無色透明な人生から冒険者になります〜色が全ての世界で無色透明なボクも最強になりたい〜

アヴィ丸

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1巻

5話 可能性の色

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 あの後ボクの意識は途切れ、気づいた時にはギルドの管轄である公共医療施設のベットで寝ていた。

 看護師が言うにはボロボロのボクを都市で冒険者をやってる中で最高戦力である赤の最上級ラヴァ・バーミリオンの部下の大男が僕を担ぎこんできたそうだ。

 体はボロボロになっていたが後遺症に残るもが何も無いのは奇跡としかいいようがないと言われた。

 看護師さんはもし瀕死な状態からポーションを応急処置に使ってもらったのなら、後でバーミリオン家からポーション代を請求されるかもね、などと間違っても笑えない冗談を言ってくる。

 日銭で困っているのに逆立ちしたって身売りしたって最上級冒険者の一角が使うポーション代なんて払えるわけが無い…そうなったら村に逃げ帰って畑でもやろうと心の中で強く決心した。

 ギルドに隣接する医療所では冒険者はタダで治療を受けれる。仕事を斡旋するからこその保険のようなものらしい。
 ボクは冒険者としては登録されてないし、身の安全を保証しない契約書も書いたが、バーミリオン家が助けたものを見殺しにするなんてバツの悪いこともできないらしい。
 わざわざ見捨てて殺すなんて医療従事者がするもんですかと、現場の一声もあってボクの治療を快く引き受けてくれた。

 代金は事故ということで無料になり、なんとお昼ご飯には黒麦のボソボソしたパンではなく、消化にいいように穀物を煮立てたものを出してくれた。

(あぁ…体に染み渡るなぁ…)

 優しい温かさが体の中に満たされると気絶直前の温かい包容感を思い出した。あれがポーションの作用だったのかもしれない。
 そしたらほんとにお金が大変なことになってしまう。

 まずこの世界での共通貨幣が、上からゴルド(金貨)、シルバ(銀貨)、カッパー(銅貨)で、、各々100枚で次の硬貨に上がれる。
 ちなみにボクの愛食している黒麦パンはなんと夕方以降半額タイムに向かうと2個で1カッパー。仕送りを考えると1日3個たべても1.5カッパー。破格だ。

 で、問題のポーションはというと安い混ぜ物で10シルバ、最上位の緑の中でも医療に長けた人が作った最高級品などになると10ゴルドとかになるらしい。数字は変わらないのに単位だけが入れ替わる。黒麦パンがいくつ買えるのだろう。

 ボクのこの先の収入はコボルド狩りのサポート程度だ。コボルドの耳は状態にもよるが1枚で2.3カッパーなのでボクは何年かかっても人生をかけてもはらい切れない。
 お願いします、ポーションじゃなくあってくれ…助けてくれたことには感謝しつつ高額請求されない事を祈りつつ、ご飯を食べてまた眠気が襲ってくる。
 支払いがあるかもしれないのは怖かったが、限界な体をもう一度休めた。

 その後の数日間、しっかりとしたご飯を食べ、いいベッドで寝る。血色も体の調子もすこぶる良いボクは、この時だけ顔だけは青ざめていた。
 バーミリオン家の炉の家紋が着いた豪華な手紙には短い文でこう書いてあった。

『助けた方へ
確認したいことがあります。療養中申し訳ないのですが、退院されたらお会いできませんでしょうか』

 イヤイヤイヤナイナイナイ、ボク以外にも人助けしているんだな、さすが赤持ち、あの似非赤剣士とは天と地の差だな、うん。

 ボクはその手紙がボクのものでないことを祈りながら部屋を出ようとする。

 手紙をギルドに返して、本当の受け取り主に渡してもらうよう頼んで帰ろうとしたが、ギルドで療養してる中でバーミリオン家に助けられた運のいい人はボクだけらしい。
 お礼を言ったら村に帰ろう…払えないものは払えない。

 そうは言っても、助けてもらった恩もあるので無下にはできない。
 お金が無いことをアピールして里帰りしようと思います。
 さようなら都市アクリル、まだみぬダンジョン、綺麗な女性に楽しそうなお祭り、妄想の中の強いボク、君には出会えそうもなかったよ…
 とほほと肩を落としながらベットから重い腰をあげる。

 看護師さんにお礼を言い、ギルドの受付嬢にバーミリオン家の場所を聞き向かう。元気なはずの体はいつもよりも重たい。
 村に来た時はあんなに期待を膨らませて軽やかな足取りだったのに、帰る可能性のある今の足取りはとてもじゃないが軽くなかった。
 ギルド自体が都市の中心に近いので少し歩けばバーミリオンのホームはすぐに見つかった。
 大通りを進めば突き当たりに明らかに豪奢なお屋敷がある。

