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四の罪状
三十三間堂ーー第十三位
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「ル~ヅキ! 遅れちゃってごっめ~ん」
「はあ?」
突然に発せられた少女の、嫌味の無い可愛らしい声に、手を伸ばそうとした時雨の動きも困惑に止まる。
部外者処か明らかに少女は、琉月へと会いに来たみたいだ。
「いえいえ、丁度お話していた所ですよ」
琉月もそう。少女を待っていたかの様に席から立ち上がる。
それを見て少女は駆け出し、琉月の豊満な胸元へと飛び込んでいた。
「おめかしに時間かかっちゃって……。今日は大事な日だからボク不安で……」
「大丈夫ですよ。貴女は何を着ても可愛いのですから」
不安そうに胸元に飛び込んで来た少女を、あやす様に琉月は優しく抱き締めていた。
「そぉう? エヘヘ、ありがとルヅキ」
途端に明るく目を輝かせ、嬉しそうに抱かれる少女の姿。
それはまるで、年の離れた仲の良い姉妹みたいだ。
時雨と幸人の二人は、その光景に呆気に取られてしまったかの様に、口を半開きで暫し立ち竦む。
「まっ……まさか?」
ようやく事態が理解出来たのか、しどろもどろに二人へと疑問を向けた時雨。
「ああ、紹介が遅れましたね――」
それに気付いた琉月は、胸元に踞る少女をゆっくり二人へと振り向かせた。
「ルヅキ? 何この人達……」
少女は今更気付いたのか、幸人と時雨の二人の姿に、そのオッドアイを琉月と二人へ交互に向けていた。
「大丈夫ですよ」
琉月は少女の柔らかそうな栗色の髪を、優しく撫でながら――
「彼女が先程お話致しました、SS級の最有力候補。現S級エリミネーター、三十三間堂 第十三位――コードネーム『悠莉(ユーリ)』です」
そう彼女は誇らしげに、まるで自慢の妹を紹介するかの様に、琉月は悠莉というS級エリミネーターの少女を二人へと紹介するのだった。
「ええぇぇぇっ!?」
余程信じられなかったのか、室内に響き渡る時雨の驚愕の声。彼らしいオーバーリアクション。
「冗談でしょ? こんなガキんちょがSS級最有力候補とか――」
言いたい事はもっともだが、とても失礼な事を言っている事に、彼は気付いていない。
「…………」
悠莉と呼ばれた少女は、無言だがとても可愛らしい笑顔で、時雨の下へと歩み寄っていた。
そして小さくも白い右手を、彼の前で差し出す。
それはこれから“宜しくお願いします”の、挨拶がてらの握手のつもりなのか?
「おっ? 中々可愛げあるね。だが生憎、俺には守備範囲外だから、そっちのロリコンお兄さんが面倒見てくれるよ――」
意味深に、何処か失笑しながら幸人へと瞳を向け、握手を返そうと彼も手を伸ばす。
「…………」
幸人はその一部始終、そして時雨の視線と言葉の意味に睨んでいると思われたが、そうではない。
やはり彼は少女のみを、まるで確認観察するように見、そして固まっていた。
時雨と悠莉の間で握手が交わされる、その一瞬の間。
「――っ!?」
刹那――弾ける鈍い打音。
「NOoォォォォォォ!!!!」
時雨は突如、膝を抱えながら絶叫に踞っていたのだ。
その眼前には右足を宙に浮かせ、突き出している少女の姿。
その可愛らしい黒いロングブーツの尖端に、鈍く輝くは鉛の証か?
