約束の君-Five bonds-

霜月秋穂

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1章《始まりの音》

5話:淡雪の君

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「俺の夢は羽月の夢を叶える事だから。」

「翔馬!?」

(ピピピピッ)

「ん………」

翔馬から連絡がないまま朝を迎え私は目覚ましの音で目を覚ました。
翔馬の事ばかり考えていたからだろうか……
私は翔馬の夢を見ていた……だがその夢の背景は真っ暗で翔馬が笑顔で私に声を掛けたと思ったらまるで幻か何かだったかの様に真っ暗な背景の中に消えてしまう夢だった……

「翔馬?」

私は夢の内容が内容だったので不安になると翔馬から連絡が来ていないかとスマホを確認した。
だが、スマホには岳瑠くんからのメッセージが届いていただけで翔馬からの連絡は来ていないかった。
私は直ぐに学校の支度をして朝食も余り喉を通らなかたので足早に家を出て美希との待ち合わせの場所に向かった。
私は美希と電車に乗ると学校へ向かった。
学校の最寄り駅へ着くと私は改札の外を確認した。
昨日とは違って人だかりは無く何時もの駅前の風景が広がって居た。
私は翔馬の事が気になっていたので足早に高校へ向かい、自分のクラスへ荷物を置くと1組に向かった。

「羽月?何か有ったのかな…なんか朝からソワソワしてたみたいだし……」

美希はいつもとは様子が違う私の姿を心配そうに見ていたが私は朝の夢の事で頭がいっぱいになっていて美希に返事を返す余裕もなくクラスを出てしまった。
私は1組の前に着くと翔馬を探した、私は1組の女子からは良く思われて居なかったのだろう……
冷めた視線と私の方を見ながらヒソヒソ話しをする女子の姿が目に入ってきた。
1組に翔馬の姿は無く私は長居はしない方が良いかと思い、昨日翔馬と話しをした天文部の教室へ向かった。

「翔馬……まだ来てないのかな……」

私は天文部の教室へ着くと扉をノックした。だが、中からの返答は無かった。
私は次に屋上庭園へと向かった。
昨日、最後に翔馬と会った場所……私はどんどん不安でいっぱいになっていった。
朝の夢は正夢で本当に翔馬が消えてしまうんじゃないかと不安でたまらなくなった。
私は屋上庭園に着くと庭園の奥まで走った。
だが、そこにも翔馬の姿は無かった………

「居なくなったり……しないよね……翔馬……せっかく会えたのに……」

私は涙が溢れそうになり泣かないようにと空を見上げた……
すると私の頬に何か冷たい物が落ちて来た……
空は晴れていが何処から流れてきたのかその冷たいものは本当に小さな雪のようだった。

「雪………?今、4月なのに……」

その雪は私の頬に落ちると直ぐに消えてしまうぐらいの小さな淡雪だった……
その様子と朝の夢が重なって私は堪えていた涙が溢れた……

「せっかく会えたのに………消えないでよ……………」

季節外れの淡雪は直ぐに止み雪が止むと同時ぐらいに学校のチャイムが鳴り響いた。
私は溢れる涙を拭おうとハンカチを取り出した……
だがそのハンカチは私が翔馬に返そうと学校に持ってきていた白いハンカチだった。
そのハンカチを見ると再び涙が溢れた。
私は自分のハンカチを取り出し涙を拭うと自分のクラスまで歩いて行った。

その日の授業は全く頭に入らなかった。休み時間の度に翔馬を探したが翔馬の姿は何処にも無かった。
私はお昼ごはんもまともに食べる事が出来ず一緒に居た美希はそんな私を見て心配していたが私は大丈夫と作り笑いで笑って見せていた。
授業の後の部活動も楽しい筈なのに昨日の様に夢中にはなれなかった。

