神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第3章 魔法大学ザザン

第58話 影と決意

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暗い部屋の中に、一人の人影があった。
月明かりが窓から差し込み、銀色の髪を照らしている。
その髪は光を受けて輝き、まるで神々の祝福を受けたかのような美しさだった。

だが、彼女の瞳には神聖な輝きなど微塵もない。

エメラルドグリーンの瞳の奥で、幾何学模様が赤く妖しく光る。
ローゼ・マーテリウス・エルドラドの「魔眼」が、その怒りと苛立ちを映し出していた。

ギリッ。

小さな音を立てて、彼女の細くしなやかな指が拳を握りしめる。

「……あの男……私の魅了チャームが効かないなんて……」

彼女の美しい唇が、静かに動く。
しかし、その声には、激しい屈辱と怒りが滲み出ていた。

「この私を見て、まったく好意を抱かなかったということ? それどころか、警戒すらしていた……? そんなこと……絶対に許さない。」

自分に従わない者など、これまで存在しなかった。

いや、正確には「存在させなかった」。

ローゼの魔眼「魅了チャーム」は、相手の意識を侵食し、自分に対する好意を増幅させる。
その影響下にある者は、ローゼを「絶対の存在」と認識し、盲目的に服従する。
しかし、この能力には明確な条件があった。

——対象が、少なからず自分に好意を持っていること。
——そして、相手が自分に対して警戒心を抱いていないこと。

その二つを満たしていなければ、魅了は効かない。

これまで、彼女はその制約を意識したことがなかった。
なぜなら、どんな相手も、彼女の容姿や地位、甘い言葉に引き込まれ、たやすく心を開くからだ。

だが、あの男——神谷錬だけは違った。

彼は最初から、ローゼに一切の興味を示さなかった。
ただの無関心ならまだしも、むしろ彼女に対して明確な警戒心を持っていた。

「気に入らない。気に入らないわ。」

ローゼは椅子から立ち上がり、窓の外を見つめる。
夜空に浮かぶ月が、彼女の冷えた感情を映し出すように静かに輝いていた。

「……必ず後悔させてあげますわ。」

彼女の唇が、冷たく歪んだ。

入学式の朝

コンコン!

ノックの音が、夢の境界線を打ち砕いた。

「ん……?」

寝ぼけた意識のまま、俺は薄く目を開ける。
外はまだ薄暗く、時計を見ると朝6時を回ったばかりだった。

「こんな朝早くから、誰だ……?」

不機嫌そうにぼやきながら、俺はドアを開ける。

「おはよう!レン!昨日はよく眠れた? 今日は入学式だよ! 食堂も混むと思うから、早めにご飯食べよ? ……あっ!? ゴメン!!」

勢いよく言葉を発したハルカが、俺の姿を見て突然真っ赤になり、くるりと後ろを向いた。

「……ん?」

違和感を覚えつつ、自分の格好を見る。

ハーフパンツが妙に膨らんでいた。

(……朝立ち……か。)

「……ご、ゴメン! ちょっ、ちょっと待ってて! 今、支度するから!」

「……う、うん!」

慌ててドアを閉め、俺は急いで着替えた。

食堂での異変

「昨日とは、なんか雰囲気違うな……。」

食堂に入った瞬間、俺は違和感を覚えた。
昨日までのあの敵意むき出しの視線がない。

誰も俺を気にしていない。

まるで——

「俺の存在を意識的に無視している」

そんな感覚だった。

「どうしたの、レン?」

ハルカが心配そうに俺を見るが、俺は軽く首を振った。

「いや、なんでもない。」

とりあえず、目の前の朝食に手を伸ばす。
その瞬間——

スッ——

「……!」

俺の背後から、鋭い殺気を含んだ飛来物が接近してきた。

(——フォーク!?)

即座に、俺は自分のフォークを振り、飛んできたフォークを弾いた。

キンッ! カランッ!

床に転がるフォークの音が、静かな食堂に響く。

「誰だ?」

振り返るが、誰も答えない。

ハルカが不安げに俺を覗き込む。

「レン? 大丈夫?」

「……ああ、何でもない。誰かがフォークを落としたみたいだ。」

「……レン?」

ハルカの目が、少し怒っている。

だが、俺が口を開く前に——

バシュッ!

皿が飛んできた。

しかも、今度はハルカを狙って。

——その瞬間、ハルカが動いた。

「……!」

椅子を蹴って跳び、飛んできた皿を紙一重でかわす。

皿は壁にぶつかり、パリンッ! と砕け散った。

そして次の瞬間——

ハルカは銃を抜いていた。

「……誰?」

その問いと同時に、茶髪の女生徒の髪を乱暴に掴む。

「ちょ、ちょっと! 何のつもりよ!」

「私に何か用? ちゃんと口で言えば?」

ハルカの瞳が、冷たく光る。

「コソコソしてると、次はこの頭、吹き飛ばすわよ?」

その場が、凍りついた。

「な、何のこと!? 証拠なんて——」

ガチャリッ。

ハンマーが起こされる音が響いた。

「次、やったら……撃つわよ?」

茶髪の女生徒は、青ざめた顔で震えていた。

「……ヒィッ!」

——ハルカさん、怖っ。

入学式の朝は、波乱の幕開けだった。

だが、これはほんの序章に過ぎない。

なぜなら、ローゼの企みは、まだ始まったばかりだったから——。
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