現在進行形で流されている少女

サバ焼き師

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8 しょうじょとかくだい

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「こんな具合でどうでしょう?」

キラが少女に話しかけたのは、最後の竹を持ってきたところだった。さすがに重いので流れないように固定しつつ、海に浮かべた。少女は、いまいちパッとしない大漁を終えた後だった。

「おぉー。いいねぇ、素敵だねぇ。」

力仕事に不向きな少女が、力仕事を品評した。
キラは特にイラッともしていない様子だが、誉められてどこか嬉しそうだ。
 だが、仕事はここからだ。今のは、材料集めでしかない。

「やっぱりこういうのは横に繋げていった方がいいんですかねえ。」
「まあ強度的にもね。紐繋げていくのも、こっちの方が楽。というわけで」
「はい紐。」

キラのてに渡されたのは、紐だった。黒くて少しごつごつしている。しっかりした紐だった。

「これ...。ツタですか?」
「ちょっと違うかな。」

聞かれた少女は特に得意気だった。今まで作ったものを誉めてもらったり、そういう経験は一切ないのだろう。
それはそれは可愛らしい少女の笑顔であった。

「あのミカンの木、あるでしょ?あの木の皮を剥いで、干したやつ。大分頑丈。」

可愛らしい少女はナイフ一本で、ミカンの木の皮を剥いだらしい。
実にワイルドだった。

「おおこんなものが。よくできてますね。」
「師匠に、家を組むときに教えてもらったんだよ。ほら、ここ紐もないから。」
「ありがとうございます。さて早速組みますか。」

改めて、いかだに向き直る。今回、改装を決意したのは、他でもない「家が狭かったから」だ。
しかしいきなり、家の近くに手をつけるのは危ない。バランスというものも考えなければいけないからだ。

「畑の横、ここを拡張するといいかな。二人になって野菜(草)も必要になってくるし。」
「...あぁ、私の分...。」

キラは露骨におちこんだ。
居候の身でありながらはしゃいでいた自分を思い出して、恥ずかしくなったのかもしれない。

「ん?大丈夫だよ!私はなんとかできるから。」
「すみません。なんか、私、お世話になってばかりで...。」

実に堂々とした答えにキラはさらに恥ずかしくなった。
少女は、なんとか「できる」といったのだ。なんとかなるなどと他力本願な言葉ではなくて、たよりがいあるその言葉に任せてみようと思った。

「だからダイジョブだってー。その代わりしっかり働いてね?」
「...はい..!」
「そいじゃ。そっちもって?」
「よいしょ。あぁ、ひもひも。」

慌ててさっきもらった紐を探すキラに、少女もまた声をかける。

「焦らなくていいよ。そんなに流されないし。」

今日の波は静かだった。日によって表情を変える海は、また、こんな表情も見せてくれるのだと感心させられるような顔だった。

「...あの、縛り方、どうすれば、」

困惑するキラ。何もわからないらしく、先輩風をふかせようと少女が出てくるまでに時間はかからなかった。

「ああ私が一回やるよ。みといて」

一瞬の早業だった。

「わかった?」
「いいえ全く」
「あらら。じゃあ一緒にやってみるかねぇ。」

その後、手取り足取りでできたのがこの部分。
きれいにできたのも少女のお陰であった。

「これでやっと一個...。」
「いいや、この竹一本が短いから、一個の半分くらいかな。この列もう一回やるよ。」
「了解です。」

淡々と答えるキラは精神的に参った様子だった。

「なかなか広くなってない?なってるね。」

完成した拡大部分はかなりの広さでキラと少女が寝転がって大の字になれるくらいのスペースがあった。
畑を広くすることで空いたスペースのうちの少しは埋まってしまったが、野菜の収穫量予想もぐんと増えた。
その分土は浅くなったが、生育には影響しないそうだ。

「畑の土流れ防止用の竹まで余って本当によかった。」
「畑も広くできましたし、次は家ですか。」
「家?」

唐突な話の流れに、少女は乗り遅れた。

「具体的には、私自身で私の小屋を作ろうと思ってます。今のは、ちょっと狭い気がしますし」
「はっ、まさかそんなに私と寝るのが嫌だったのか!?私はここまで潔癖というのに!」

意味をやっと理解した少女は必死に弁解する。

「少なくとも私は、初対面でパンツ脱がしてくる人を、潔癖とは言いませんが。」

すぐに破れた。一度やったことはもう取り消せないのだ。それが事故だとしても。

「ねぇ、ちゃんと私のこと好き?」

ふてくされた少女は明らかな泣き真似と、どこかムカつく完璧すぎる媚顔をミックスしていた。

「なんですか面倒くさい彼女みたいな。」
「答えてくれない...。やっぱり私のことは飽きたんだわ!」

ここまでで、キラは扱いを諦めた。
「うう、ちゃんと好きですよ。どっちかっていうと、ご飯くれますし好きですよ。」
「愛してるっていっ」
「わかりました!そんなに分かれたくないならいいです。」

折れたのは、キラの方だった
だいたいここから家を作るとなると相当時間がかかるのは当たり前。

諦めるのが最善と言えた。

「怒ってる?」
「怒ってません!」
「怒ってるじゃん。」

いかだの上にはだんだんと、ゆとりができていた。
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