8 / 10
8 しょうじょとかくだい
しおりを挟む
「こんな具合でどうでしょう?」
キラが少女に話しかけたのは、最後の竹を持ってきたところだった。さすがに重いので流れないように固定しつつ、海に浮かべた。少女は、いまいちパッとしない大漁を終えた後だった。
「おぉー。いいねぇ、素敵だねぇ。」
力仕事に不向きな少女が、力仕事を品評した。
キラは特にイラッともしていない様子だが、誉められてどこか嬉しそうだ。
だが、仕事はここからだ。今のは、材料集めでしかない。
「やっぱりこういうのは横に繋げていった方がいいんですかねえ。」
「まあ強度的にもね。紐繋げていくのも、こっちの方が楽。というわけで」
「はい紐。」
キラのてに渡されたのは、紐だった。黒くて少しごつごつしている。しっかりした紐だった。
「これ...。ツタですか?」
「ちょっと違うかな。」
聞かれた少女は特に得意気だった。今まで作ったものを誉めてもらったり、そういう経験は一切ないのだろう。
それはそれは可愛らしい少女の笑顔であった。
「あのミカンの木、あるでしょ?あの木の皮を剥いで、干したやつ。大分頑丈。」
可愛らしい少女はナイフ一本で、ミカンの木の皮を剥いだらしい。
実にワイルドだった。
「おおこんなものが。よくできてますね。」
「師匠に、家を組むときに教えてもらったんだよ。ほら、ここ紐もないから。」
「ありがとうございます。さて早速組みますか。」
改めて、いかだに向き直る。今回、改装を決意したのは、他でもない「家が狭かったから」だ。
しかしいきなり、家の近くに手をつけるのは危ない。バランスというものも考えなければいけないからだ。
「畑の横、ここを拡張するといいかな。二人になって野菜(草)も必要になってくるし。」
「...あぁ、私の分...。」
キラは露骨におちこんだ。
居候の身でありながらはしゃいでいた自分を思い出して、恥ずかしくなったのかもしれない。
「ん?大丈夫だよ!私はなんとかできるから。」
「すみません。なんか、私、お世話になってばかりで...。」
実に堂々とした答えにキラはさらに恥ずかしくなった。
少女は、なんとか「できる」といったのだ。なんとかなるなどと他力本願な言葉ではなくて、たよりがいあるその言葉に任せてみようと思った。
「だからダイジョブだってー。その代わりしっかり働いてね?」
「...はい..!」
「そいじゃ。そっちもって?」
「よいしょ。あぁ、ひもひも。」
慌ててさっきもらった紐を探すキラに、少女もまた声をかける。
「焦らなくていいよ。そんなに流されないし。」
今日の波は静かだった。日によって表情を変える海は、また、こんな表情も見せてくれるのだと感心させられるような顔だった。
「...あの、縛り方、どうすれば、」
困惑するキラ。何もわからないらしく、先輩風をふかせようと少女が出てくるまでに時間はかからなかった。
「ああ私が一回やるよ。みといて」
一瞬の早業だった。
「わかった?」
「いいえ全く」
「あらら。じゃあ一緒にやってみるかねぇ。」
その後、手取り足取りでできたのがこの部分。
きれいにできたのも少女のお陰であった。
「これでやっと一個...。」
「いいや、この竹一本が短いから、一個の半分くらいかな。この列もう一回やるよ。」
「了解です。」
淡々と答えるキラは精神的に参った様子だった。
「なかなか広くなってない?なってるね。」
完成した拡大部分はかなりの広さでキラと少女が寝転がって大の字になれるくらいのスペースがあった。
畑を広くすることで空いたスペースのうちの少しは埋まってしまったが、野菜の収穫量予想もぐんと増えた。
その分土は浅くなったが、生育には影響しないそうだ。
「畑の土流れ防止用の竹まで余って本当によかった。」
「畑も広くできましたし、次は家ですか。」
「家?」
唐突な話の流れに、少女は乗り遅れた。
「具体的には、私自身で私の小屋を作ろうと思ってます。今のは、ちょっと狭い気がしますし」
「はっ、まさかそんなに私と寝るのが嫌だったのか!?私はここまで潔癖というのに!」
意味をやっと理解した少女は必死に弁解する。
「少なくとも私は、初対面でパンツ脱がしてくる人を、潔癖とは言いませんが。」
すぐに破れた。一度やったことはもう取り消せないのだ。それが事故だとしても。
「ねぇ、ちゃんと私のこと好き?」
ふてくされた少女は明らかな泣き真似と、どこかムカつく完璧すぎる媚顔をミックスしていた。
「なんですか面倒くさい彼女みたいな。」
「答えてくれない...。やっぱり私のことは飽きたんだわ!」
ここまでで、キラは扱いを諦めた。
「うう、ちゃんと好きですよ。どっちかっていうと、ご飯くれますし好きですよ。」
「愛してるっていっ」
「わかりました!そんなに分かれたくないならいいです。」
折れたのは、キラの方だった
だいたいここから家を作るとなると相当時間がかかるのは当たり前。
諦めるのが最善と言えた。
「怒ってる?」
「怒ってません!」
「怒ってるじゃん。」
いかだの上にはだんだんと、ゆとりができていた。
