エレメント ウィザード

あさぎ

文字の大きさ
51 / 135
第2章2部

決闘の条件

しおりを挟む
 「ん・・・?」

 セリカはピンときていない顔をしている。

 「お前、図書室でオレに暴力を振るった・・・」

 セリカはヨジンの顔をじっと見た。そして図書室で起きたことを思い出した。

 「あぁ、見本にならない先輩か。」
 「なんだとっ!?」

 ヨジンは制服に付いた砂を叩き落としながら立ち上がる。

 「もう1回行ってみろや、このクソ生意気な女めっ!!」

 ヨジンの怒りの大声は、セリカたちを中心に多くの人だかりを作りはじめていた。

 「ちょっと、ちょっとごめんなさい、すいません・・・。」

 その人だかりをかき分け、申し訳なさそうに謝りながら身を乗り出したのはジェシドだった。

 「シリア君、無事かい!?――あ、よかった、やっぱりここだった!セリカ君も一緒だったか!」

 シリアの声を聞いたジェシドも探し回っていたのだろう。2人の姿を確認したジェシドはホッとした。
 しかし安心したのも束の間、ジェシドはセリカたちと一緒にいる人物を見て体を強張らせた。
 
 「あ・・・ヨジン、サリ・・・。どうして・・・?」
 「お前・・・ジェシドか!?――今さらイメチェンか!?」
 「え、ジェシドなの、あれ・・・?
  へぇ~髪型とメガネで随分と印象が変わるわねー。」

 見た目が変わったジェシドにサリが興味を示す。ヨジンはそれに素早く反応した。

 「この2人、お前の連れか!?」
 「そ、そうだ・・・!」

 「ほぉ~、そうか。
 このチビがオレたちにぶつかってきたんだ。謝罪も無く、更にはまたコイツに暴力を振るわれたんだ!」

 ヨジンはセリカを指さしながらジェシドを睨んだ。

 「シリアは謝罪したと言っている。」
 「オマエはチビの謝罪を聞いたのかよっ!?」
 「聞いていない。でもシリアがウソをつくはずがない。」
 「そんなの、何の証拠にもならないだろうがっ!!」
 「あぁ、確かに証拠はない。同時に、シリアが謝罪していないという証拠も無いのではないか?」
 「屁理屈を・・・!」
 「お互い様だ。どちらにせよ、人の物を手荒く扱う理由にはならないはずだ。シリアの帽子を汚したことを謝ってもらおうか。」
 「ふん!!逆に暴力を振るう理由もならないな!オレを転倒させたことを謝ってもらおうかっ!!」

 話は平行線だ。ジェシドはオロオロしている。

 「セリカ、もういいですわ。行きましょう・・・。」

 セリカの腕にシリアの腕が絡む。その腕は少し震えていた。
 セリカはわざと相手もに聞こえるように、大きなため息をついた。

 「これは失礼した。」
 「セ、セリカ・・・・?」
 「そうだ、後輩なら後輩らしく先輩の言う事を聞いていれば――」
 「まさか実戦バトルクラスの先輩が、あれぐらいの足払いを避けれないと思わなかった。
 そんなに息巻いているくせに、体術も思考も、さらに戦闘さえも貧相だったんだな。」

 セリカは先日、ヨジンに言い放った言葉にさらに嫌味を重ねた。
 一瞬ポカンとしたヨジンは、すぐに顔を真っ赤にして怒り狂った。

 「はぁっ!?ふざけるな!お前いい加減にしろよ!!ぶっ殺してやる!」

 ヨジンは勢いのままセリカに殴りかかろうと突っ込んできた。

 「望むところだ!」

 セリカも応戦するために身構える。
 しかし、2人の間に割って入ったのはジェシドだった。

 「ダメ!ストップ!!落ち着いて!」
 「ジェシド!!お前は――邪魔だっ!!」

 ヨジンは思いきりジェシドの頬を殴った。「キャァ!」とシリアの声が響く。
 ジェシドはそのまま数メートル飛ばされてしまった。

 「ジェシド!大丈夫か!?」
 「修練ラッククラスの奴がチョロチョロと目ざわりなんだよ!この出来損ないがっ!
 1人で何もできないからって、女やガキと行動するなんて情けねーな!!」
 「貴様、いい加減に――」

