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7話
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「さあ、付いたぞ、麗しの我が家だ」
ユハ達は森の中にある打ち捨てられた別荘の廃墟にたどり着いた。定住をしないユハ達は一時ここを間借りしていた。別荘は二階建てで大型車を格納できるガレージを備えた立派なものだが。放置されて時間が経ったせいか、薄汚れていて、徐々に自然に帰ろうとしているように見える。何故捨てられたのかは、ユハ達には知る由もなかった。しかし見る目のあるものが見たら、交通の便が悪い上に周囲の木々のせいで昼間でも薄暗いため、陰気な雰囲気が漂っており、そのために買い手が付かなかったと推測できるだろう。
「ユハ、今の今までいったい何をやっていた?」
玄関で待ち構えていたカイメラの男が尋ねた。男は長身痩躯で、角はユハに似た長く湾曲したものだが、髪は対照的に真っ黒の長髪で、切れ長の目が神経質そうな印象を与える。ユハの兄のアジュダハだ。
「ごめんなさい、アジュダハ」
ユハは手短に謝罪を済ませ、逃げるように寝床に付こうとするが。
「ユハ、アジュダハの言うことを聞きなさい」
母のユラヌスに引き止められた。ユラヌスは中年のカイメラで角は息子同様湾曲したものが生えており、髪は灰色をしていた。腰や尻に肉が付いており、かつては肉感的で女性的な体系をしていたことがうかがえる。しかし今では緩み切っており、それが彼女を実年齢以上に老け込んでいるように見せていた。
「ずっと昼回りを続けてた。ちょっと気になる奴がいたから」
「説明になっていないな。何故ここまで時間がかかった?深追いは厳禁と再三言い含めたはず」
ユハの答えには満足しなかった、アジュダハが追及を続けた。
「一度見失って見つけるのに時間がかかっただけ」
「だとしても、まずは、我々の指示を仰ぐべきだ。対象の特徴を報告し本部の厳正なる審議の末、初めて昼回りの標的に適当かが決定されるのだ。これは単純に標的の質を吟味するという意味にはとどまらない、我々の安全を守るリスク管理の側面もある。それを十分に把握した上での行動か?」
ユハは一応本当のことを答えたものの、アジュダハの追及は止まらなかった。言いたいことを全て言い切るまで止まらないといった感じで激しくまくしたてる。どうやら今夜はとことんやる気らしい。こうなったアジュダハに逆らっても火に油を注ぐだけだ。
「……ごめんなさい、ちょっと迂闊だった。次からはちゃんと気を付けるよ」
ユハはとりあえず素直に謝罪した。アジュダハの怒りが収まるまで、何とか耐えるしかない。
「妙にしおらしいな。よもや例のくだらない草集めでここまで時間がかかったのではあるまいな?」
「……そんな……そんなことは……」
「やはりそうか、一族有数の魔力を持つ故今まで特別扱いしてきたが、どうやらお前は自分自身の力を正しく使うことができないらしいな。我々のこの力の意味を全く理解していないようだ。このまま成果が出ないなら昼回りを抜けてもらうか」
実際はノートをなくしていたため植物の収集はできなかったのだが、こうも頭ごなしに避難されるとついつい狼狽してしまう。しかしアジュダハにはその様子を肯定と取られてしまう。
「私もそれには、賛成よ。そもそも私はユハを昼回りに行かせるのは最初から反対だったわ。15歳で昼回りだなんて聞いたことがない」
母のユラヌスまで話に乗ってきてしまった。ずいぶんまずい方向へ話が進んでしまっている。今昼回りを外されてしまったら、明日ノートを回収できない。
「……え……ちょっと待って!」
ユハがなんとか弁明を試みようとしたとき。
「ただいま!ハイ、コレ今日の夜回りの成果」
