骨董屋 鬼灯

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第三章 それぞれの思惑

第拾壱話 交錯する思惑

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 「なんだ? あの化け物は・・・・・・。 まぁしかしこれだから面白いのだがな」

 生駒犀角は二本の刀を磨きながら呟いた。今いる場所は江戸での隠れ家である。先程、骨董屋の女と殺りあったばかりだ。そして軽くではあるが手傷を負わせることが出来た。しかし仕留めることは出来なかった。それは犀角が姉河家から暗殺されかけてから初めての事である。

 「犀角! 失敗したというのは本当か!」

 暗がりに急に光が差し込み、目を細める犀角。雇い主がどたどたと階段を降りてくる音を五月蠅く感じながら返事を返す。

 「ああ、本当だ。 あれは化け物だ。 本当にあれを殺す必要があるのか?」

 犀角の問いに二人の間に微妙な雰囲気が流れた。

 「怖じ気づいたか?」

 ぴくりと犀角の身体が震え、陰湿な雰囲気が犀角の身体からじわりと滲み出す。

 「いや? むしろ面白いのだがな。 それより奴の素性は割れたのか? ただの骨董屋ではあるまい? 確か町方に手下がいるのだろう?」

 犀角の雰囲気が変わり、光が差し込んだとはいえ、暗がりが支配する部屋の空気が冷たいものへと変わる。

 「・・・・・・すまなかった。やつの名は鬼灯、骨董屋だ。 それは間違いがない。
 ただそれ以上の情報が微妙でな。荒唐無稽な話ばかりで裏を取っている最中だ。 それよりも郊外での返り討ちの件で姉河家うちが動いた。
 それと姉河家うちと黒田、鍋島が手を組んだ。黒田と鍋島の動き方はわからぬが姉河家うちの中で鬼灯やつと接触した者がいる」

 雇い主の言葉に犀角は溜息をつく。

 「そうか・・・・・・。 ということはどちらかが死ぬまでやらなければいけないということだな」

 言葉の端にはどこか嬉しそうな雰囲気が漂っている。どうにもこの状況を楽しんでいるようだ。

 「で? どうする? その鬼灯という女子おなごを消すだけで良いのか?」

 犀角の問いに雇い主は暫し沈黙。そして言葉を紡ぎ出す。

 「いや、お主が仕留めそこなった鍋島の松沼彦衛も消せ」

 「高いぞ」

 即と返る答え。その言葉に雇い主は特にためらいも無く返事を返す。

 「ああ、分かった。 
 どのみちこのままではうちの家は消えるだけだ。やれるところまでやるしかない。
それと松沼を消すときは気をつけろよ。奴は鍋島の上屋敷へ入った」

 雇い主の心配するような情報に犀角は嗤っていた。

 「おいおい、あんたは俺の実力を充分に知っているだろう? それでも不安か?」

 じっとりとした視線を向ける犀角に男は小さなため息を吐き答える。

 「こちらにはお前しか戦力がいないからな」

 犀角は【ふむ】と唸る。

 「・・・・・・鑓を用意してくれ。
  鍋島の奴はなんとでもなるが、あの鬼灯と言ったか? 
  あの女子は刀だけでは分が悪い。愛用の鑓は捨ててきたしな。手傷を負わせたのですぐにでも仕掛けたい」

 「ああ、これのことか?」

 雇い主の男が声をかけると男の後ろから一本の鑓が差し出された。

 「捨ててきたはずなのだがな。どうやって?」

 犀角の問いに雇い主は笑う。

 「こちらにもいろいろと伝手はあるのだ。まあ、取り合えずは松沼と鬼灯を消せ」

 そう言って雇い主はその場を後にする。

 「ふ・・・・・・ん。
  俺を殺そうとした者が俺に頼るとはな。面白いものだ。 
  しかしそれ以上にあの女子は面白い。無茶をして生きたかいがあったものだ」

 残された犀角はそう呟くと二振りの大刀をじっくりと確認してゆく。その刀身は暗闇の中でも艶めかしく光るのであった。

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 「どうした、鬼灯。怪我でもしたのか?」

 突然現れた榊原に鬼灯は慌てて着崩していた小袖を直す。腕に巻いていたさらしが目に入ったようだ。
 結局昨夜は襲撃を警戒し、酒を飲みながら一夜を過ごした鬼灯だったのだが、犀角が仕掛けてくることはなかった。
 そしてそのまま朝になり、見世を開けて飲んだくれていたのである。

