元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ行く

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元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ行く

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 どれくらいの時間が経ったのか、私はショックから回復し頭を上げることが出来た。

 『大丈夫ですか?』

 気の毒そうな声がかかる。
 話を聞いてみると、その異世界に生きる者達はこの世界で言うところの、暗黒物質ダークマターと呼ばれているものを身体を維持する為の根幹こんかんとして使っているらしい。
 つまりこれからの眠りの中で暗黒物質ダークマターを使うことが出来る身体に作り替えるということだ。

 それは遺伝子の一部を根本的に作り替え、さらに肉体の内部を改造するということなので、ついでに外見を変えることは出来ないのかと聞くと、どこかを残しておかないと存在そのものが無くなるそうだ。
 精々が若返りと細胞分裂の低下までしか出来ないと言われてしまった。
 
 「むう、存在を維持するために元々あるどこかを維持しなければいけないということか」

 見えていないのに何故か首を縦に振る姿が目に映る。
 まあ存在が維持できないのならば諦めるしかないのか……。

 私が【仕方が無いか】ともう一度自分を納得させていると申し訳なさそうに声を掛けてくる高位の存在。

 『という訳でどれ位の年齢まで若返らせますか? 
細胞分裂に関しては限界まで遅くしておきますけど……』


 若返り。
 素晴らしい言葉だ。
 60という衰えだした肉体が若返るのだ。
 すばらしい。

 外見を変えることが出来なかったのは残念だったが、60歳で異世界に送ってもらうことを考えると、若返るということは破格のことだ。
それにあの言い方だと老化を抑えることも考慮してくれるみたいだし。

 問題はどこまで若返らせてもらうかだ。
若返らせるにしても、めいいっぱいというのは避けたい。

 理由は簡単で鍛えた武術の技が使える年齢までにしたいからだ。

 やる気はないが、私はふとどこまで若返らせることが出来るのか気になったので尋ねてみた。

 「あのぅ、生まれる前からやり直すとか、記憶を持ったまま赤ちゃんからはどうなるのでしょう?」

 私の疑問に高位の存在は首をかしげる、ような雰囲気を出した。

 『生まれる前から? ですか?』

 静寂せいじゃくが訪れ時間だけが過ぎて行く。

 流石に無理があったか。

 この高位の存在は高位の存在であって、神ではない。
ラノベみたいに誰かの身体に生命を宿らせて、そこからということができる存在ではないということのようだ。

 『出来ますよ?』

 出来るんかいっ!

 『まあ、出来る出来ないで言えば出来ますが……。
ぶっちゃけメンドクサイです』

 この野郎。

 『まあ、冗談は置いておいてと。
そこまで作り替えるのは正直お勧めはしません。
想像してみてください。
混ざりあっていない生命の源の段階であなたの記憶があるのですよ。
1つの人格が別々の場所で2つ。
正直精神崩壊です』

 なるほどね。

 『で、赤ちゃんから、ですか?
どうやって生きていくおつもりで?
それに記憶を持ったままで耐えられますか?』

 一応やれないことはないようだ。
もっとも高位の存在の話しぶりからしたらフォローするつもりはないようだが。

 『あ、向こうに送った後のフォローはしませんよ。
あなたの知識にある他の人の精神を入れ替えるなどは以ての外です。
正確には出来ないことはないけれど、手間がかかりすぎるので嫌だ、が正解ですが』

 ちくしょう。
 こいつ本当に高位の存在か?

 『何か不満でも?』

 無いよチクショウ。
それに他人の肉体が自分が気に入るかも分からないしね。

 『で、どのように?』

 どうやら本題に戻したいようだ。


 「そうですね、限界の25位まで下げてもらえますか?」

 この限界というのは剣術を始めた30の頃、それから遊びを入れて-5歳までは感覚的に対応できると判断したからだ。
 私が思っている剣と魔法の世界ならば間違いなく肉体がものをいう世界だろう。
それならばすぐに動く身体が欲しい。

 『承知しました。
 生き返りと若返りだけだと基本的な事だけになってしまいますので何か差し上げましょう。
ご希望に添える範囲でしたら何か差し上げますのでおっしゃってください』



 チート、キターーーー!!!



 いかんいかん、思わず我を忘れてしまった。
高位の存在から溜息をついたような雰囲気が漏れる。

仕方がないじゃんか、ラノベ作家の夢だ、浪漫ろまんだっ!


 さて、チートと言えば定番の鑑定、ストレージ、異世界言語能力、無制限の金銭、特殊魔法、特殊なスキル、世界知識など様々なものがあるが……。

 「あの、その世界ってスキルとかあります?」

 私の問いに高位の存在は黙り込む。

 『……スキル。
ああ、なるほど。
正直スキルと呼ばれるものは無いし、ステータスなども無いですね。

あ、魔法はありますよ。
これはことわりが違うだけ。
地球でいう科学や化学が魔法に変わった世界。
そしてそのみなもとは宇宙に漂う地球で言うところの暗黒物質ダークマター
生命の維持にも不可欠なその物質は……、役割が多数存在します』

 何言っているんだ、こいつ。
意味が分からない。


 『難しいでしょう。そういうものだと思ってください。
ちなみにその世界では【暗黒物質ダークマター魔力マナ】と変換されます。

とりあえず、どのような特権が欲しいのか言ってみてください。
出来る出来ないの判断をこちらでします』

 つまり、その世界では身体を維持するにも、魔法を使うにしろ魔力マナが必要になるということか。

 私がラノベで書いてきたり、作家の皆が書いてきた世界とは近いものがある。

 で、まずはチートがどれだけ数を貰えるのか確認しよう。

 「どれだけでも良い?」

 『駄目です。 
これは私の気持ちでしかありませんので、……そうですね、3つまでですね』

 即答だった。
 3つ、3つか~。微妙だ。
 微妙だけれども数的にはテンプレの範囲内か。
 私は今まで見たラノベを思い出し、必要な能力を考える。
生き抜くのに便利な能力を。
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