玄関から夜中には似つかわしくない明るい声が響いた。”夜回り”から帰ってきたカイメラの男児たちだ。ユハぐらいの年頃の男児は通常”夜回り”という役目に従事する。夜回りの目的は単刀直入にいって生活必需物資の確保だ。一族の男児たちが夜間人目を避けレストランの廃棄食品や、捨てられた衣類、外部の情報収集に使われる古新聞や古雑誌を収集する。外社会での身分を持たぬユハらはこういった方法で日々の糧を得る必要があった。変身を長時間にわたって維持できるようになるまではこの仕事に従事し、以降は昼回りを務める。通常20代前半までは夜回りの任に付くのだが、一族でも有数の魔法の才を持つユハは例外的に15歳の若さで昼回りを任されていた。
「ふむ、やはり少ないな」
アジュダハが今日の夜回りの成果を確認していった。一族の中では知恵者とされるアジュダハはコミュニティ全体の監督をする役割を担っている。
「しょうがないだろ。こんなに早く帰ってきたんだから」
夜回りを担当した一族の男児の一人が答えた。
「もう帰ってきたの」
彼らが異常に早く帰ってきたのでユハは驚いて尋ねた。通常夜回りは日の入り直前まで行われる。今日のように深夜に帰宅するのは明らかに早すぎた。
「私が帰らせた、お前が遅いので大事を取ってな」
アジュダハが答えた。こういった判断を下すのも彼の役割だ。
「なあ!フレム!せっかく早く帰ったんだからビデオ見たい!」
「ビデオ見るの?私も見たい!」「私も!」
男児の声を聞きつけて家屋の奥から女児たちが集まってくる。彼女たちは基本的に家の外に出ることはない。基本的に女性はコミュニティの内部にとどまり、家事に従事する。女性からしか血統を紡いでいけないカイメラにとって、女性は何よりも守るべき存在。危険な外部に行くのは男だけでよい。
「ヘイヘイ、お任せください、おぼっちゃま方」
フレムが慇懃無礼に答え、準備を始める。フレムは建物の自室から古い磁気媒体メディアの再生装置をガレージに運んだ。変圧器やらなにやら必要なものを組み上げ例の古びた自動車のバッテリーへ接続する。建物にはもうとっくの昔に電力は届いておらず、機器を動かすには自動車のバッテリー使用するほかなかった。
「私も見たいわ、今日は早かったから御飯の準備にはまだ時間があるし」
「我が、細君の望みとあらば」
ユラヌスの要望に慇懃無礼に応えた。
「ユハはどうする?」
男児のうちの一人が聞く。
「僕はいい」
ユハは誘いを断った。夜回りの為に昼間寝ていた男児らと違ってユハはもう眠ってしまいたかった。それに、そもそもユハはビデオにもうあきていた。
(それ見るのもう何十回目とかじゃないか)
彼らが見る磁気媒体の映像メディアは現在では既に生産が終了しており、新しいものが調達されることはなかった。そのため借りられたレパートリーをローテーションで繰り返し見ている。いい加減飽きが来そうなものだが、他に娯楽があるわけでもないので皆同じものを見続けている。因みにテレビの放送は何年も前にデジタルへ移行して以来見れなくなってしまった。
「あ!そうかお前は草の方が好きだったもんな!」
「アハハハ!」
ユハは皆から嘲笑されるが、無視した。今日は本当に色々あった、だからもういちいち反応している元気がない。
「アジュダハは?」
「私はいい、これらの情報源を読む必要があるのでな、お前たちと違って世情に明るくある必要がある」
そういうと、アジュダハは夜回りで回収してきた雑誌やら新聞をもって自室へ向かった。
「ハーイ!」
子供たちが元気よく答えた。彼らは目上のアジュダハには素直に従う。
「あの……アジュダハ……さっきはああ言ったけど、本当に遊んでたわけじゃないんだ」
ユハが自室へ向かうアジュダハに話しかけた。しばらくたってアジュダハの頭も冷えている。今なら説得ができるかもしれない。
「面白い奴を見つけて。そいつはアヨウって奴で、外国から来たタルタリアン」
「ふむ、続けろ」
「例の大学に通ってて、たぶんアジュダハの欲しがってる頭のいい奴だと思う。体も健康。だから、明日も昼回りに行っていい……?」
