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第2章2部
霊域
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――劫火峡谷――
〈深さ2,187メートル 距離14キロメートル 切り立った大きな岩と険しい山岳に囲まれた劫火渓谷の気温は50度を超え、その環境に特化、または変性した生物、植物が生息している。
しかし、そんな環境下においても渓谷の底に流れる川は不思議と冷たく、その謎は解明されていない。〉
セリカは図書室から借りてきた劫火渓谷についての資料を読んでいた。隣には同じく地図を確認しているジェシドとシリアがいる。
「50度・・・。呼吸すら難しい環境だな・・・。」
「険しいでしょうが、歩道はあります。しかし徒歩は自殺行為ですわね・・・。」
「そうだね。やっぱり空を飛んでいく方法しかないのかなぁ・・・。」
シャノハからクエスト受託のサインを受け取った3人は、魔術中央図書館――(通称ACL)へ行く計画を立てていた。
やはり1番の問題はACLまでに通らなければならない劫火渓谷をどう攻略するかだろう。
セリカは再び資料のページを捲った。そしてある単語に目を止めた。
(霊域・・・?)
シリアの制服の裾を軽く引っ張り、資料に書いてある文章の文字をなぞる。
「なぁ、シリア。これは何だ?『劫火渓谷は火精霊の霊域と呼ばれる場所でもある。』」
「え・・・。あぁ、霊域とは精霊が住まう神聖な場所という意味ですわ。四大元素の精霊が鎮座する場所には加護が得られエレメントの恩恵が授かれるという話です。」
「恩恵?」
「火精霊のエレメントを持つ者は、その場所に行くと持っている力が増幅したり、眠っている力を呼び覚ますことができるってことさ。まぁ、実証例は見たことはないけどね。」
「ふ~~ん。他の精霊にもそんな場所があるのか?」
「もちろんですわ。霊域とは精霊の始まりの場所でもあり、私たちのエレメントのルーツでもある厳かな場所なんです。私も土精霊の霊域を訪れてみたいですわ。」
「ということは、シリア君のエレメントは土精霊かい?」
ジェシドが地図から顔を上げる。
「はい、私は土精霊ですわ。」
「そうなんだ、僕と同じだね。ということは、水精霊と土精霊の編成か。エレメントの相性は良さそうだ。」
「相性?」
「エレメントにも相性があるんだよ。そもそも僕たちがエレメントを使えるのは精霊を使役して力を借りているからなんだ。
例えば、火精霊と風精霊は相性がよくて、水精霊と土精霊も相性がいい。でも、火精霊と水精霊、風精霊と土精霊は相性が悪いとされているんだ。」
「火精霊と土精霊、水精霊と風精霊は良くも悪くもって感じですわね。」
「てことは、エリスとテオ、ロイと菲耶は相性が悪いってことか?」
「安心してください。精霊同志の相性が悪いってことですので、それを使役する私たちには関係ありませんわ。」
「そうか。」
「確かにエレメントを使う僕たちの相性は関係ないけど、連携を組む時には必要となってくるからね。チームのエレメント情報はお互いに確認しておかないといけないんだ。」
「連携・・・チーム・・・。」
「セリカ君?どうかした?」
「いや、大丈夫だ、続けてくれ。」
「そうかい? じゃあ、セリカ君のエレメントは水精霊なのは分かった。実戦クラスだから主に戦闘に使えるエレメントを使用できると思っていていいかい?」
セリカは控えめに頷く。ジェシドはノートに情報を書き込んでいった。
「頼もしいね。僕は実戦なんてからっきしだから・・・。シリア君は土精霊でどんな技が使えるのか教えてもらっていいかい?」
「私はこの魔術具でもある式神にエレメントを注入して具現化することができますわ。」
シリアは胸に挿してある式神を取り出しジェシドに見せた。
「式神?わぁ、特殊な加工がしてある素材だね。初めて見たよ。これは・・・熊?ってことは、熊を具現化できるってことだね。」
「おっしゃる通りですわ。この式神は先祖代々、秘めやかに継がれている技術なのです。でも・・・」
