った。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