私が部活を終えて帰ろうとするといきなり後から声を掛けられた。

「羽月ちゃん!」

その声は雅哉くんだった。

「雅哉くん?」

「いきなり声掛けてごめんね?今日は俺が羽月ちゃんの事を任されてたんだけどバスケ部が長引いちゃって……今帰り?」

「そうだったんだ……お疲れ様。」

私は心此処に有らずで返事を返した。
だがその時、私の頭を翔馬の事が過ぎった、雅哉くんなら翔馬の事解るかもしれないと……

「雅哉くん!今日、翔馬くん学校休んでたみたいなんだけど何か有ったの?翔馬くんから連絡も来ないし……何処を探しても翔馬くん居なくて……」

「翔馬?あぁ、少し元気無い様に見えたのは翔馬が原因みたいだね?大丈夫だよ、翔馬は元気だから。連絡が付かないのは昨日から寮を留守にしてる…と言うか、田舎に帰ってるからだよ。家の都合で急に帰らなきゃいけなくなったみたい。」

「家の都合……そう……なんだ……良かった……」

私は雅哉くんに翔馬の事を聞くと少しホッとした、消えちゃた訳じゃないんだと……
最初から誰かに聞けば良かったのかもしれないが、私は動揺し過ぎてそんな事まで考える事ができていなかたのだろう。

「羽月ちゃん?大丈夫?でも、翔馬がちょっと羨ましいな。羽月ちゃんにそんなに心配されて……俺が居なくなっても羽月ちゃんは心配してくれるのかな?」

「え?……居なく……そんなの嫌だ…翔馬くんの事は心配だよ……でも雅哉くんや他のみんなが居なくなるのもやだよ……せっかくお友達になれたのに……居なくなっちゃうのは嫌だよ……」

私は雅哉くんの問い掛けを聞くと再び不安になった。
翔馬だけじゃなくみんなまで居なくなったら私はどれだけの不安を感じるのだろう……
そんな事を考えるとただ怖くて仕方がなかった……数日前に友達になったばかりだけど……みんなと居る時は楽しくて神社で翔馬と遊んでいた時の様な不思議な懐かしさを感じて……ずっと一緒に居たいと感じてしまうぐらいに大切な存在だったから……

「ありがとう羽月ちゃん、君は本当に昔から友達を大切にする子だったからね……君と友達になれて俺も今は凄く嬉しいよ。」

「え?昔から……?」

「翔馬が教えてくれたんだ、羽月ちゃんは友達を大切に出来る子だって。」

「翔馬くんが?」

「うん、羽月ちゃんが来ないのは何か理由があるんだって。羽月ちゃんが来れないなら自分が迎えに行くんだって。義務教育が終ったら羽月ちゃんと同じ高校を受けるって。どうやって調べたのかは教えてくれなかったけど翔馬は無事に羽月ちゃんと同じ高校に入学する事が出来たしね。翔馬は羽月ちゃんが来なくなってからもずっと羽月ちゃんの事を信じて待ってたからね。」


私は雅哉くんの言葉に少し疑問を感じたが、それ以上に翔馬が信じて待っていてくれた事の方が嬉しかったし、申し訳ない気持ちも有り、それ以上深くは聞かなかった。
そして、雅哉くんは昨日の岳瑠くんと同じように私を駅まで送ってくれた。

「なんか、ごめんね?毎日の様に送ってもらっちゃって……」

「ははっ、気にしないで?俺達か勝手にやってる事なんだからさ。ただ、迷惑だったら言ってね?羽月ちゃんが嫌がる事を続けるのは友達として間違ってると思うし。」

「雅哉くん、ありがとう。迷惑とかではないよ、ただ申し訳なくて……でも今日は雅哉くんに送ってもらえて良かった……翔馬くんの事も聞けたし。」

「そっか、少しでも羽月ちゃんのお役に立てなら良かったよ。」

私は雅哉くんにお礼を言えば改札を通って電車のホームに向かった雅哉くんは私の姿が見えなくなるまで手を振ってくれた。
電車を待っている間私は翔馬の事をボーッと考えていた。
雅哉くんは家の都合で田舎に帰っていると言っていたけど、お爺さんに何か有ったのだろうか……それともご両親に何か有ったのだろうか…と色々考えてしまっていた。
理由が分かったら分かったで別の心配をしてしまうもので心配は尽きなかった。

「翔馬……大丈夫なのかな……昨日も少し様子が変だったし……直ぐ……帰ってくるよね……」

電車がホームに着いた時には日が少し沈み始めていて周りは私の心の中の様に薄暗くなっていた………
私は家に帰ると不安を紛らわす為に再び箱からお守りを取り出しぎゅっと握った。