 「こらこら旦那。
  うら若き乙女が着替えているのに突然入ってくるなんて・・・・・・、むっつりだねぇ。
  もしかして榊原様もこの肉の塊が好きな類いのお方ですか?」

 胸をぐぃっと寄せにやにやと笑う鬼灯。その言葉に榊原は呆れた表情を浮かべる。

 「あのなぁ、鬼灯。
  商い中の札を出しておいて何を言っておるのじゃ? 
  客として来たのじゃが帰った方がよいかの?」

 榊原は【帰るか】と言いながらも見世の中へと入ってくる。鬼灯は【ありゃあ】という表情を浮かべながら座布団を用意した。

 「で? 
  その腕はどうした? 
  例の件絡みか?」

 目を細める榊原。
 鬼灯はばつの悪そうな表情を浮かべ湯飲みに白湯を注ぐ。榊原は湯飲みを受け取り一瞬だけ鼻を動かし、すぐに熱い白湯に息を吹きかけはじめた。

 「はぁ、これだからご老体は・・・・・・。勘が良すぎだねぇ」

 鬼灯は自分の湯飲みに徳利から酒を注ぐ。

 「ああ? ご老体という歳では無いわぃ。 
  しかしお主が手傷を負うとはの。やはりそれほどの相手か?」

 榊原の言葉に鬼灯は沈黙で答える。

 「ほお、おぬしほどの者がな。
  まあ、あれだけの剛の者を斬った奴だ、気を付けておかねばならぬな」

 その言葉とは裏腹に榊原の貌は満面の笑みだ。

 「正直まいったよ。
  軽い気持ちで殺しあえる相手ではないね」

 鬼灯は軽く腕を回す。短刀で相手をしたとは言わない。それは言い訳にすぎないからだ。

 「で、そっちは忙しいのではないのかい?」

 正直触れてもらって嬉しい話ではないので話題を変える。

 「まあ、毎日根を詰めていては身が持たぬよ。それよりも問題が発生してなぁ」

 榊原の呟きに沈黙で先を促す。

 「生駒というやつがこの見世を襲った時に持っていた鑓。あれが番屋から消えた」

 それには鬼灯も目を見開いた。

 「まあ、気が付いたのは儂だけじゃがな、巧妙にすり替えられておったわ。あれだけの長物を持ち出したのだから気づかないわけがないのだがな」


 榊原の目が鋭くなる。

 「内通者がいる?」

 鬼灯の疑問に榊原は小さく溜息を吐いた。

 「だな。同心か岡っ引きが小遣い稼ぎにやったのかどうかは分らぬが、間違いなく内部の者だろうよ。番屋には常に人がおるからな」

 「相手の目星は?」

 「……近松かのぅ」

 榊原の予想外の言葉に鬼灯は唖然とする。

 「そりゃまた、なんで」

 それくらいしか言葉がない。鬼灯と近松は数年来の付き合いだ。近松の性格はそれなりに知っていた。
 くそ真面目。
 それが鬼灯の近松に対する評価だ。

 「ん、まぁ。あやつはの、吉原に入れ込んでおる女子おなごがおってのぅ」

 鬼灯はその一言で全てを察した。真面目な男がよくかかる病だ。

 「まぁ、証拠は無いでな。それよりも奴は鑓を取り戻した。気をつけろよ」

 そう言って榊原はおもむろに立ち上がった。腰の物を手に入口へと向かう。その後ろ姿の鬼灯は思わず声をかけた。

 「旦那! 骨董を買いに来たんじゃあないのかい?」

 入口を開きかけていた榊原はゆっくりと戸を閉めると見世の中を物色し始めるのであった。

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 「幸音、気分はどうじゃ?」

 姉河家上屋敷。
 姉河家側室のお音はそっと部屋に入り、蒲団に寝ている女に声をかけた。その声に合わせて掛布団がもぞりと動く。
 年のころは十五、六であろうか。蒲団の中から覗いた顔は色白で美しいが、まだ幼さを残した顔だ。

