神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第2章 ギースの塔

第36話 赤鬼の狂戦

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◆迫る絶望

 まるで地鳴りのような低音が、規則正しく響き渡る。
 大地が僅かに震え、ガラス窓が小刻みに揺れていた。

 これは錯覚ではない。
 確かに何かが、こちらへ向かってきている――。

 先ほどまで降り注いでいた鉛玉の雨が止んでから、約二十分が経過した。
 しかし、額から流れる汗と震える膝は、時間と共にひどくなるばかりだった。

 この戦いは、今までとは違う――。

 エニスは、右手の袖で汗を拭いながら、自分の体調を確認した。
 傷口は塞がっていたが、腹部に微かに鈍い痛みが残っている。
 回復薬では治しきれないほどのダメージを内臓が負っているのだろう。

「クソッ……こんな戦い、初めてだ」

 ギースの塔では、何度も恐怖に直面してきた。
 だが、今回は違う。
 これまで培ってきた経験と勘が、**“本能的な恐怖”**として警鐘を鳴らしていた。

◆エリウスの報告

 俺たちは現在、ビルの中に避難している。

 正面入口をルークとエニスが見張り、裏口をエリウスとライオスが警戒していた。
 今のところ、敵が突入してくる気配はない。

 だが――。

検知ディテクション

 エリウスが魔法で壁の向こうを透視する。
 すると、彼の顔が青ざめ、額から滝のような汗が流れ出した。

「……おい、どうした? 何を見た?」

 ルークが焦りながら問いかけるが、エリウスは沈黙したまま動かない。

「エリウス! 敵はどんな奴だ? 何体くらいいる!?」

 ルークが怒鳴るように聞く。
 その声には、珍しく焦りが滲んでいた。

「……およそ、五千体だ」

 エリウスは、短く、はっきりと告げた。

「ごっ……五千体!? 俺たちの街の人口より多いじゃねぇか!!」

 ルークが絶句する。

「……間違いないのか?」

 ライオスが真剣な顔で確認する。
 普段は冗談を飛ばすような男だが、今は違った。

「……間違いない。人型の魔物が約五千、それに巨大な鉄の塊のような動くものが十体いる」

「……そうか」

 ライオスは、普段とは違い、静かに呟いた。

◆ライオスの決断

「や、やるって……どうするの!? 相手は五千よ!? しかも強力な遠距離武器を持ってるのに……」

 エニスが不安そうに尋ねる。

「……俺が行く」

 ライオスが、狂気じみた笑みを浮かべながら言った。

「ライオス、お前まさか……“あれ”をやるのか?」

 ルークが目を見開く。

「……あぁ。お前らはここから動くな」

「ダメよ!! ライオス!!」

 エニスが叫んだ。
 彼女は、ライオスの意図を察していた。

 ――ライオスの”狂戦士化”。

 それは、彼の持つ最強の戦闘能力だった。
 魔力を解放し、身体のリミッターを外すことで、数倍の戦闘力を得ることができる。

 だが、リスクが大きすぎる――。

 ① 発動すると理性を失い、敵味方の区別がつかなくなる。
 ② 戦闘後、身体に強烈な反動が残り、一時的に戦闘不能になる。

 敵が多すぎる今回の戦いでは、途中で力尽きる可能性が高い。
 つまり、ライオスは**“死にに行く”**のだ。

「……頼む、行かせてくれ」

 ライオスが静かに言う。

「俺の鎧なら、やつらの攻撃を防げる。だから、俺が適任だ」

「そ、それでも!!」

「分かるんだよ……今回の敵は”ヤバい”ってな」

 ライオスは、腰に提げたフルフェイスの兜を被る。
 鬼の形をしたその兜は、彼の獣のような表情を隠した。

「……俺はもう十分生きた。最後は、仲間のために命を張りたい」

 彼は巨大なバトルアックスを握りしめると、ゆっくりと構えた。

◆突入

 だがその時――

 「バンッ!」

 正面のガラス窓が粉々に砕けた。

 黒い筒状のものが転がり込み、瞬く間に白い煙を撒き散らす。

「くそっ!! 煙を吸うな!! 毒かもしれん!!」

 エリウスが指示を出す。
 裏口へと後退しようとするが――

 「ドゴン!!」

 正面のドアが突き破られ、黒い服を着た集団が突入してきた。
 顔には不気味なマスク。
 そして――黒い金属の武器を構えていた。

 「タタタタタタタタタッ!!」

 甲高い破裂音が鳴り響き、銃弾が壁や柱を砕いていく。

 ――その瞬間。

「ウオオオオオオオ!!!!!!」

 ライオスが咆哮を上げ、突進した。

◆鬼神の戦場

 銃弾がライオスの鎧に当たる。

 しかし、すべて弾かれる。

 ライオスの巨体が突っ込み、バトルアックスを振りかざす。

 「ズバァァァァン!!」

 一撃で四体を胴体ごと両断。

 さらに後方にいる五体に突進し――

 「ブシャァァ!!」

 すべてを両断する。

「今だ!! 逃げろ!!」

 ライオスが叫ぶ。
 エリウスたちは裏口から脱出。

 エリウスは魔法を発動した。

透明化インビジブル

 彼らの姿が消える。

 そして――ライオスも、正面から外へ出た。

◆地獄の戦場

「はぁ……マジかよ……」

 ライオスの前に広がる無数の敵軍。

 骸骨兵と黒服の兵士たち。
 目に見えるだけでも数百。



「……まったく、抜け道もねぇか」

 ライオスはバトルアックスを構える。

 心は燃えていた。

「ウオオオオオオオ!!!!!」

 狂戦士の力が解放される――。

 赤黒いオーラが燃え盛り、ライオスの全身を包み込む。

「全軍迎撃用意――ファイアー!!」

 戦場は、血と炎に染まる――。
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