「翔馬……このまま居なくなったりしないよね……」

その日の夜、私は気付くとお守りを握ったまま眠りに落ちていた。
お守りのせいかは分からないが、私はその日の夜不思議な夢を見た。

「……ん……此処は……?」

先程まで部屋に居たはずが気付くと私はあの神社に居たのだった。

「伝承……神社……」

私は自分がどうして神社に居るのか分からず周りを見回した。
私は何故か高校の制服姿で、辺りには誰の姿も無く、私は誰か居ないか探すため神社の奥へと歩いて行った。
神社の奥へ行くと小さな人影を見付けた。

「誰か居る……?」

私は人影を確認して驚いた……

「………翔馬………」

そこに居たのは幼き頃の翔馬だったのだ。
私は何も考えず翔馬に駆け寄った。

「翔馬!」

私が声を掛けると翔馬は驚いた顔をした。
しかし、私の姿を見た翔馬は警戒しているか様な表情を見せた。

「お前誰だ!なんで俺の名前を知ってんだよ!」

「え?」

その時、私はやっと気付いた。
今の私の姿を小さい頃の翔馬が知っているわけないのだと……
私はダメ元で自分の名前を翔馬に伝えてみようと思った。

「あ、ごめん。驚いちゃうよね……私の名前は羽月……翔馬くんは私の事知らないかな?」

「羽月………知らない。俺には知り合いとか居ないから。それに、あんたの制服……この辺で見ないし。」

そこに居る翔馬は私の知らない、私の事を知らない翔馬だった。
私は翔馬に何て返せば良いのか分からなくなりそれ以上言葉が出て来なかった。

「そ、そっか…ごめん……多分、私の勘違いかも。私は貴方に似た子を知ってたから……」

「似た奴?……ふ~ん、良くわかんねぇけど、俺は人違いだから。」

翔馬はそれだけ言うと警戒した様子のまま何処かへ走って行ってしまった。
私は翔馬が走り去る姿を見送ると胸が苦しくなった。
自分の知っているはずの相手に知らないと言われる事はこんなにも辛い事だったのだと………
私は溢れそうになる涙をぐっと堪えた。

「翔馬……」

(ピピピピッ)

涙を堪えたと同時ぐらいに目覚まし時計の音が響き私は目を覚ました。
目覚ましを消すと、私は今起きた出来事は全て夢だったのだと認識した。
夢と分れば少しホッとした様な気もした。

「夢……良かった……でも……翔馬……私の事知らなかった……夢なのに……辛いよ……」

私は自然に頬を伝う涙を手で拭った。
その手の中には昨夜握ったまま眠ってしまったお守りの姿が有った。

「神社の夢を見たのはこのお守りの影響かな……?」

私はお守りをしまうと制服に着替え出掛ける準備をした。
今日は翔馬に会えるかな……そんな事を考えながら家を出た。
いつもの様に美希と登校したが駅には翔馬の姿は見当たらなかった。
学校に着くと私は1組に顔を出そうかとも考えだが昨日の様に1組の女子の視線を再び浴びるのも辛かったのでダメ元で天文部の部室へ向かった。
天文部の教室に向うと部屋に明かりが点いているのが見えた。
私は翔馬が居るかもしれないと思い、教室の扉をノックして返答を待ってみた。

すると………


「はい。どうぞ。」

中から声が聞こえたがその声は翔馬では無かった。
私は返事を聞くと扉を開け中に入った。

「失礼します。」

「天観さんでしたか。何か御用でも?神峡さんなら今日もお休みですよ?」

「そ、そうだったんだ……いきなりごめん、誰か居るかなと思って……拓弥くんは何かしてたの?」

「私は調べものですよ。」

拓弥くんは部室で調べものをしていたらしく返事だけ返すと再び何かを調べ始めてしまった。
私は何か話し掛けるべきなのか声を掛けない方が良いのか分からず黙って拓弥くんを見ていた。
すると、拓弥くんの方から再び声を掛けてきてくれた。