 「母様、今日は体調は良いです」

 姉河幸音さちね
 姉河家当主守弘の側室、おの長女である。
 
 「そうかえ? ならば良いのじゃが」

 お音は身体を起こそうとする幸音の動きを手で制すると、ゆっくりと幸音の傍へ腰を下ろした。

 「母様、先日より何やら屋敷の中が騒がしいのでございますが、何かありましたか?」

 蒲団の中からじっとみつめる幸音の問いにお音は視線を合わせることはなかった。

 「そちは気にせずともよい。ゆっくりと養生すれば良いのじゃ」

 それだけ言うと幸音の頭をそっと撫でる。部屋の中に静寂が訪れる。暫くその部屋の中で動くものはお音の手だけであった。
 お音はゆっくりと幸音の頭を撫でた後、おもむろに立ち上がった。

 「幸音、ゆっくり休むのですよ。暫し忙しく、日が開くとは思いますがまた参ります」

 それだけ言うとお音はそっと部屋を出て行った。続いて腰元も出て行ったので部屋には幸音一人が残される。蒲団の中で暫し天井を見つめた幸音はむくりと起き上がった。

 「はぁ、愚かな母上。すべて私が後ろで動いていると気づくことは無いのでしょうね」

 幸音は三度拳で畳を叩いた。

 「……お呼びでございますか?」

 天井の一角が音もなく開き、男の顔が覗く。

 「彦四郎、いや鍵沼守善。いかほど集まりましたか?」

 「五万程」

 彦四郎と呼ばれた男は短く答える。その言葉に幸音は口元を緩ませた。

 「そう、引き時ね。生駒犀角は消せそう?」

 「手練れを雇いました。まず大丈夫かと……」

 「分かりました。では、留守居役の谷崎守谷を暗殺しなさい」

 幸音の言葉に彦四郎の気配が変わる。しかしすぐに天井は締まり、気配が消えた。

 「あとは痕跡を消すだけね。黒田、鍋島も大きい家だけど私はもっと華やかなところで派手に生きたいの」

 くすくすと嗤う幸音の貌はそれはそれは無邪気なものであった。

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 「近松、暫し良いか?」

 榊原は骨董屋鬼灯を冷やかした後、近松のいる番屋へと足を向け近松を呼ぶ。近松は書き物をしていたようであるがすぐに筆を置くと榊原の元へと動いた。

 「どうなさいましたか、榊原様?」

 特に変わった様子が無いかを榊原は注意深く観察する。

 「いやなに、先日の骨董屋の鬼灯を襲ったやつがいたであろう? その時に置いていった鉤鑓を見せてもらおうと思ってな」

 その言葉に一瞬、近松の視線が反応した。しかし次の瞬間にはその戸惑いは消える。

 「また、突然どうなさいました? あ、こちらでございます」

 近松は疑問を投げかけながらも立ち上がると、番屋の奥へと歩き出した。榊原は近松の声色に何も変化がないことを確認すると近松の後についてゆく。

 「いや何、先日の斬り合いの時に拾った槍があったであろう? それがどうも引っかかっていたのじゃ。それでな鬼灯を襲った者が使っていた物に似ていたような気がしてのぅ。 ただの確かめじゃ」

 榊原は近松の疑問に答える振りをして情報を混ぜ、揺さ振りを掛けてみる。

 「なるほど、そういうことでございますか。確かに鎌槍ですが某には同じような槍にしか見えぬのですが」

 そう言う近松の背中には何の変化もない。歩く歩調もそのままだ。

 「まあ、老体の戯言に付き合わされると思ってくれ」

 からからと笑う榊原に近松は若干の戸惑いを見せ、笑う。

 「どうぞこちらでございます」

 案内された部屋には様々な物が置いてあった。主に没収したものや事件に関わった物ばかりだ。そしてその中にそれはあった。立てかけられた二本の槍。それはやはり別物であった。
 榊原はおもむろに、鬼灯を襲ったほうということになっている槍を手に取るとじっくりと観察するふりをする。近松はその様子を傍でじっと見ていた。
 暫くしてもう片方の槍を手にしてこれもまた観察するふりをする。そして両方の槍を元の位置に戻す。

 「いやあ、近松、済まなかった。よくよく見てみると両方とも数打ち・・・物だよな。 最初の鬼灯の方は業物・・だったような気がしていたのじゃ」

 そう言って笑うと榊原は近松の肩を軽く叩くとそのまま番屋の表へと向かってゆく。その背中を見送る近松の額にはびっしりと玉のような汗が噴き出していた。 
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