神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第3章 魔法大学ザザン

第53話 未知の力

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 夜明けとともに、彼女は目を覚ました。
 それは、長年の習慣であり、もはや意識するまでもない当たり前の行動だった。

 静かにベッドから起き上がると、部屋のカーテンを開け、朝日を浴びる。肌に心地よい温もりを感じながら、一度大きく伸びをした。

「……よし。」

 短く呟き、彼女はタンスを開ける。そこには整然と畳まれた蒼いローブの制服が入っていた。それを手に取り、そのまま大浴場へと向かう。

 魔法大学ザザンの学生寮には、大浴場が設けられている。基本的に24時間365日利用可能であり、朝の時間帯は利用者も少ない。

 今は午前5時。広々とした脱衣所には、誰の姿もなかった。

 彼女は淡々とパジャマのボタンを外し、上着を脱ぐ。白く滑らかな肌があらわになり、浴場の静寂の中で、微かな衣擦れの音が響いた。

 下着を脱ぎ、ロッカーに衣服を収めると、タオルを手に持ち、浴場の扉を開いた。

 湯気が立ち込める広い浴場には、大きな浴槽が三つ並んでいる。左から、濁り湯、薬草湯、そして炭酸湯。それぞれの効能が異なり、その日の気分や体調によって選ぶことができる。

 彼女は迷わず炭酸湯へと足を運び、ゆっくりと湯船に浸かった。炭酸の泡が肌を刺激し、血流が促されるのを感じる。

「……ふぅ。」

 湯の中で軽く息をつきながら、目を閉じた。この瞬間が、彼女にとって一日の始まりを整える大切な時間だった。

 約30分ほど浸かり、体温が十分に上がったところで、彼女は湯船を出た。
 タオルで身体を拭き、しばらく鏡の前の椅子に座る。

 鏡に映るのは、見慣れた自分の姿。
 この地方では珍しい黒髪は、湯気の中でしっとりと潤い、艶やかに輝いている。

 しかし、彼女はそれをあまり気にしていなかった。
 魔法の訓練や戦闘では、長い髪は邪魔になる。だから、肩のあたりで切り揃えている。

(友人にはよく「勿体ない」と言われるけど……生き残るためには、実用性が大事。)

 髪だけではない。
 自分の体型もまた、戦闘を意識して鍛えられたものだ。
 細身で無駄のないプロポーション。胸は小ぶりだが、それもまた動きやすさを考えれば悪くない。

(……結局、戦いで死んでしまったら、何の意味もないから。)

 彼女はそんな思考を振り払うように、制服へと着替えた。
 蒼いローブを羽織り、紺色のパンツを履く。少しぴったりとしたタイプのパンツで、動きやすさを重視したものだ。

 そして、腰にベルトを通し、両腰に黒い拳銃が収められたホルスターを装着する。

 魔銃――魔力を込めた特殊な弾丸を射出する希少な武器。
 彼女の愛用する二丁の魔銃は、戦場で幾度となく彼女を守ってきた。

 身支度を整えた彼女は、パジャマを洗濯機に入れた後、食堂へと向かった。

 まずは、いつもの習慣としてフルーツ牛乳を一気飲みする。
 甘い味が口の中に広がり、脳が目覚める感覚を覚えた。

(朝のこの一杯が、最高の時間。)

 魔法大学ザザンでは、基本的に生活費はかからない。
 食堂は無料、学生寮も無料、学費も無料。
 貴族だろうと平民だろうと、同じ寮に住み、同じ食事をとる。

 全ては「出自や家柄で差別されることのない学習環境を提供する」という学長の方針によるものだった。
 その資金は、全て寄付金によって賄われている。

(合理的だし、私はこの大学の理念が好き。)

 彼女は食堂で、地魚の味噌煮定食を頼み、適当な席に座る。
 一人で食べることに、何の抵抗もない。
 以前、グループで食事をしたこともあったが、意味のない会話に時間を取られるのが非効率だった。

(黙々と食べるほうが、時間を有効に使える。)

 朝食を終えた後は、お茶を飲みながら読書をする。
 食堂が静かなこの時間帯は、彼女にとって貴重な読書時間だった。

 時刻が7時を回り、次第に食堂に人が増えてきた。
 彼女は本を閉じ、ため息をつく。そろそろ出ようかと思ったその時――

 「男が女子寮に侵入した!」

 一人の女子生徒の叫びが、食堂内に響いた。

(……?)

 彼女は騒ぎの方へ目を向ける。
 そこでは、黒髪の青年が女子生徒たちに囲まれ、揉みくちゃにされていた。

(……黒髪?)

 この地方では珍しい髪色。それを見た瞬間、彼女は胸の奥に引っかかるものを覚えた。

(もしかして……彼も?)

 魔王によって滅ぼされたジール大陸。
 故郷を失った者たちの中には、生き延びた人間もいると聞く。

(……興味が湧いた。)

 彼女は立ち上がり、騒ぎの中へと足を踏み入れた。

 中庭では、試験が行われていた。
 彼の魔力量は―― ゼロ。

 しかし、次の試験で、彼は 何もないはずの空間から 岩を粉々に砕いた。
 彼女の魔眼ですら、その動きを捉えることができなかった。

「今……何をしたの?」

 彼女は、自分の胸が高鳴るのを感じた。

 (学長が推薦した理由……ようやく分かった気がする。)

 この男は、常識の外にいる存在 だ。

 もっと知りたい――そう思った。
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