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第2章 ギースの塔
第47話 天を覆う蒼き翼
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◆降臨する影
大きな影が空を横切った。
一瞬、塔全体が影に呑まれるほどの巨大な影だった。
レンは空を見た。
ラティヌスも空を見た。
ミーナやエニスも、皆が空を見上げた。
きっと、地上にいる人間たちも、この影を見ただろう。
――そして、誰一人、目を逸らすことができなかった。
空には、一羽の蒼い鳥が羽ばたいていた。
その鳥はあまりにも巨大で、蒼い翼が空を覆い隠していた。
羽は一枚一枚が氷のような蒼炎で出来ており、空気そのものを凍てつかせる。
まるで神の意志を体現したかのような神々しさと畏怖を抱かせる美しさ。
そのアイスブルーの瞳が、レンとラティヌスを静かに見つめた。
――そして、告げる。
「外から来た者よ。どうか、ラティヌスを許してはもらえないでしょうか?」
蒼い鳥は、美しい女性の声で、さえずるように話した。
◆神の声と管理者の矛盾
「あ、アテナ様! このような、人間ごときに許しを請う必要などありません!」
ラティヌスは酷く狼狽していた。
「お黙りなさい、ラティヌス」
蒼い鳥の声が響くと、ラティヌスの身体がピクリと震えた。
「私は貴方を見ていました。
貴方がどれほど世界を愛し、どれほど悲しみ、どれほど悩んだのか。
私も、同じように愛し、悲しみ、悩みました。
しかし、私は貴方に世界の管理を任せ、貴方が自ら気づくのを待った。
――だが、貴方は変わらなかった」
ラティヌスは、唇を噛み締める。
「……しかし、今、貴方は変わろうとしている。
この“外から来た者”によって」
アテナはレンを見た。
「だからこそ、貴方はこの者に感謝を示さなければなりません」
「アテナ様……」
ラティヌスは、深く膝をつき、頭を下げる。
「許されるのですか……?」
「貴方は私の子。私は貴方を愛している、ラティヌス」
蒼い鳥は、慈愛に満ちた声で告げた。
◆神の正体と異物の排除
「で? あんたは何者なんだ?」
レンが口を開く。
「いきなり出てきて、俺にこいつを許せって……こいつの保護者か何かか?」
「また無礼を! アテナ様は、この世界の神だぞ!」
ラティヌスが怒鳴る。
「神?」
レンは眉をひそめる。
「そんな存在が本当にいたのか……? でも、見た感じ、でっかい鳥だろ?
どうせ強い生物だからって、畏れて崇めているだけじゃないのか?
それに、人にお願いするにしては、頭が高いんじゃないか?」
レンの言葉に、ミーナとエニスは顔を青ざめた。
「れ、レン!? そんな口の利き方して……!!」
しかし、アテナは笑った。
「ふふ、威勢が良いのですね」
次の瞬間、蒼い炎が天を覆い尽くし、光が爆ぜるように広がった。
――そして、神は姿を変えた。
透き通った蒼い衣を羽織り、長い髪を風に靡かせ、アイスブルーの瞳でレンを見つめる美しき女神。
「初めまして、外から来た者よ。 私の名はアテナです」
◆世界の異物
「ラティヌスを許せ、と?」
「はい。ですが……本当に伝えたいのは、別のことです」
アテナの瞳が冷たくなる。
「この世界に存在してはならない異物……貴方のことです」
「……俺のこと?」
「貴方はこの世界に属さぬ者。
本来、この世界に入り込むことは許されない。
私の世界は完全なるもの。異物は排除されるべき存在」
レンは、無意識に拳を握った。
「……つまり、俺を消したいと?」
「理解が早くて助かります。 そう、貴方を排除しなければ、この世界の秩序は崩れるのです」
アテナの周囲に、蒼い炎が渦巻く。
レンの背筋に冷や汗が伝う。
「……だが、今回は、ラティヌスの件で借りができてしまいました」
「……?」
「だから、選ばせましょう。
この世界を去るか、滅ぼされるか」
レンは一瞬、息を呑んだ。
◆記憶の消去と別れ
「……分かった。この世界から去る」
「それが賢明です」
「だが、最後にミーナたちに別れの挨拶をさせてくれ」
「なりません」
アテナの声が鋭くなる。
「貴方はこの世界の異物。彼女たちに関わる資格はない」
「……俺の存在も、全部消すってことか?」
「ええ。貴方が去った後、この世界から貴方の痕跡は消えます。
彼女たちの記憶からも、貴方は消える」
レンの心が軋む音がした。
しかし――彼は静かに笑った。
「……なら、いいさ」
◆世界の壁を越えて
レンは拳にフォースを込め、世界の壁を砕く。
黒く不気味な、光すら呑み込む亀裂が開く。
レンは、一度だけ世界を振り返った。
「じゃあな」
そして、ゆっくりと暗い亀裂の中に消えた。
◆消えた冒険者の記録
それからしばらくして――
冒険者教会は解散した。
「……え? そんな冒険者、知らないわよ」
ミーナは、 そんな男のことなど記憶になかった。
しかし――
森の奥で、名も知らぬ男の登録証を投げ捨てた瞬間、
なぜか涙が零れ落ちた。
「……バカヤロー」
木の麓に 落ちた登録証。
