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第4章 狂座

一話 エルドアーク宮殿

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――――狂座本部――――


※エルドアーク宮殿


外面は煌びやかな中世装飾に彩られ、外装は特殊な強化装甲により鉄壁の守備を誇る。


更には動力庫が近代的な特殊技術により、空間移動を容易に行う事が出来る。


内部は全て大理石によって豪華に建設されており、それはまさに狂座の見栄と強大さを示した冥王の一大居城であった。


現在は次元断層内に宮殿を置いており、地上から肉眼で確認する事は出来ない。


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ここエルドアーク宮殿内の戦略広間では、狂座最高幹部である“当主直属部隊”による会議が行われていた。


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「我々の最優先任務は、夜摩一族に隠された光界玉の奪取及び一族の殲滅、冥王様の早期復活にある――」


直属の一人が資料を手に、戦略内容を述べる。薄暗い広間に於いて、その容姿を確認する事は出来ない。


「キャハハ☆ なんか楽しくなってきたね★」


無邪気な声が広間内に響き渡る。声からしてまだ幼い感じで。


「少し黙ってろユーリ。これは遊びじゃ無いんだぞ……」


直属の一人が幼き声の言動を諌める。


だが口調はどちらかといえば、溜め息混じりのあやし声。


「アザミったら頭固いんだから★ クズ共がボクらに反抗してるんだよ? これが楽しみじゃなくなんなのさ? ルヅキだってそう思うでしょ★」


だがユーリと呼ばれた直属の一人は無邪気に、とても楽しそうに不満を述べていた。


戦略内容を述べてたルヅキと呼ばれた者は、自分に同意を振られ、溜め息を吐きながら資料をそっとテーブルの上に置く。


「我々の任務は楽しむ事では無い。あくまで冥王様の早期復活だという事を忘れるな」


ルヅキの『これは遊びではない』という咎めに対し――


「二人共頭固いんだね★ そんな大事な事忘れる訳無いじゃん☆ だけどもうちょっと肩の力を抜いていこうよ★」


やはり無邪気だ。


ルヅキとアザミは顔を合わせ、ユーリの無邪気さに溜め息を吐いた。


だがユーリの言動にも一理ある事は確か。


最近は焦りからか、皆が少し肩に力が入り過ぎてるのかも知れない。


「少し、いいですか?」


三人を横目に別資料を見ていた一人が口を挟む。


「どうしたハル?」


ルヅキは別資料を興味深く眺め、三人の輪から外れていた一人に問い掛けた。


「先程入ってきた情報ですが、光界玉探索にあたっていた第十八遊撃師団及び、第十六探索師団長シオンのサーモによる生体反応が、消失したとの確認報告がありました」


ハルは冷静にその主旨を告げる。


「それって殺られちゃったって事? 使えないなぁ……」


ユーリが子供の悪戯失敗みたいな感じで、あ~あと呟いた。
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