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小紅葉-3
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「あん?」
「ああ?」
「おやぁ?」
気の抜けた声があちらこちらから上がる。
「どうだい? 美味いか?」
にやにやと笑う店主。
その周りでは小首を傾げる客達。
「これ、なんか汁気がないな」
先ほどまで野菜に夢中になっていた佐治が子紅葉を食べていた。
その横で鬼灯も首をかしげている。
そうしながらも、かぶりついてはいるのだが。
「これ、汁と脂は飯に吸われたってことかい?」
客の一人が食べかけの握り飯と子紅葉を見比べながら交互に食べていた。
「そうだ。その通りだ」
どや顔の店主。
「これはな、紅葉の臓物を抜いて、そこに野菜を詰める。それから竹の皮に包んだ握り飯を入れ、遠火で火を通す。
そしたら、紅葉から出た汁と脂が野菜に程よく染み込み、竹皮の中の握り飯にも旨味が染み込んで美味いんだ」
店主の言葉に微妙な表情の客。
「なあ、今日は薬を楽しむ会だよなぁ。これは……どうだろう?」
「だな。美味いんだが趣旨とずれていないかい?」
うんうんと客の大半が同意する。
「い、いや。これもれっきとしたにく……、いや、薬料理なんだ……」
段々と尻すぼみになる反論。
じとっとした視線が店主に集まる。
「まあまあ、いいじゃないか。こういう試みもさ。やっぱり根っからの料理人だから工夫しすぎたんだろ。
店主も考えすぎだ。今日は単純にに……、薬を楽しませてくれたら良いんだがな」
佐治が客と店主の間に入った。
お互いに顔を見合わせる客達。
「ああ、言い過ぎたか」
「だな」
「店主、すまなかったな」
文句や意見を言っていた客が店主に詫びを入れる。
「いや、こちらも自分で主催しておきながら自分の腕自慢のようになってしまっていたようだ。すまねえ」
お互いに詫びを入れ合う。
「さあさあ、これ以上は無しだ。店主、まだ料理は続くんだろう。続きを頼むよ」
佐治の言葉に店主は笑う。
「ああ、この後は単純な料理だけだ。楽しんでくれ」
その場にいた皆が笑い合い、皆が席に戻り、店主は調理場へと向かう。
「なあ、これはどうするんだい?」
机の上に放置された子紅葉を指さしながら一人机の前に残っていた鬼灯が声を上げる。
余計な事を言うなという視線が鬼灯に向かう。
「ああ、さっき食べて分かっただろうが、それはもうからからだから美味くないんだ。それに汁や脂も抜けてて旨味もないから……捨てるしかないなぁ」
店主の返事に鬼灯は顔を顰める。
「じゃあさ、これ持って帰って良いかい?」
鬼灯の一言。
全員が固まる。
「おまえ、それ、一人で喰うのか?」
「人じゃねぇ」
「なるほど……それが……、その身体か……」
様々な反応。
さすがの鬼灯も顔を赤らめる。
「い、いいじゃないか。もったいないし。それに一度焼いてあるから暫く持つだろ……」
「「「「「持つかっ! 腹下すわ!」」」」」
大合唱の中、鬼灯はしょんぼりと自分の席へと向かうのであった。
「ああ?」
「おやぁ?」
気の抜けた声があちらこちらから上がる。
「どうだい? 美味いか?」
にやにやと笑う店主。
その周りでは小首を傾げる客達。
「これ、なんか汁気がないな」
先ほどまで野菜に夢中になっていた佐治が子紅葉を食べていた。
その横で鬼灯も首をかしげている。
そうしながらも、かぶりついてはいるのだが。
「これ、汁と脂は飯に吸われたってことかい?」
客の一人が食べかけの握り飯と子紅葉を見比べながら交互に食べていた。
「そうだ。その通りだ」
どや顔の店主。
「これはな、紅葉の臓物を抜いて、そこに野菜を詰める。それから竹の皮に包んだ握り飯を入れ、遠火で火を通す。
そしたら、紅葉から出た汁と脂が野菜に程よく染み込み、竹皮の中の握り飯にも旨味が染み込んで美味いんだ」
店主の言葉に微妙な表情の客。
「なあ、今日は薬を楽しむ会だよなぁ。これは……どうだろう?」
「だな。美味いんだが趣旨とずれていないかい?」
うんうんと客の大半が同意する。
「い、いや。これもれっきとしたにく……、いや、薬料理なんだ……」
段々と尻すぼみになる反論。
じとっとした視線が店主に集まる。
「まあまあ、いいじゃないか。こういう試みもさ。やっぱり根っからの料理人だから工夫しすぎたんだろ。
店主も考えすぎだ。今日は単純にに……、薬を楽しませてくれたら良いんだがな」
佐治が客と店主の間に入った。
お互いに顔を見合わせる客達。
「ああ、言い過ぎたか」
「だな」
「店主、すまなかったな」
文句や意見を言っていた客が店主に詫びを入れる。
「いや、こちらも自分で主催しておきながら自分の腕自慢のようになってしまっていたようだ。すまねえ」
お互いに詫びを入れ合う。
「さあさあ、これ以上は無しだ。店主、まだ料理は続くんだろう。続きを頼むよ」
佐治の言葉に店主は笑う。
「ああ、この後は単純な料理だけだ。楽しんでくれ」
その場にいた皆が笑い合い、皆が席に戻り、店主は調理場へと向かう。
「なあ、これはどうするんだい?」
机の上に放置された子紅葉を指さしながら一人机の前に残っていた鬼灯が声を上げる。
余計な事を言うなという視線が鬼灯に向かう。
「ああ、さっき食べて分かっただろうが、それはもうからからだから美味くないんだ。それに汁や脂も抜けてて旨味もないから……捨てるしかないなぁ」
店主の返事に鬼灯は顔を顰める。
「じゃあさ、これ持って帰って良いかい?」
鬼灯の一言。
全員が固まる。
「おまえ、それ、一人で喰うのか?」
「人じゃねぇ」
「なるほど……それが……、その身体か……」
様々な反応。
さすがの鬼灯も顔を赤らめる。
「い、いいじゃないか。もったいないし。それに一度焼いてあるから暫く持つだろ……」
「「「「「持つかっ! 腹下すわ!」」」」」
大合唱の中、鬼灯はしょんぼりと自分の席へと向かうのであった。
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