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乳鍋-2
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鬼灯が上げた大声に周囲にいた者たちが一歩下がった。
というのは一瞬で、すぐに周りと視線を合わせたかと思うと全員が一気に鍋へと群がる。
「うまっ!」
「美味いんだけどなぁ……」
「甘いけど、これは良い」
「にく……、薬がほろほろとしてこれは美味いっ!」
「乳ってのはこんなに甘いもんか。それも、結構濃い味だな」
様々な反応があちらこちらから上がる。
肯定三、否定三、微妙四といった感じに好みが分かれたようだ。
「ちなみに味が濃いのは乳というよりもぼうとろのせいだ」
「ぼうとろ?」
「そうだなぁ、乳を固めたものだと思ってくれ。実際俺もよくわからんのだ」
そう言いながら店主は頭を掻く。
「おいおい、知らないもの喰わせるなよ。大丈夫か?」
客の問いに店主は頷く。
「まあ、大丈夫だよ。これの試作にかなり食べたが腹は下してねぇよ」
「美味けりゃいいじゃねぇか。嫌なら喰わなければ良いだろ」
「い、いや、喰うよ。小鉢取り上げんな」
突然起こった小噺に周りから笑いが起こる。
「ところでこの薬は何だい?」
誰かが店主に尋ねる。
「ああ、これはかしわさ」
「へぇ、滋養に良いとは聞いているが焼く、以外でも美味いんだな」
「かしわはな、煮ても焼いてもそんなに硬くならないから美味いんだ。これが最初に出した奴になると煮たら駄目だ。硬くなりすぎる」
店主の言葉に理解できているのかいないのか微妙な表情を浮かべる者達。
「これ、見た目は微妙だけどいろいろと入っているな。舞茸に人参、葉物、と、この底にあるくずくずは何だ?」
佐治が鍋の底にある白いものを掬い、口に入れる。
どうやら佐治は乳鍋肯定派のようだ。
「ああ、それは大根だ」
余程の衝撃だったのか、佐治は口を動かすのを止め店主の方を見る。
「それはな、大根を擦ったやつさ。本来なら出る辛味もこの乳のおかげで辛くないのさ。中々美味いものだろう」
佐治は小鉢をじっと見て、おもむろに掻き込み、今度は大根だけを掬い食べ始めた。
「……あんた、大根好きなのかぃ?」
かしわを飲み込んだ鬼灯がじとっとした視線を佐治に向ける。
佐治は視線を少し向けると黙って頷き、黙々と食べる。
「一応主役は薬なんだけれどねぇ」
「ま、美味けりゃ良いんだよ」
鬼灯の横でかしわを頬張る誰かが一言。
その言葉に周りの幾人かが頷く。
鬼灯は微妙な顔をして、またかしわを口に入れた。
「てか、鬼灯。おめぇ何杯目だ?」
口いっぱいに頬張ったまま鬼灯は指を四本立てる。
「まあ、良いけどよ。これはどちらかと言うと不評だからな。片づけてくれると有難てえよ」
店主の言葉に鬼灯と肯定派が色めき立つ。
今まで遠慮していた者達が我先にと鍋へと突撃した。
「おいおい、あんまり食いすぎると次のが入らなくなるぞ。これは鬼灯に任せて腹は空けとけよ」
「全部なんか喰えるか!」
吠える鬼灯に見世の中の皆から笑いが起こるのであった。
というのは一瞬で、すぐに周りと視線を合わせたかと思うと全員が一気に鍋へと群がる。
「うまっ!」
「美味いんだけどなぁ……」
「甘いけど、これは良い」
「にく……、薬がほろほろとしてこれは美味いっ!」
「乳ってのはこんなに甘いもんか。それも、結構濃い味だな」
様々な反応があちらこちらから上がる。
肯定三、否定三、微妙四といった感じに好みが分かれたようだ。
「ちなみに味が濃いのは乳というよりもぼうとろのせいだ」
「ぼうとろ?」
「そうだなぁ、乳を固めたものだと思ってくれ。実際俺もよくわからんのだ」
そう言いながら店主は頭を掻く。
「おいおい、知らないもの喰わせるなよ。大丈夫か?」
客の問いに店主は頷く。
「まあ、大丈夫だよ。これの試作にかなり食べたが腹は下してねぇよ」
「美味けりゃいいじゃねぇか。嫌なら喰わなければ良いだろ」
「い、いや、喰うよ。小鉢取り上げんな」
突然起こった小噺に周りから笑いが起こる。
「ところでこの薬は何だい?」
誰かが店主に尋ねる。
「ああ、これはかしわさ」
「へぇ、滋養に良いとは聞いているが焼く、以外でも美味いんだな」
「かしわはな、煮ても焼いてもそんなに硬くならないから美味いんだ。これが最初に出した奴になると煮たら駄目だ。硬くなりすぎる」
店主の言葉に理解できているのかいないのか微妙な表情を浮かべる者達。
「これ、見た目は微妙だけどいろいろと入っているな。舞茸に人参、葉物、と、この底にあるくずくずは何だ?」
佐治が鍋の底にある白いものを掬い、口に入れる。
どうやら佐治は乳鍋肯定派のようだ。
「ああ、それは大根だ」
余程の衝撃だったのか、佐治は口を動かすのを止め店主の方を見る。
「それはな、大根を擦ったやつさ。本来なら出る辛味もこの乳のおかげで辛くないのさ。中々美味いものだろう」
佐治は小鉢をじっと見て、おもむろに掻き込み、今度は大根だけを掬い食べ始めた。
「……あんた、大根好きなのかぃ?」
かしわを飲み込んだ鬼灯がじとっとした視線を佐治に向ける。
佐治は視線を少し向けると黙って頷き、黙々と食べる。
「一応主役は薬なんだけれどねぇ」
「ま、美味けりゃ良いんだよ」
鬼灯の横でかしわを頬張る誰かが一言。
その言葉に周りの幾人かが頷く。
鬼灯は微妙な顔をして、またかしわを口に入れた。
「てか、鬼灯。おめぇ何杯目だ?」
口いっぱいに頬張ったまま鬼灯は指を四本立てる。
「まあ、良いけどよ。これはどちらかと言うと不評だからな。片づけてくれると有難てえよ」
店主の言葉に鬼灯と肯定派が色めき立つ。
今まで遠慮していた者達が我先にと鍋へと突撃した。
「おいおい、あんまり食いすぎると次のが入らなくなるぞ。これは鬼灯に任せて腹は空けとけよ」
「全部なんか喰えるか!」
吠える鬼灯に見世の中の皆から笑いが起こるのであった。
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