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ほうれんそう
報告(3話)
しおりを挟む仕事も終わり、ユニットメンバーの待つ居酒屋へ向かう。
店に入ると、まず、客の大きな笑い声が耳に入ってきて、おつまみの匂い、鼻につくアルコールの匂い、そして、僕の嫌いなタバコの匂い。
小上がりの一角に知っている顔を見つけ、小走りで向かう。
「おつかれさま神野!とりあえず、ここに座りなってー」
そう言って席を勧めるのは朝に誘いのLINEを送ってくれた明莉さんだった。
酒が入ってるからか強めに引っ張られて、勧められるまま席につく。
「ちょ、もう酔っ払ってるんですか?飲みすぎですよー」
僕は少し苦笑いをしながら話す。
「酔ってないよぉ、少しテンション上がってただけよー?」
「それを酔っ払いって言うんですよ」
「かぁー、これだから真面目くんわぁー」
そんな酔っぱらいとシラフのあるある会話をしていた。
そんな僕たちの様子を見て上司が茶化し始める。
「あーあー、神野くん、彼女がいるのにそんなデレデレしていいのかなー?彼女に報告しちゃうぞ!」
人の気も知らずにゲラゲラと笑って茶化す上司にちょっとだけムカついた。
テンションが上がったのか更に続ける。
「浮気症な男は嫌われるぞー?女だって何考えてるか分からないんだし、あ、もはや浮気とかしてたり」あー。大丈夫です。別れましたので」
我慢の限界が来てしまい。上司の言葉を遮って僕は強めの口調で話す。
その言葉を聞いた瞬間、騒いで盛り上がっていた空間がシン、と短い時間だけど静かになった。
まるで、時間が止まってしまったかのように。
そして、そんな重い空気を割るように上司が苦笑いしながら口を開く。
「そうだったんだぁ。なんか、ごめんね?」
上司が悪いわけではない。
そう、空気を読めない僕が悪いんだ。
分かってはいるんだけれど、謝る気になれない。
悪いと思ってるのか分からない「なんかごめん」という言葉が嫌いだし、奏の1番の口癖だったからだ。
そっぽを向いて態度の悪い僕を見ていた明莉さんがいきなり立ち上がる。
そして、いきなり僕の首根っこを掴み、引きずっていく。
何がなんだか分からない僕はそのまま、店の外へ連れ出される。
そして、外で壁ドンの体制になり胸ぐらを掴まれた。
明莉さんは、僕を睨みながら口を開く。
さっきまでの笑顔はどこへやら。
「おいてめぇ、飲みの席くらい目上を楽しませろよ。ちっと老いぼれ共からガヤ食らってムキになるような小さい心しかねぇのならXXX切っちまえよ本当にXXXXついてんのか?潰されてぇか?」
出てくる暴言に僕はひたすら縮こまっていた。
何?この状況!年上の美人の先輩にガチギレの説教されて胸ぐら掴まれて壁ドンされるって…
「ご、ごめんなさい。こんな風に空気をぶち壊すつもりなんてなかったんですけど…」
何とか絞り出した言葉を聞いた明莉さんはハァーと深いため息をついて考え事をし始める。
そして、何かを思いついたようで、いきなり店に走って入っていく。
その様子を呆然と見ていた、数分後。
また走って戻ってきて、僕の肩をいきなり掴む。
「今から、抜け出して二人で飲むぞ!ちなみに、上司には謝っといたから今度改めて神野も謝れな?」
そうまくし立てた明莉さんはまた強引に僕の腕を掴んで
夜の歓楽街へと歩き出すのだった。
不覚にも、僕の心臓は鼓動が早くなっていた気がした。
そして…
すれ違っていった彼らを呆然と見ていた一人の女は
苦い顔をして、ただ、人混みの中へ消えていった。
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