堕ちた令嬢と冥界の契約

第24話 裏切りの誘惑

牢獄の冷たい石床に座り込んだクロエ・ハートフィリアは、身を切るような屈辱感と絶望に打ちひしがれていた。彼女の美貌は、今まで数多くの者を魅了し、何度も自分の窮地を救ってきたはずだった。それが、この狭く湿っぽい牢獄では、何の価値も持たないかのように思えた。

「こんな状況から……どうにかして抜け出さなきゃ……」

看守を誘惑して牢獄から出るという計画が失敗したにもかかわらず、彼女の頭の中ではまだその方法しか考えられなかった。何かのチャンスが訪れるかもしれないという微かな希望を胸に抱きつつ、彼女は次の機会を待っていた。

それから数日後、同じ看守が再びクロエの牢にやって来た。彼は以前と同じように、無表情で食事を渡すだけだったが、クロエはその瞬間を逃さなかった。看守が以前彼女を嘲笑したことは、悔しい思い出となっていたが、彼女にはもう他に策がなかった。

クロエは再び誘惑の作戦を試みることにした。彼の冷たい態度は変わらないかもしれないが、彼の欲望に付け込めば、少なくとも少しでも有利に働く可能性があった。

「ねえ……もう一度、お願いがあるの」

クロエは看守に向けて優しい声で囁きかけ、再び全裸の自分を彼に意識させるように体を動かした。彼女の動きは、かつて多くの男性を虜にしたものであり、看守も一瞬その動きに目を奪われたようだった。

「なんだ、お嬢さん。また同じ手を使うつもりか？」

彼は冷たい笑みを浮かべながらも、その目には興味が浮かんでいた。クロエはそのわずかな変化を見逃さず、さらに誘惑の言葉を重ねた。

「お願い……こんな寒いところにずっと閉じ込められているのは耐えられない。あなたが……少しだけでも、私をここから出してくれたら、何でもするわ」

クロエの言葉は震えていたが、それは寒さや恐怖だけではなかった。彼女は自分がどこまで落ちたのかを感じていたが、それでも生き延びるために自分の体を武器として使うしかなかった。

「何でも、か……？」

看守はしばらく考えるように黙り込んだ。彼の目がクロエの体をじっくりと舐め回すように動き、彼女の言葉の意味を噛み締めるかのようだった。そして、彼はやがて決断をしたかのように、鉄格子の鍵を取り出し、扉を開けた。

クロエは希望を見出した。これで、この冷たい牢獄から抜け出せるかもしれない。少なくとも、一時的にでも自由を得られると。

だが、現実は彼女の期待とはかけ離れていた。

看守は、クロエの体に触れると、彼女を押し倒すようにして全裸のまま無理やり奪った。クロエは抵抗することもできず、ただその屈辱に耐えるしかなかった。彼女は助けを求めるつもりで誘惑を試みたが、彼の欲望の対象にされたに過ぎなかった。

「……これで、満足か？」

看守は荒い息をつきながらクロエにそう言い、彼女を一瞥した。そして、まるで何事もなかったかのように立ち上がると、鉄格子の外に戻った。彼女を牢から出すという約束は一切守られず、ただ体を奪われただけだった。

「待って……私をここから出して……！」

クロエは必死に叫んだが、看守は冷たく笑うだけだった。

「お前みたいな囚人を出すわけがないだろう。ありがたく思えよ、少しだけ相手してやったんだからな」

彼は扉を乱暴に閉め、再び牢の鍵をかけた。クロエはその音が耳に響くたび、さらに深い絶望に沈んでいくような感覚に襲われた。

床に倒れ込んだクロエは、涙をこらえながら体を丸めた。彼女の誇りは完全に砕かれ、自分がどこまで堕ちたのかを痛感していた。

「何も……何も変わらなかった……」

誘惑は失敗に終わり、彼女は助かるどころか、さらに屈辱的な体験をする羽目になった。そして彼女は再び、冷たい牢獄の中で孤独に震えることとなった。

その夜、クロエはもう一度自らに問いかけた。

「……私は、どうすればいいの……？」

答えは見つからなかったが、彼女の心の中には、希望が完全に消えかけていた。