今は君のことだけ〜過去も未来も忘れて〜

森永みき

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風が吹いた

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お昼は、先月開店したばかりのイタリアンレストランへ。

窓際の席に案内され、彼女は、たっぷり野菜のジェノベーゼを、翔太はフェットチーネ・モッツァレラチーズのボロネーゼを注文した。

翔太はグラスの水を飲みながら、彼女に「元気にしてた?痩せたね。ちゃんとご飯食べてた?」と聞く。

「うん!夏に向けて少しダイエットしたの」と彼女。

予想以上に元気に声で、翔太は安堵し、連絡を取っていなかった1ヶ月間の出来事を互いに話した。

ちょうど、話が一段落した頃、パスタが運ばれてきて、パスタを食べ始める。

お腹も空いていたし、もちろん美味しかったので、あっという間に完食した翔太は、彼女が食べ終わるのを待つ。


レストランを後にした2人は、どちらからともなく、自然に手を繋いで、彼女の歩幅に合わせて、ゆっくりと、プラネタリウムまでの道のりを歩く。

突然ヒュッと風が吹いた。

「わっ!すごい風!」と、いつもより高い声で彼女は言う。ふと彼女を見ると、髪に葉っぱが付いていたので、翔太はそっと取ってあげた。

ドラマや映画なら、ここで、おでこにキスをするところだろうか、と翔太は思ったけれど、恥ずかしくて行動には移せない。

そんな自分が不甲斐なく思う。でも、誰かに見られていたらと思うと、とても出来なかった。彼女だって、困惑するかもしれないし。

そのまま歩き続け、プラネタリウムのドーム型の建物が見えてきた。

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