シンママの恋愛~シンデレラ ラブ~

みちる

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シンママと子供たち。時々、次期社長様。

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「お~い!奈々起きなさーい!」

「里奈~!起きてー!」

私の朝は子ども達(まずは小学生組)を起こす事から始まる。一番上は奈々ちゃん(小4)。奈々は面倒見の良い優しい子。でも、怒ると一番厄介。奈々はすんなり起きてくれるから、比較的楽!

2番目は里奈ちゃん(小2)。里奈は感情豊かで喜怒哀楽が分かりやすい。明るく、じゃじゃ馬娘。朝が苦手でこれが大変。

すんなり起きてくれた奈々は困らせる事なく、朝食を食べる。その間も、里奈を起こし続ける私。学校は集団登校の為、遅れると迷惑が掛かる。なので、遅れるなんて絶対ダメなのだ。

シングルマザーで、お父さんが居ない。・・だから、あの家はいつも~なんて・・絶対言われたくない。何かにつけ、シングルだからねぇ、は言われ文句。私は父親が居ない為に子供があれこれ言われるのは嫌なので、その辺はプライドを持って頑張ってる。

けど、やっぱりしんどいなって時もあるよ。けど、もぅ男なんて真っ平ごめんだ。もう裏切りや、傷付くのは嫌なの。もう、充分ダメージは受けた。だから、もうこれ以上傷付きたくない。

でもね、父親が居たらなって思う弱い自分もたまーに居るの。だって、3人を1人で育てるってね、大変なんだよ。けど、可愛いんだ。宝だよ。

あれから、里奈を怒りながら起こし、急かしながら用意させ、何とか間に合い登校した姉妹。

さてと、もう1人起こさなきゃな。お姉ちゃん達が出た後は私の癒しの末っ子くん。この子がまた・・可愛いったらありゃしない。まだ3歳。でも、寝起きが抜群に良い。

「朝だよー。起きてー。」と頭を撫でるとすぐに、起きてくれる天使のような末っ子。この子は蓮くん。甘えん坊で仮面ライダーとアンパンマンが大好きな3歳。けど、一番好きなのはママなんだって。あー食べちゃいたい位可愛い。蓮くんは保育園なんだ。彼を保育園に預けて、私の仕事が始まる。

とにかく毎日バタバタなんだ。蓮くんを幼稚園に預けて、職場に向かう私。私の職場は大手オフィスの清掃。8階建てのオフィスを綺麗にするのが私の仕事。華の有る職業では無いけど、私はこの仕事に誇りを持っている。

子供3人でシングルマザー。たくさん難題有りの私を正社員でやとってくれるなんて・・有難い事だ。働ける場所を大切にしないといけない。それに、大手オフィスだけ有り、色々と人を見て勉強になる事も多い。

そして、会社の人と顔見知りになり、楽しい事も有る。さてと、今日も頑張りますか!自分で気合いを入れ業務に入る。皆さんはまだ始業時間ではないので、人はあまり居ない。その間にお掃除をする。

「おはようございます!」元気に挨拶して入ったのは営業部のフロアー。誰も居ないと気を抜いて入った私は人の気配に焦った。あっ!この人はここのお偉いさん。粗相の無いようにしなきゃ。慎重に綺麗にする・・

視線を感じる。チラチラ見れば、お偉いさんは私を見ていた。そして、カツカツと近付いてくる足音。おっ?何処かへ行くのかな?と思いきや、足音は私の前で止まる。

「君は最近入ったのか? 見ない顔だな。」

この方はここの社長の息子さん。崎本 瑠衣(33)。若干33歳で異例の出世。かなりのやり手らしい。そりゃあ、社長の息子さんだもん。他の人とは出来が違うんだろうな。

「はい。一月前に入社しました。どうぞよろしくお願い致します。」

私の言葉に優しくニコリと微笑み、彼は言った。

「君のような可愛いらしい人には、もっと華の有る仕事の方が良いんじゃないか。勿体無いな。」

この人は清掃業を見下してるんだな。とイラッとしたが、この方は次期社長様・・怒っちゃダメだ。自分に言い聞かせて、満面の笑みで言った。

「勿体無い程の嬉しいお言葉ありがとうございます。でも、私には3人子供がいまして、またそれがシングルマザーなので、贅沢など言ってられないのです。それに私はこの仕事に誇りを持ってます。心配して下さり、ありがとうございます。」