「……やれやれ、天観さんは何しに来たんですか。ずっとそこに立って居られると気が散るので座るなりなんなりしてくれませんか。用事がないならクラスに戻って頂いても良いんですよ。」

「え?あ、ごめん!……えっと……」

私は翔馬の事を拓弥くんに聞いても良いのかと考えてしまうと中々言葉が出なかった。
私のそんな様子に見兼ねたのか拓弥くんは私の方を見ると眼鏡を指で上げ少し刺す様な冷たい様な目をすると自分から話してくれた。

「貴女の今の心の中を当ててあげますよ。私に神峡さんの事を聞きたいけど聞いていいのか分からない。そうじゃないですか?」

「えっ?…わ、分かるの!?」

私は見事に心の中を当てられてしまうと驚きが隠せなかった。

「はぁ、顔に書いてありますよ。」

「えっ!?うそ!?」
私は慌てて持っていたコンパクトミラーで顔を映し確認した。

「貴女……例えですよ。本当に確認する人なんて始めて見ましたよ。
それと、神峡さんの事なら私に聞いても意味が無いですよ。
神峡さんはあまり自分の事を話す人では有りませんので、貴女の事はよく話されていましたが。」

「うっ……つい……
そうなんだ……自分の事はあまり話さないんだ……」

私はコンパクトミラーをしまいながら拓弥くんの話しに耳を傾けた。

「今回も実家に用事が出来たから暫く田舎に帰るとだけ言って出掛けてしまいましたから。神峡さんはそういう方なので貴女もあまり気にし過ぎない事をお勧めしますよ。ところで、今日は吹奏楽部はお休みの日ですが帰りは白石さんと帰られるんですか?」

「え?今日はテニス部は有るからな……1人で帰るつもりだよ。」

「そうですか……」

(キーンコーンカーンコーン)
話しに切りが付きそうなタイミングで学校の鐘の音が響いた。

「もう時間ですか……戻りましょう。貴女のクラスは私のクラスの隣ですから……教室まで一緒に行きますよ。」

「え?あ、ありがとう……」

私は拓弥くんと一緒に教室まで戻った。
拓弥くんに気にし過ぎないとは言われたが私はずっと翔馬の事が頭から離れなかった……

そして、その日はすっきりしないまま下校時間を迎えた。
吹奏楽部は今日はたまたま休みで美希はテニス部、拓弥くんと岳瑠くんは天文部、雅哉くんと龍慈くんはバスケ部、私は珍しくみんなとは別で帰ることになった。

「1人で帰るの久しぶりかも……」

少し寂しいような気もしたが私は1人で駅まで歩いていた。
普段は誰かと一緒に歩いて居たから気付かなかったが駅から学校までの道にはたくさんのお店が並んで居た。

「へぇ~、学校までの道にこんなにたくさんお店が有ったんだ……アレは……」

私はお店を見て歩いていたが、ある一軒のお店の前で足が止まった。
そのお店のショーウィンドウには硝子で作られた天馬の置物が飾られていた。

「天馬……私の好きだった本に出てたっけ……あの本がきっかけで翔馬と仲良くなったんだよね……天馬…あの時はお友達も居なかったからお友達になりたいって……ずっと思ってたな……四神と天馬か……本気で友達になりたいなんて……神話の中の生き物なのに……本当……夢物語だよね……今は……あれ……私し……誰の事考えてたんだっけ………」

私はその置物を見て何かを考えて居たはずなのに何を考えていたのかが突然分からなくなってしまった。
その時、駅の方から声が聞こえ私は振り返った。

「羽月!」

「え?……………………………翔……馬……?」

私は聞き覚えのある声と姿を見るとモヤモヤが吹っ切れたかのように、一瞬忘れ掛けていた今までの出来事や感情が戻ってきた。
そして私は次の瞬間には、体が勝手に動き翔馬の所まで走っていた、そして翔馬に飛び付き泣いた……

「翔馬!!バカ!!いきなり消えないでよ!!私、凄く心配してたんだから!!もう戻ってきてくれないんじゃないかって…………翔馬は幻だったんじゃないかって!!もう勝手にいなくならないでよ!!」