アジュダハが興味を引くようアヨウのことを説明した。正体がばれたことは言わなかった、そのことが知れたら、昼回りを外されるぐらいでは済まない。これで何とか説得できればいいが。
「ふん、いいだろう、昼回りの解任の件はひとまず保留にしよう」
ユハは安堵の息を吐いた。とりあえずノートの回収はできそうだ。
ユハ達は森の中にある打ち捨てられた別荘の廃墟にたどり着いた。定住をしないユハ達は一時ここを間借りしていた。別荘は二階建てで大型車を格納できるガレージを備えた立派なものだが。放置されて時間が経ったせいか、薄汚れていて、徐々に自然に帰ろうとしているように見える。何故捨てられたのかは、ユハ達には知る由もなかった。しかし見る目のあるものが見たら、交通の便が悪い上に周囲の木々のせいで昼間でも薄暗いため、陰気な雰囲気が漂っており、そのために買い手が付かなかったと推測できるだろう。
「ユハ、今の今までいったい何をやっていた?」
玄関で待ち構えていたカイメラの男が尋ねた。男は長身痩躯で、角はユハに似た長く湾曲したものだが、髪は対照的に真っ黒の長髪で、切れ長の目が神経質そうな印象を与える。ユハの兄のアジュダハだ。
「ごめんなさい、アジュダハ」
ユハは手短に謝罪を済ませ、逃げるように寝床に付こうとするが。
「ユハ、アジュダハの言うことを聞きなさい」
母のユラヌスに引き止められた。ユラヌスは中年のカイメラで角は息子同様湾曲したものが生えており、髪は灰色をしていた。腰や尻に肉が付いており、かつては肉感的で女性的な体系をしていたことがうかがえる。しかし今では緩み切っており、それが彼女を実年齢以上に老け込んでいるように見せていた。
「ずっと昼回りを続けてた。ちょっと気になる奴がいたから」
「説明になっていないな。何故ここまで時間がかかった?深追いは厳禁と再三言い含めたはず」
ユハの答えには満足しなかった、アジュダハが追及を続けた。
「一度見失って見つけるのに時間がかかっただけ」
「だとしても、まずは、我々の指示を仰ぐべきだ。対象の特徴を報告し本部の厳正なる審議の末、初めて昼回りの標的に適当かが決定されるのだ。これは単純に標的の質を吟味するという意味にはとどまらない、我々の安全を守るリスク管理の側面もある。それを十分に把握した上での行動か?」
ユハは一応本当のことを答えたものの、アジュダハの追及は止まらなかった。言いたいことを全て言い切るまで止まらないといった感じで激しくまくしたてる。どうやら今夜はとことんやる気らしい。こうなったアジュダハに逆らっても火に油を注ぐだけだ。
「……ごめんなさい、ちょっと迂闊だった。次からはちゃんと気を付けるよ」
ユハはとりあえず素直に謝罪した。アジュダハの怒りが収まるまで、何とか耐えるしかない。
「妙にしおらしいな。よもや例のくだらない草集めでここまで時間がかかったのではあるまいな?」
「……そんな……そんなことは……」
「やはりそうか、一族有数の魔力を持つ故今まで特別扱いしてきたが、どうやらお前は自分自身の力を正しく使うことができないらしいな。我々のこの力の意味を全く理解していないようだ。このまま成果が出ないなら昼回りを抜けてもらうか」
実際はノートをなくしていたため植物の収集はできなかったのだが、こうも頭ごなしに避難されるとついつい狼狽してしまう。しかしアジュダハにはその様子を肯定と取られてしまう。
「私もそれには、賛成よ。そもそも私はユハを昼回りに行かせるのは最初から反対だったわ。15歳で昼回りだなんて聞いたことがない」
母のユラヌスまで話に乗ってきてしまった。ずいぶんまずい方向へ話が進んでしまっている。今昼回りを外されてしまったら、明日ノートを回収できない。
「……え……ちょっと待って!」
ユハがなんとか弁明を試みようとしたとき。
「ただいま!ハイ、コレ今日の夜回りの成果」