 セリカがゆらりと立ち上がる。
 激憤する空気に息を呑んだジェシドはセリカの腕を思いきり引っ張った。

 「ダメだ、セリカ君!落ち着いて!僕は大丈夫だから・・・!」
 「しかし、このままでは――。」
 「セリカ君とシリア君を巻き込みたくない。それにこの学園内で戦闘は禁止されている。君たちまで修練ラッククラスになってしまう!」

 セリカは拳をギュッと握った。手の平に爪跡がクッキリと残るくらいに強く。

 「ふん、腰抜けが。まぁ、学園内で生徒同士の戦闘は禁止されているしな。
 でもお前にやられっぱなしなのも癪だな。
 ――そうだ、学園のルールに則り勝負をつけないか?」
 「――勝負?」
 「お前、名は?」
 「セリカ・アーツベルク。」
 「そうか、セリカ・アーツベルク。オレはヨジン・アーセフォンだ。お前に決闘デュエルを申し込む。」
 「決闘デュエル?」
 「あぁ!正式な場所でお前を叩きのめしてやるよ。」
 「セリカ君!!危険だ!君がそんなことをする必要はない!」
 「いいだろう。」
 「セリカ君!!」
 「うるせぇ、ジェシド!じゃぁお前が相手するかっ!?オレはお前でも全然いいぜ!」

 ギラリと光るヨジンの目にジェシドは怯んだ。

 「いい、私が受けよう。」
 「セリカ君・・・。」
 「よし。――そうだな、普通に決闘デュエルするのも面白くない。なにか賭けないか?」
 「賭け?」
 「あぁ。決闘デュエルはお互いにルールや報酬を決めることができるんだ。敗者は勝者の言う事を何でも聞くっていうのはどうだ?」
 「セリカ君!そんな賭けに乗らなくていい!」
 「お前は黙ってろや、根性無しがっ!」

 ヨジンはジェシドを一喝した。セリカは考え込んでいる。

 「そうだな、お前には散々な目に遭わされたからな・・・。
 オレがお前に勝ったら、お前は即修練ラッククラス行き。さらにオレが卒業するまでオレの手足となってもらう。ってのはどうだ?」
 「条件が2つあります!卑怯ですわ!」

 さすがにシリアも黙ってはいられないようだ。

 「うるせぇな、チビ!そもそもお前がオレに謝らないからだろうっ!!」
 「チビじゃないし、謝罪はいたしました!!」
 「いいだろう。その条件を受けよう。」

 「セリカッ!?」
 「セリカ君!?」
 「よし、言ったな。二言はねーよな?」
 「あぁ、二言はない。ではこちらの条件を言おう。」
 「おぉ、何でも言えよ。こっちこそ、男に二言はねー。」
 「私が勝ったら、火蜥蜴ひとかげの粉を購入し私たちに渡せ。」
 「・・・は?」
 「こっちはそれだけでいい。男に二言は無いのだろう?」
 「はっ!何を言い出すかと思えば――。いいぜ、勿論OKだ。」
 「じゃぁ決定だな。」
 「あぁ!決闘デュエル明日みょうにち正午の演習室にて執り行う。オレが学園に手続きをしておいてやる。――行くぞ、サリ。」

 ヨジンが笑いながら去っていく。
 後ろにいたサリは、ヨジンの後を小走りで追いかけた。
 騒ぎが収まったことを察知した人だかりも、次々と人の流れに戻ってった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

転生皇女はフライパンで生き延びる

渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。 使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。 ……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。 自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。 そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。 「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」 ※※※ 死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。 ※重複投稿作品※

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...