次期社長様はふむと考え信じられない事を言った。

「よしっ、決めた!俺はお前に惚れたようだ。一目惚れという奴だ。」

「え?な・・なんで? 私は子供有りのシングルですよ。それに、今初めて会ったばかりですよね?そんな・・」

「俺を侮っちゃいかんよ。俺は洞察力が凄いんだよ。話のきっかけで、初対面的な会話をしただけで、君の事は前から知ってたよ。」

得意気な次期社長様は愛おしそうに私を見つめる。久々に激しく脈打つ私。いや・・こんなんおかしい。こんな訳あり物件的な私を好む男性が居るもんですか。きっとからかってるのよ。そうに違いない。そう思い、私は

「からかわないで下さい。もう仕事しなきゃ怒られますから・・・」

最後まで言わせては貰えなかった。それは彼が大切そうに、愛おしそうに私を抱きしめたから。優しく、力強く。

なんだろう・・この絶大な安心感。毎日1人で気を張っているせいだろうか。いや・・ダメだ!私はもう恋はしないんだった。もし、騙されるような事になったら、子供達をも傷付ける事になる。

ダメだ。この安心感に負けちゃ! そう思い、ジタバタする私。何とか逃れようと頑張るが、146センチのちっちゃこい私と、180ちょい有りそうな長身に、細いけど、腕っ節の強そうな細マッチョ的な彼に私が敵うわけはない・・

ピョーンと飛び跳ねてみたり、ジタバタしたり、手で彼をパタパタ叩いたり・・色々試みたが、やはり無理だ。そんな私を静観していた彼が、ぷぷっと笑い出した。

「本当可愛いやつ。俺はお前がここに入った頃からお前の事ずっと見てたんだよ。初めは偉い小さい奴だなと思い、毎日見掛けるうちに物凄い、丁寧に一生懸命仕事する姿や、キラキラの笑顔に惹かれたんだ。」

「で・・でも、私なんて訳あり物件ですよ。私なんかと・・・それに、私もう傷付きたくないんです。」

抱き締められている安心感から、辛い事を思い出し涙が出そうになった。

「全く問題なし!うーん・・・ただ一つ問題がある。」

次期社長様はまた考えていた。なんだろう・・やっぱり子持ちの女なんてやーめたー!って感じだろうか。しかし、彼は・・

「キスする時にこの身長差はなかなか大変じゃねぇか。たまにはお前からもして欲しいしなぁー・・俺が屈んだとしても届かねぇんじゃないかー。何か良い方法は・・」

「え?えぇ?なに言ってー・・」

最後まで言わせては貰えなかった。それは、彼が私の唇を塞いだからだ。私を愛おしそうに大切そうに、それはそれは蕩けるような優しいキス・・・

あぁー・・このままではいけない。でも、彼の気持ちが伝わってくる。こんな大切に扱われるのは初めてかもしれない。力が抜け、その場にしゃがみ込む私。

そんな私を優しく見つめる彼。

「こんなんでへばっててこれからどーすんだよ。全く可愛い過ぎだろ。」

「ど・・どうしてキスしたの?誰にでもするの?」

この言葉にムッとした彼。

「俺は硬派だ。俺は好きな奴以外とはやらねぇ。だから、安心しろ。これからはお前だけだ。このキスはお前とお前の子供達、皆まとめて幸せにしてやるって約束のキスだ。」

「え?そ・・そんな事。あなたに苦労させるだけよ。」

「人間はな、苦労するよう出来てるんだよ。どうせ苦労するなら、好きな奴と一緒に、全て背負って苦労するのが一番幸せだ。だから、安心しろ。俺はお前達を裏切らねぇ。」

彼の言葉に涙が止まらない。

「俺の気持ちはずっと変わらない。俺なしでは生きて行けない程、惚れさせてやるから、まぁ安心しとけ。」

彼はそう言い放ち、爽やか過ぎる笑顔を残し去って行った。 

その直後、始業を知らせるチャイムが鳴る。
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