彼女は可愛らしくも小悪魔的な笑みのまま、時雨の左脛を蹴っていたのだ。
「ガキって言うなぁぁぁ! この変ちくりん頭の女男!!」
弁慶の泣き所へ、不意に打ち込まれた痛みで悶絶中の時雨へ向けて、少女からの突然の罵倒。
「べぇぇっだ!」
舌を出して、時雨へ思いっきり嫌悪感を顕にするが、それでも少女の可愛らしさは些かも失われていない。
「なっ……」
「なんと思いっきりのいい……」
その事の顛末に、流石の幸人も呆れたのか言葉を失い、ジュウベエもまた少女の思いっきりの良さに感心するしかなかった。
「はあ?」
突然に発せられた少女の、嫌味の無い可愛らしい声に、手を伸ばそうとした時雨の動きも困惑に止まる。
部外者処か明らかに少女は、琉月へと会いに来たみたいだ。
「いえいえ、丁度お話していた所ですよ」
琉月もそう。少女を待っていたかの様に席から立ち上がる。
それを見て少女は駆け出し、琉月の豊満な胸元へと飛び込んでいた。
「おめかしに時間かかっちゃって……。今日は大事な日だからボク不安で……」
「大丈夫ですよ。貴女は何を着ても可愛いのですから」
不安そうに胸元に飛び込んで来た少女を、あやす様に琉月は優しく抱き締めていた。
「そぉう? エヘヘ、ありがとルヅキ」
途端に明るく目を輝かせ、嬉しそうに抱かれる少女の姿。
それはまるで、年の離れた仲の良い姉妹みたいだ。
時雨と幸人の二人は、その光景に呆気に取られてしまったかの様に、口を半開きで暫し立ち竦む。
「まっ……まさか?」
ようやく事態が理解出来たのか、しどろもどろに二人へと疑問を向けた時雨。
「ああ、紹介が遅れましたね――」
それに気付いた琉月は、胸元に踞る少女をゆっくり二人へと振り向かせた。
「ルヅキ? 何この人達……」
少女は今更気付いたのか、幸人と時雨の二人の姿に、そのオッドアイを琉月と二人へ交互に向けていた。
「大丈夫ですよ」
琉月は少女の柔らかそうな栗色の髪を、優しく撫でながら――
「彼女が先程お話致しました、SS級の最有力候補。現S級エリミネーター、三十三間堂 第十三位――コードネーム『悠莉(ユーリ)』です」
そう彼女は誇らしげに、まるで自慢の妹を紹介するかの様に、琉月は悠莉というS級エリミネーターの少女を二人へと紹介するのだった。
「ええぇぇぇっ!?」
余程信じられなかったのか、室内に響き渡る時雨の驚愕の声。彼らしいオーバーリアクション。
「冗談でしょ? こんなガキんちょがSS級最有力候補とか――」
言いたい事はもっともだが、とても失礼な事を言っている事に、彼は気付いていない。
「…………」
悠莉と呼ばれた少女は、無言だがとても可愛らしい笑顔で、時雨の下へと歩み寄っていた。
そして小さくも白い右手を、彼の前で差し出す。
それはこれから“宜しくお願いします”の、挨拶がてらの握手のつもりなのか?
「おっ? 中々可愛げあるね。だが生憎、俺には守備範囲外だから、そっちのロリコンお兄さんが面倒見てくれるよ――」
意味深に、何処か失笑しながら幸人へと瞳を向け、握手を返そうと彼も手を伸ばす。
「…………」
幸人はその一部始終、そして時雨の視線と言葉の意味に睨んでいると思われたが、そうではない。
やはり彼は少女のみを、まるで確認観察するように見、そして固まっていた。
時雨と悠莉の間で握手が交わされる、その一瞬の間。
「――っ!?」
刹那――弾ける鈍い打音。
「NOoォォォォォォ!!!!」
時雨は突如、膝を抱えながら絶叫に踞っていたのだ。
その眼前には右足を宙に浮かせ、突き出している少女の姿。
その可愛らしい黒いロングブーツの尖端に、鈍く輝くは鉛の証か?
彼女は可愛らしくも小悪魔的な笑みのまま、時雨の左脛を蹴っていたのだ。
「ガキって言うなぁぁぁ! この変ちくりん頭の女男!!」
弁慶の泣き所へ、不意に打ち込まれた痛みで悶絶中の時雨へ向けて、少女からの突然の罵倒。
「べぇぇっだ!」
舌を出して、時雨へ思いっきり嫌悪感を顕にするが、それでも少女の可愛らしさは些かも失われていない。
「なっ……」
「なんと思いっきりのいい……」
その事の顛末に、流石の幸人も呆れたのか言葉を失い、ジュウベエもまた少女の思いっきりの良さに感心するしかなかった。
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