そこには、かすれかけた文字でこう刻まれていた。
「レン」
第2章 ギースの塔 完
大きな影が空を横切った。
一瞬、塔全体が影に呑まれるほどの巨大な影だった。
レンは空を見た。
ラティヌスも空を見た。
ミーナやエニスも、皆が空を見上げた。
きっと、地上にいる人間たちも、この影を見ただろう。
――そして、誰一人、目を逸らすことができなかった。
空には、一羽の蒼い鳥が羽ばたいていた。
その鳥はあまりにも巨大で、蒼い翼が空を覆い隠していた。
羽は一枚一枚が氷のような蒼炎で出来ており、空気そのものを凍てつかせる。
まるで神の意志を体現したかのような神々しさと畏怖を抱かせる美しさ。
そのアイスブルーの瞳が、レンとラティヌスを静かに見つめた。
――そして、告げる。
「外から来た者よ。どうか、ラティヌスを許してはもらえないでしょうか?」
蒼い鳥は、美しい女性の声で、さえずるように話した。
◆神の声と管理者の矛盾
「あ、アテナ様! このような、人間ごときに許しを請う必要などありません!」
ラティヌスは酷く狼狽していた。
「お黙りなさい、ラティヌス」
蒼い鳥の声が響くと、ラティヌスの身体がピクリと震えた。
「私は貴方を見ていました。
貴方がどれほど世界を愛し、どれほど悲しみ、どれほど悩んだのか。
私も、同じように愛し、悲しみ、悩みました。
しかし、私は貴方に世界の管理を任せ、貴方が自ら気づくのを待った。
――だが、貴方は変わらなかった」
ラティヌスは、唇を噛み締める。
「……しかし、今、貴方は変わろうとしている。
この“外から来た者”によって」
アテナはレンを見た。
「だからこそ、貴方はこの者に感謝を示さなければなりません」
「アテナ様……」
ラティヌスは、深く膝をつき、頭を下げる。
「許されるのですか……?」
「貴方は私の子。私は貴方を愛している、ラティヌス」
蒼い鳥は、慈愛に満ちた声で告げた。
◆神の正体と異物の排除
「で? あんたは何者なんだ?」
レンが口を開く。
「いきなり出てきて、俺にこいつを許せって……こいつの保護者か何かか?」
「また無礼を! アテナ様は、この世界の神だぞ!」
ラティヌスが怒鳴る。
「神?」
レンは眉をひそめる。
「そんな存在が本当にいたのか……? でも、見た感じ、でっかい鳥だろ?
どうせ強い生物だからって、畏れて崇めているだけじゃないのか?
それに、人にお願いするにしては、頭が高いんじゃないか?」
レンの言葉に、ミーナとエニスは顔を青ざめた。
「れ、レン!? そんな口の利き方して……!!」
しかし、アテナは笑った。
「ふふ、威勢が良いのですね」
次の瞬間、蒼い炎が天を覆い尽くし、光が爆ぜるように広がった。
――そして、神は姿を変えた。
透き通った蒼い衣を羽織り、長い髪を風に靡かせ、アイスブルーの瞳でレンを見つめる美しき女神。
「初めまして、外から来た者よ。 私の名はアテナです」
◆世界の異物
「ラティヌスを許せ、と?」
「はい。ですが……本当に伝えたいのは、別のことです」
アテナの瞳が冷たくなる。
「この世界に存在してはならない異物……貴方のことです」
「……俺のこと?」
「貴方はこの世界に属さぬ者。
本来、この世界に入り込むことは許されない。
私の世界は完全なるもの。異物は排除されるべき存在」
レンは、無意識に拳を握った。
「……つまり、俺を消したいと?」
「理解が早くて助かります。 そう、貴方を排除しなければ、この世界の秩序は崩れるのです」
アテナの周囲に、蒼い炎が渦巻く。
レンの背筋に冷や汗が伝う。
「……だが、今回は、ラティヌスの件で借りができてしまいました」
「……?」
「だから、選ばせましょう。
この世界を去るか、滅ぼされるか」
レンは一瞬、息を呑んだ。
◆記憶の消去と別れ
「……分かった。この世界から去る」
「それが賢明です」
「だが、最後にミーナたちに別れの挨拶をさせてくれ」
「なりません」
アテナの声が鋭くなる。
「貴方はこの世界の異物。彼女たちに関わる資格はない」
「……俺の存在も、全部消すってことか?」
「ええ。貴方が去った後、この世界から貴方の痕跡は消えます。
彼女たちの記憶からも、貴方は消える」
レンの心が軋む音がした。
しかし――彼は静かに笑った。
「……なら、いいさ」
◆世界の壁を越えて
レンは拳にフォースを込め、世界の壁を砕く。
黒く不気味な、光すら呑み込む亀裂が開く。
レンは、一度だけ世界を振り返った。
「じゃあな」
そして、ゆっくりと暗い亀裂の中に消えた。
◆消えた冒険者の記録
それからしばらくして――
冒険者教会は解散した。
「……え? そんな冒険者、知らないわよ」
ミーナは、 そんな男のことなど記憶になかった。
しかし――
森の奥で、名も知らぬ男の登録証を投げ捨てた瞬間、
なぜか涙が零れ落ちた。
「……バカヤロー」
木の麓に 落ちた登録証。
そこには、かすれかけた文字でこう刻まれていた。
「レン」
第2章 ギースの塔 完
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