玄関から夜中には似つかわしくない明るい声が響いた。”夜回り”から帰ってきたカイメラの男児たちだ。ユハぐらいの年頃の男児は通常”夜回り”という役目に従事する。夜回りの目的は単刀直入にいって生活必需物資の確保だ。一族の男児たちが夜間人目を避けレストランの廃棄食品や、捨てられた衣類、外部の情報収集に使われる古新聞や古雑誌を収集する。外社会での身分を持たぬユハらはこういった方法で日々の糧を得る必要があった。変身を長時間にわたって維持できるようになるまではこの仕事に従事し、以降は昼回りを務める。通常20代前半までは夜回りの任に付くのだが、一族でも有数の魔法の才を持つユハは例外的に15歳の若さで昼回りを任されていた。
「ふむ、やはり少ないな」
アジュダハが今日の夜回りの成果を確認していった。一族の中では知恵者とされるアジュダハはコミュニティ全体の監督をする役割を担っている。
「しょうがないだろ。こんなに早く帰ってきたんだから」
夜回りを担当した一族の男児の一人が答えた。
「もう帰ってきたの」
彼らが異常に早く帰ってきたのでユハは驚いて尋ねた。通常夜回りは日の入り直前まで行われる。今日のように深夜に帰宅するのは明らかに早すぎた。
「私が帰らせた、お前が遅いので大事を取ってな」
アジュダハが答えた。こういった判断を下すのも彼の役割だ。
「なあ!フレム!せっかく早く帰ったんだからビデオ見たい!」
「ビデオ見るの?私も見たい!」「私も!」
男児の声を聞きつけて家屋の奥から女児たちが集まってくる。彼女たちは基本的に家の外に出ることはない。基本的に女性はコミュニティの内部にとどまり、家事に従事する。女性からしか血統を紡いでいけないカイメラにとって、女性は何よりも守るべき存在。危険な外部に行くのは男だけでよい。
「ヘイヘイ、お任せください、おぼっちゃま方」
フレムが慇懃無礼に答え、準備を始める。フレムは建物の自室から古い磁気媒体メディアの再生装置をガレージに運んだ。変圧器やらなにやら必要なものを組み上げ例の古びた自動車のバッテリーへ接続する。建物にはもうとっくの昔に電力は届いておらず、機器を動かすには自動車のバッテリー使用するほかなかった。
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「僕はいい」
ユハは誘いを断った。夜回りの為に昼間寝ていた男児らと違ってユハはもう眠ってしまいたかった。それに、そもそもユハはビデオにもうあきていた。
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「アハハハ!」
ユハは皆から嘲笑されるが、無視した。今日は本当に色々あった、だからもういちいち反応している元気がない。
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「私はいい、これらの情報源を読む必要があるのでな、お前たちと違って世情に明るくある必要がある」
そういうと、アジュダハは夜回りで回収してきた雑誌やら新聞をもって自室へ向かった。
「ハーイ!」
子供たちが元気よく答えた。彼らは目上のアジュダハには素直に従う。
「あの……アジュダハ……さっきはああ言ったけど、本当に遊んでたわけじゃないんだ」
ユハが自室へ向かうアジュダハに話しかけた。しばらくたってアジュダハの頭も冷えている。今なら説得ができるかもしれない。
「面白い奴を見つけて。そいつはアヨウって奴で、外国から来たタルタリアン」
「ふむ、続けろ」
「例の大学に通ってて、たぶんアジュダハの欲しがってる頭のいい奴だと思う。体も健康。だから、明日も昼回りに行っていい……?」
アジュダハが興味を引くようアヨウのことを説明した。正体がばれたことは言わなかった、そのことが知れたら、昼回りを外されるぐらいでは済まない。これで何とか説得できればいいが。
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