少し寂し気な横顔が下を向く。
「今は扱える者も少なくなりました・・・。」
俯いたシリアの横顔にセリカは声を掛けようとしたが、出てくる言葉が見つからない。
「貴重な魔術具を見せてくれてありがとう。こんなスゴイ魔術具を大事に受け継いできたんだね。シリア君はきっとステキな魔術師になれると思うよ。」
シリアの式神を大事そうに手渡したジェシドはニッコリと笑った。
ジェシドの言葉にシリアは思わず顔を上げる。
「はい!もちろんですわ!」
シリアの笑顔にホッとしたセリカは、何か思いついたように、あっ、と声を出した。
「セリカ君、どうしたの?」
「劫火渓谷を空から越えると言っていたな?」
「え?う、うん・・・。陸路より可能性があるとは思っているけど。」
「シリアの式神に鳥はいないのか?その鳥に乗って渓谷を越えるというのはどうだろう!?」
とてもいい案を思いついたと言わんばかりに、セリカが珍しく高揚している。
しかし、セリカとは対照的にシリアは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんなさい。私は土精霊のエレメントなので主に地に住む動物しか具現化できないのです。
魚類は全然ダメだし、鳥類も今のところ1羽ぐらいしか式神を具現化できなくて・・・。もっと魔法力を大きくすれば扱える式神も増えるのですが・・・。」
再び俯いたシリアの悲しそうな横顔にセリカは焦ってしまった。
「そ、そうか。シリアが謝ることでは全然ない!それにシリアの式神には私も助けられてばっかりだ。
この前だって、あのモフモフとした毛布のような式神のお陰で私は無事だったんだ、ぜひ今度お礼を言いたい!」
セリカが慌てふためくのが面白くて、シリアは思わず笑ってしまった。
「ふふふ。彼女は絹江さんですわ。彼女のお腹の中はとっても気持ちがいいですものね。」
「絹江さんというのか。とても気持ちが良くてその時の意識は無いぐらいだ。またお会いしたいものだ。」
「えぇ、またすぐにお会いできますわ。」
セリカとシリアの微笑ましいやりとりを隣で聞いていたジェシドは何か考え込んでいる。
「シリア君。その鳥の式神なんだけど大きさはどれくらいなんだい?」
「えっ・・・?先ほども言いましたが期待などしないでください。鳥類はまだ難しくて・・・その、こんなに小さいのです。」
自分の無力さを露呈するようで、シリアはモジモジとしている。しかし胸からある式神を取り出し見せてくれた。
それは、長さ10センチ、高さ3センチほどの手の平サイズ程の大きさをした折り鶴だった。
「折り鶴?」
「・・・鶴ですわ。」
「てっきり鷹や鷲だと・・・。」
「鳥は、翼の部分や脚が難しいんですのっ!」
「私はかわいいと思うぞ!」
「・・・ありがとうございます。」
口ではお礼を述べてもシリアの頬は少し膨れている。
ジェシドはその式神を手の平に乗せ、マジマジと四方から見つめた。
「うん、でも・・・。いけるかもしれない!」
ジェシドは晴れやかな笑顔を2人に見せた。
〈深さ2,187メートル 距離14キロメートル 切り立った大きな岩と険しい山岳に囲まれた劫火渓谷の気温は50度を超え、その環境に特化、または変性した生物、植物が生息している。
しかし、そんな環境下においても渓谷の底に流れる川は不思議と冷たく、その謎は解明されていない。〉
セリカは図書室から借りてきた劫火渓谷についての資料を読んでいた。隣には同じく地図を確認しているジェシドとシリアがいる。
「50度・・・。呼吸すら難しい環境だな・・・。」
「険しいでしょうが、歩道はあります。しかし徒歩は自殺行為ですわね・・・。」
「そうだね。やっぱり空を飛んでいく方法しかないのかなぁ・・・。」
シャノハからクエスト受託のサインを受け取った3人は、魔術中央図書館――(通称ACL)へ行く計画を立てていた。
やはり1番の問題はACLまでに通らなければならない劫火渓谷をどう攻略するかだろう。
セリカは再び資料のページを捲った。そしてある単語に目を止めた。
(霊域・・・?)