キラが少女に話しかけたのは、最後の竹を持ってきたところだった。さすがに重いので流れないように固定しつつ、海に浮かべた。少女は、いまいちパッとしない大漁を終えた後だった。
「おぉー。いいねぇ、素敵だねぇ。」
力仕事に不向きな少女が、力仕事を品評した。
キラは特にイラッともしていない様子だが、誉められてどこか嬉しそうだ。
だが、仕事はここからだ。今のは、材料集めでしかない。
「やっぱりこういうのは横に繋げていった方がいいんですかねえ。」
「まあ強度的にもね。紐繋げていくのも、こっちの方が楽。というわけで」
「はい紐。」
キラのてに渡されたのは、紐だった。黒くて少しごつごつしている。しっかりした紐だった。
「これ...。ツタですか?」
「ちょっと違うかな。」
聞かれた少女は特に得意気だった。今まで作ったものを誉めてもらったり、そういう経験は一切ないのだろう。
それはそれは可愛らしい少女の笑顔であった。
「あのミカンの木、あるでしょ?あの木の皮を剥いで、干したやつ。大分頑丈。」
可愛らしい少女はナイフ一本で、ミカンの木の皮を剥いだらしい。
実にワイルドだった。
「おおこんなものが。よくできてますね。」
「師匠に、家を組むときに教えてもらったんだよ。ほら、ここ紐もないから。」
「ありがとうございます。さて早速組みますか。」
改めて、いかだに向き直る。今回、改装を決意したのは、他でもない「家が狭かったから」だ。
しかしいきなり、家の近くに手をつけるのは危ない。バランスというものも考えなければいけないからだ。
「畑の横、ここを拡張するといいかな。二人になって野菜(草)も必要になってくるし。」
「...あぁ、私の分...。」
キラは露骨におちこんだ。
居候の身でありながらはしゃいでいた自分を思い出して、恥ずかしくなったのかもしれない。
「ん?大丈夫だよ!私はなんとかできるから。」
「すみません。なんか、私、お世話になってばかりで...。」
実に堂々とした答えにキラはさらに恥ずかしくなった。
少女は、なんとか「できる」といったのだ。なんとかなるなどと他力本願な言葉ではなくて、たよりがいあるその言葉に任せてみようと思った。
「だからダイジョブだってー。その代わりしっかり働いてね?」
「...はい..!」
「そいじゃ。そっちもって?」
「よいしょ。あぁ、ひもひも。」
慌ててさっきもらった紐を探すキラに、少女もまた声をかける。
「焦らなくていいよ。そんなに流されないし。」
今日の波は静かだった。日によって表情を変える海は、また、こんな表情も見せてくれるのだと感心させられるような顔だった。
「...あの、縛り方、どうすれば、」
困惑するキラ。何もわからないらしく、先輩風をふかせようと少女が出てくるまでに時間はかからなかった。
「ああ私が一回やるよ。みといて」
一瞬の早業だった。
「わかった?」
「いいえ全く」
「あらら。じゃあ一緒にやってみるかねぇ。」
その後、手取り足取りでできたのがこの部分。
きれいにできたのも少女のお陰であった。
「これでやっと一個...。」
「いいや、この竹一本が短いから、一個の半分くらいかな。この列もう一回やるよ。」
「了解です。」
淡々と答えるキラは精神的に参った様子だった。
「なかなか広くなってない?なってるね。」
完成した拡大部分はかなりの広さでキラと少女が寝転がって大の字になれるくらいのスペースがあった。
畑を広くすることで空いたスペースのうちの少しは埋まってしまったが、野菜の収穫量予想もぐんと増えた。
その分土は浅くなったが、生育には影響しないそうだ。
「畑の土流れ防止用の竹まで余って本当によかった。」
「畑も広くできましたし、次は家ですか。」
「家?」
唐突な話の流れに、少女は乗り遅れた。
「具体的には、私自身で私の小屋を作ろうと思ってます。今のは、ちょっと狭い気がしますし」
「はっ、まさかそんなに私と寝るのが嫌だったのか!?私はここまで潔癖というのに!」
意味をやっと理解した少女は必死に弁解する。
「少なくとも私は、初対面でパンツ脱がしてくる人を、潔癖とは言いませんが。」
すぐに破れた。一度やったことはもう取り消せないのだ。それが事故だとしても。
「ねぇ、ちゃんと私のこと好き?」
ふてくされた少女は明らかな泣き真似と、どこかムカつく完璧すぎる媚顔をミックスしていた。
「なんですか面倒くさい彼女みたいな。」
「答えてくれない...。やっぱり私のことは飽きたんだわ!」
ここまでで、キラは扱いを諦めた。
「うう、ちゃんと好きですよ。どっちかっていうと、ご飯くれますし好きですよ。」
「愛してるっていっ」
「わかりました!そんなに分かれたくないならいいです。」
折れたのは、キラの方だった
だいたいここから家を作るとなると相当時間がかかるのは当たり前。
諦めるのが最善と言えた。
「怒ってる?」
「怒ってません!」
「怒ってるじゃん。」
いかだの上にはだんだんと、ゆとりができていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる