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呆れ

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百花の楽屋。
そこに連れていかれた未来は、2人がけのソファーに百花と並んで座っていた。
 
「それでね、そのケーキ屋さんのマカロンが凄く美味しくてね」

弾むような声で至極嬉しそうに話す百花。
だがその内容は何ともどうでもいいものばかりで、相談があると言っていたにもかかわらず、全くその素振りを見せない百花に、未来はなんなんだこの子はと内心で苦々しく思った。
しかしもしかしたら切り出しにくいのかなと、ふと未来の頭にそう浮かんだ。
だけど呼び出したのは百花だ。
だったらそれはそちらから切り出すべきだと未来は思うが、いつまでもくだらない話に付き合ってなどいられなくなった彼は、しぶしぶ百花に話を振ることにした。

「あのさ、百花ちゃん」
「うん、なぁに?」

満面の笑みで自分を見つめてくる百花に、一瞬毒気を抜かれた未来だったが
 
「いや、なぁにって、あの、相談があったんだよね?僕に…」
「あぁ、それ?それなら嘘だよ」
「は?嘘…?」

さらりと言われた百花の台詞が意外も意外過ぎて、未来は呆気に取られた顔で思わず同じ台詞をおおむ返ししてしまう。
 
「うん。ごめんね。でも私、未來君とどうしても二人っきりになりたかったから。ごめんなさい。怒った?」

少し眉根を下げて、上目遣いで未来の顔を覗き込んでくる百花に、未来はあんぐりと口を開いたまましばし固まってしまった。



※※※



百花から解放された未来は、逃げるように斗亜の楽屋へと駆け込んだ。
そして先程までの話を斗亜に聞いてもらっていた。
 
「怒るとかはないけどさ、本当呆れちゃうんだけどっ。何だよそれって思わない?」

不機嫌あらわにそう同意を求めてくる未来に、斗亜は薄く笑ってそれに応えた。
予想通り、というか予想以上の百花の馬鹿レベルに、未来じゃないが確かに呆れるなと思う。
しかしそれは斗亜としては好都合だった。

「焦ってるんだろうね。撮影ももうすぐおわっちゃうし、彼女としてはそれまでに君との仲を深めたいと思ってるだろうから」

だが百花の行動では結果的に溝は深まるばかり。
 
「でもだからってさ、普通嘘までつく?人に時間とらせといてさっ」

確かに未来の言う通りだと斗亜も思う。だが
 
「ん~、でも未來も悪いんだよ?」
「は?僕?何でっ?」
「だって、まだはっきり言ってないんでしょ?」

斗亜の言葉に未来は思わずたじろぎその視線を逸らした。
 
「っ、それは…。でももう撮影終わるし…」
「言わなきゃ終わるまで、いや、終わってからだって今回みたいに何かと理由つけて向こうは君の事口説いてくると思うよ?それに君が付き合ってやるつもりならそれでいいけど、嫌ならはっきり言わないと」

そんなつもりなどさらさらないと未来は思う。

「っ…、はぁ~…。そうだね。あ~、女の子って面倒臭いっ」

深いため息とともにうんざりとした表情を浮かべる未来に、斗亜はくすりと笑った。
そしてその通りだと斗亜は思う。
百花などに未来が構ってやる必要はないし、気を使う必要もない。
だから早く言ってやればいい。
それで百花は未来からお前なんて興味ないってはっきりいわれて、自分の勝手な妄想を恥じて傷つけばいいんだと、斗亜はその光景を思うと堪らなく愉快な気持ちになった。
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