シリアの制服の裾を軽く引っ張り、資料に書いてある文章の文字をなぞる。
「なぁ、シリア。これは何だ?『劫火渓谷は火精霊の霊域と呼ばれる場所でもある。』」
「え・・・。あぁ、霊域とは精霊が住まう神聖な場所という意味ですわ。四大元素の精霊が鎮座する場所には加護が得られエレメントの恩恵が授かれるという話です。」
「恩恵?」
「火精霊のエレメントを持つ者は、その場所に行くと持っている力が増幅したり、眠っている力を呼び覚ますことができるってことさ。まぁ、実証例は見たことはないけどね。」
「ふ~~ん。他の精霊にもそんな場所があるのか?」
「もちろんですわ。霊域とは精霊の始まりの場所でもあり、私たちのエレメントのルーツでもある厳かな場所なんです。私も土精霊の霊域を訪れてみたいですわ。」
「ということは、シリア君のエレメントは土精霊かい?」
ジェシドが地図から顔を上げる。
「はい、私は土精霊ですわ。」
「そうなんだ、僕と同じだね。ということは、水精霊と土精霊の編成か。エレメントの相性は良さそうだ。」
「相性?」
「エレメントにも相性があるんだよ。そもそも僕たちがエレメントを使えるのは精霊を使役して力を借りているからなんだ。
例えば、火精霊と風精霊は相性がよくて、水精霊と土精霊も相性がいい。でも、火精霊と水精霊、風精霊と土精霊は相性が悪いとされているんだ。」
「火精霊と土精霊、水精霊と風精霊は良くも悪くもって感じですわね。」
「てことは、エリスとテオ、ロイと菲耶は相性が悪いってことか?」
「安心してください。精霊同志の相性が悪いってことですので、それを使役する私たちには関係ありませんわ。」
「そうか。」
「確かにエレメントを使う僕たちの相性は関係ないけど、連携を組む時には必要となってくるからね。チームのエレメント情報はお互いに確認しておかないといけないんだ。」
「連携・・・チーム・・・。」
「セリカ君?どうかした?」
「いや、大丈夫だ、続けてくれ。」
「そうかい? じゃあ、セリカ君のエレメントは水精霊なのは分かった。実戦クラスだから主に戦闘に使えるエレメントを使用できると思っていていいかい?」
セリカは控えめに頷く。ジェシドはノートに情報を書き込んでいった。
「頼もしいね。僕は実戦なんてからっきしだから・・・。シリア君は土精霊でどんな技が使えるのか教えてもらっていいかい?」
「私はこの魔術具でもある式神にエレメントを注入して具現化することができますわ。」
シリアは胸に挿してある式神を取り出しジェシドに見せた。
「式神?わぁ、特殊な加工がしてある素材だね。初めて見たよ。これは・・・熊?ってことは、熊を具現化できるってことだね。」
「おっしゃる通りですわ。この式神は先祖代々、秘めやかに継がれている技術なのです。でも・・・」
少し寂し気な横顔が下を向く。
「今は扱える者も少なくなりました・・・。」
俯いたシリアの横顔にセリカは声を掛けようとしたが、出てくる言葉が見つからない。
「貴重な魔術具を見せてくれてありがとう。こんなスゴイ魔術具を大事に受け継いできたんだね。シリア君はきっとステキな魔術師になれると思うよ。」
シリアの式神を大事そうに手渡したジェシドはニッコリと笑った。
ジェシドの言葉にシリアは思わず顔を上げる。
「はい!もちろんですわ!」
シリアの笑顔にホッとしたセリカは、何か思いついたように、あっ、と声を出した。
「セリカ君、どうしたの?」
「劫火渓谷を空から越えると言っていたな?」
「え?う、うん・・・。陸路より可能性があるとは思っているけど。」
「シリアの式神に鳥はいないのか?その鳥に乗って渓谷を越えるというのはどうだろう!?」
とてもいい案を思いついたと言わんばかりに、セリカが珍しく高揚している。
しかし、セリカとは対照的にシリアは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんなさい。私は土精霊のエレメントなので主に地に住む動物しか具現化できないのです。
魚類は全然ダメだし、鳥類も今のところ1羽ぐらいしか式神を具現化できなくて・・・。もっと魔法力を大きくすれば扱える式神も増えるのですが・・・。」
再び俯いたシリアの悲しそうな横顔にセリカは焦ってしまった。
「そ、そうか。シリアが謝ることでは全然ない!それにシリアの式神には私も助けられてばっかりだ。
この前だって、あのモフモフとした毛布のような式神のお陰で私は無事だったんだ、ぜひ今度お礼を言いたい!」
セリカが慌てふためくのが面白くて、シリアは思わず笑ってしまった。
「ふふふ。彼女は絹江さんですわ。彼女のお腹の中はとっても気持ちがいいですものね。」
「絹江さんというのか。とても気持ちが良くてその時の意識は無いぐらいだ。またお会いしたいものだ。」
「えぇ、またすぐにお会いできますわ。」
セリカとシリアの微笑ましいやりとりを隣で聞いていたジェシドは何か考え込んでいる。
「シリア君。その鳥の式神なんだけど大きさはどれくらいなんだい?」
「えっ・・・?先ほども言いましたが期待などしないでください。鳥類はまだ難しくて・・・その、こんなに小さいのです。」
自分の無力さを露呈するようで、シリアはモジモジとしている。しかし胸からある式神を取り出し見せてくれた。
それは、長さ10センチ、高さ3センチほどの手の平サイズ程の大きさをした折り鶴だった。
「折り鶴?」
「・・・鶴ですわ。」
「てっきり鷹や鷲だと・・・。」
「鳥は、翼の部分や脚が難しいんですのっ!」
「私はかわいいと思うぞ!」
「・・・ありがとうございます。」
口ではお礼を述べてもシリアの頬は少し膨れている。
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ジェシドは晴れやかな笑顔を2人に見せた。
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