「羽月…………ごめん、お前がそんなに心配してるとは思わなくて……」

「心配……するよ……本当に消えちゃうんじゃないかって……不安だったんだから……」

翔馬は私を受け止めはしたが抱き締めたりはせず落ち着かせるように優しく髪を撫でてくれた。
それだけでも私は翔馬を近くに感じれる事が出来て幸せだった……私の中に降り積もった雪の様な寂しさが消えていくのが分かった………

「ごめん、ちょっと田舎に用事が有ったからさ……悪かったよ……羽月……もう……勝手に居なくなたりはしないから……今日は家まで送るから……」

翔馬は申し訳なさそうに謝ると私の手を取り駅の方まで歩き始めた。
私は驚きと恥ずかしさで言葉を失ってしまったが翔馬の後をゆっくりと歩き始めた。
翔馬に会ったらもっとたくさん話したい事があったはずなのに中々言葉が出て来なかった。
私と翔馬は駅に着くまで言葉を交わさなかった。
お互いに色々な感情で頭の中がいっぱいになっていたのかもしれない。
私が次に声を掛けたのは電車を待つホームでの事だった。

「翔馬………他の皆には私の電話番号とアプリのID教えたんだけど……翔馬はまだ知らないと思うから……教えておくね?」

「電話?……はっ?ちょっと待て、なんで他の奴に教えて俺には教えてないんだよ!」

「え?そこ?…って、皆と電話番号とか交換した日に居なくなったのは翔馬でしょ!!」

翔馬は私が他の皆に先に番号を教えた事が気に入らなかったのか話しを持ち出すといきなり不機嫌になった。
だが、番号に関しては私も言い返さずには居られなかったので皆と番号を交換することになった理由を
全て話した。
すると翔馬は黙り込んで黙々と番号交換とアプリの登録をしてくれた。

「………岳瑠の奴…寮に戻ったら覚えてろよ………」

「え?今何か言った?」

「何でも無い!!」

「…絶対になんかあるじゃん……」

そんな会話をしていると電車がホームに入ってきたので私は翔馬と一緒に電車に乗った。
翔馬と電車に乗ったのは初めてだったので少し新鮮だけど恥ずかしい気持ちになった。

「羽月の家って、何処で降りるの?」

「あ、えっと、3駅目かな?」

「了解。なんか一緒に電車乗るのって初めてだよな?」

「うん、そうだね…ちょっと恥ずかしいかも……」

私と翔馬は電車の中ではそれ以上話さなかった。
電車は直ぐに私の最寄り駅に着いた。
私と翔馬は電車から降り、駅を出ると相変わらず何も話さず家までの道を歩いて居た。

「あの2階建ての白い家が私の家だよ。」

私は自分の家が見えるとやっと翔馬に声を掛けることが出来た。

「へ~…駅から近いんだな?」

「うん、だから朝はギリギリでも間に合ったりするんだよね……」

「近いからって気を抜き過ぎて遅刻しないようにな?」

「なっ、余計なお世話!!でも、今日は家まで送ってくれてありがとう!時間が有るなら私の家寄ってく?」

私はせっかく送ってもらったのに何もお礼せずに帰すのは申し訳ない気がしたので翔馬に家に寄っていくか訪ねた。

「ん?……あぁ……今日は辞めとく、さっき田舎から帰ってきたばっかりだし……ちょっと疲れたからさ。


「そうなの?疲れてるのに送ってくれたんだ……ごめん、ありがとう。」

「俺が好きでやってる事だから気にすんなよ。じゃあ、そろそろ帰るな?岳瑠に用もあるし。」

「そうなんだ……でも、本当にいいのかなって心配になっちゃうし……疲れてるなら無理はしないでね?……岳瑠くん……?」

私は岳瑠くんの話が出れば首を傾げるも翔馬は何も言わず手を振って駅まで歩いて行ってしまった。
私は翔馬を見送ると家に入った。

そしてその日の夜、岳瑠くんから連絡が来た。
どうやら岳瑠くんはあの後、翔馬にこっぴどく叱られたそうだ。
私は岳瑠くんには悪いと思ったがその連絡を見て少し安心してしまった。
翔馬が本当に帰ってきたんだと………



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