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第3章 協力?

三話 成立

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それは幕府転覆を謀った四死刀に、後継者が存在していたという事実。


しかもこの様な年端も行かぬ少年が? という事実に驚愕を隠せない。


「まあ私の事は“どうだって”いいんです。キリトの事ですが……」


少年はあくまで、自分の事はそれ以上の何者でも無い事を強調し、早々にキリトへの話へ移る。


「そうか……。してキリトは? まだ生きておるのか!?」


もはや深くは問い詰めまい。重要なのはその先。


意気込む長老に対し、ユキヤという少年は冷静に対応する。


「それは……分かりません。私にこの地にある光界玉を護る様、伝えてすぐ去りましたから。普通なら生きてはいない程の重傷でしたが、仮にもキリトは四死刀の一角。そう簡単にくたばるとは思えませんがね……」


とにかく異常な程に、落ち着き払っていた。


少年は淡々と事の顛末を語り、また一呼吸置いて語り出す。


「キリトの生死は分かりませんが、師であるユキヤを含めた三人は、伝え通り亡くなっています」


まるで見てきたかの様な――


やはり四死刀の存在は、既に伝説と共に終わっていた事を。


伝えられていない後継者を遺して――


「それにしても此所を捜すのは苦労しましたよ。キリトは東北の、大まかな場所しか伝えなかったですからね」


それに皆が妙に納得。これで全て合点がいく。


この少年は迷い込んだ訳でも、この地を狙っていた訳でも無かった事が。


そして、ここからが本題。


「では……狂座から光界玉を護る為、我々に力を貸してくれぬか?」


最も重要事項。その力は必要不可欠と云えた。


その懇願とも言える長老の頼み。


皆黙して、その返答を待つ。


久遠にも感じられた静寂の刻の中、ようやく口を開く。


その答えを――


「……アナタ方に力を貸す義理は有りませんが、光界玉を護るのはキリトの意思であり、散って逝った彼等の鎮魂の為にも、冥王復活は絶対阻止ですね」


その返答を皮切りに、歓喜の声が上がった。これで一縷の望みが出てきた事に。


彼は決して、素直では無いかもしれない。


屈折した形であるにしろ、冥王復活阻止の想いは彼も一緒なのだ。


ここに夜摩一族とユキヤとの間に、掟を越えた協力関係が結ばれる事となった。


「とはいえアナタ達がどうなろうとか、それは私には関係の無い事ですし、身の安全までは保障しませんので……」


だがやはり少年はそれ以外の事に関しては、無関心であったのは言うまでもない。
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