半径1キロ以内の日常

森永みき

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図書館

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日曜日、都内で友人とお茶をした帰りに、図書館に寄った。目的は、お笑い芸人のエッセイが人気とのことで、あれば借りようと思ったからだ。エッセイコーナーで見当たらなかったので、入り口の近くに設置されている検索機を使って調べて見た。市内の図書館には、4冊あるとのことだが、人気があるらしく、全て貸出中で、予約待ちが53件だった。諦めて、折角来たのだから、何か別の本を借りようと思い図書館内を、歩いていた時だった。

小学校高学年と思われる男の子と、その父親らしき人物が、ヤングアダルトコーナーにいた。子供は、「学校で読書の時間があるから、何か借りて行きたい。」と言っているのが聞こえた。「そう、借りて行きなさい」と父親は答える。

少しして、元気よくその男の子は「これにする!」何にしたのかと、私は気になり耳を澄ました。男の子は『これでコピペとは言わせない』とハッキリ本のタイトルを言ったのだ。内心、私はそれはどうかとと思っていたら、やはり、父親は「ちょっと、それはやめなさい」と答えていのを聞いて、安心した。

この年齢の子供なら、コピペなどと思わずに、しっかりと自分の頭で考えてほしいと思うのが親心というものだろう。

私はその後、その男の子が、どの様な本に決めたのか知らないが、そもそもヤングアダルトコーナーに何故そのような本が、置かれていたのだろうか気になるところだ。

本来、ヤングアダルトコーナーは、将来の選択に役に立つであろう、職業に関する本だったり、成人するまでに必要なことの参考となる本が並んでいる。まさか、そこに『コピペ』の方法を教える本があるとは思わなかった。
 
私は、心の中で驚きながらも、男の子の元気の良さと、小学生の時の朝の読書時間を思い出して、クスッと笑ってしまった。

図書館に来た目的は、お笑い芸人のエッセイを借りることだったけれど、思いもよらないことで笑えたので、少し心もウキウキした。そして、折角来たのだから、何か別のエッセイを借りようと、再びエッセイコーナーへ。聞いたことはあるけれど、読んだことのない作家のエッセイを借りることにした。

久しぶりの図書館だったので、貸し出しカードの期限を更新することになり、身分証として写真映りの良くない運転免許証を差し出し、無事にカードの更新と貸出手続きをして、図書館を後にした。

図書館を出たら,とても天気が良く、まだ4月なのに夏日の様な気温で、しかし心は軽やかに家路に着いた。
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