「どうしようどうしょう…ベル鳴らしてもいいのかな…!こんなお屋敷初めてだよ、誰か呼ぶには広すぎるし、タイミングよく誰か出てきてよ…」

 門前のベルの前でうろちょろし、柱の影から屋敷をのぞきこんでいたボクはビックリして飛び上がる。

「ひっ!違うんです何もしてません!呼ばれてきたんです!」

 汗をダラダラと垂らしながら少し声がうわずりながら早口で捲したてる。

「すまん、物陰にいるから見つけるのが遅れた。」

 音も立てずに後ろに立っていた獣人族は優しい声音で迎えてくれた。
 小さな耳と毛深さがあるが整った顔立ちが清潔感を出している。身長は2mは超えているだろう筋肉で膨らんだ体躯もあってこの前会ったミノタウロスに対峙しているようだ。
 緊張しているのに驚かさないで欲しい。何か体の一部が出てしまいそうだ。

「病み上がりに呼び出してすまない。お嬢の意思でな。家とは何も関係ないんだ気楽に着いてきてくれ。」

 ボクは言われるがままに大男について行く。こんなに人としても、強さにしても差があれば少年も一人の男だ。逆らう気すら起きない。とことこと大人しくついて行く。

「自己紹介する時間もなく申し訳ない。内密に招待してるため君がここにいるのはギルドと私しか知らないのだ。」

 内密と言いながら獣人の大男は、堂々と屋敷内を歩く。立派な屋敷なのにまったく人に出会わずに、豪華なドアの前に着いた。大男が人払いをしていたのだろうか。
 人の気配すらも全く感じられなかった。

「あ、あの…な、なんでボクは呼ばれたのでしょうか…」

 おずおずと質問をなげかける。人払いまで済ませて呼びつける理由なんてろくなものでもないだろう。
 今すぐ回れ右して走り出すためにも、ドアをくぐる前に要件を確認しておかなければならない。
 しかし、大男はそんな不安を無視するかのように漠然と怖いことを言い始める。

「お嬢は何か君に違和感を覚えたらしい。その違和感がなんなのか分からないが、最近のお嬢は物に赤を流してよく破裂させている。なにか関係があるかもしれないなら気にとめといてくれ。」

 殺される。しかも破裂なんてむごい方法で。あれ、赤使いってやっぱり血がお好き?
 あの剣士も腕とかちぎれるからなって言ってたし赤の最上級はそれ以上の趣味をお持ち…?

 身の危険を感じながらも大男が関係なしにとドアを叩く。返事はないが男はドアを軽く開けボクを中に入れる。大男抜きで話す内容らしく、ドア前に待機するらしい。
 立派な体の横を通り抜け部屋へ足を踏み入れる。

 バーミリオン家令嬢の護衛がドア前に待機しているなら、些細な粗相でボクの首は無くなるだろう。あの逞しい腕にどうされるのかなんて考えたくもない。

 ミノタウロスから逃げて生き残ったのに、あの猛牛とも力比べ出来そうな大男に殺されるなんてごめんだ。
 ボクは最大限粗相のないように注意を払い、口を開く。

「失礼しま~す…」

 恐る恐る入ったボクはすぐにあるものに目を奪われた。

 それは豪華な調度品でも、ボクの宿の部屋の何個分もの広さでも、壁にかけられるひと目でわかる一流の鍛冶屋が仕立てた長剣でもない。
 窓際に立ちボクをまっていたお姫様だった。

 窓から差し込む優しい光は赤い髪を透かし、宝石のように輝く。赤いを基調とした部屋着はラフなもののはずなのに、着る人が綺麗すぎてドレスのようにも思えてしまう。そんな赤に包まれる体は白いが血色がよく所々赤みがかって見える。

 窓際に佇んでいるだけなのに、どんな豪華な調度品よりも、宝石のように綺麗だと思ってしまった。
 心奪われ立ち尽くしていると目の前の女性がボクに声をかけてくる。

「病み上がりに呼び出してごめんね、ワタシはラヴァ・バーミリオン。無事でよかった」
「ネ、ネスです。ネス・クレアです」

 燃えるような赤に包まれているのにどこかゆったりとした綺麗な声で自己紹介をする。ボクなんかの体を気遣ってくれている。
 ボクもあわてて頭を下げ自分の名前を伝える。

「良かった…何も起きなくて。」

 無事で良かったまでならわかるが『起きなくて』は何か変だ。ボクがキョトンとしていると彼女は呼び出した理由を説明してくれる。

「キミはあの時死にかけてて、手持ちのポーションじゃ応急処置が間に合わなかった」

 ボクは応急処置されてギルドに運ばれたはずだから一命を取り留めた。看護師さんがいうには高級なポーションを使ったのではないかと言っていたがラヴァさんはそれでは間に合わなかったという。

 あれだけのダメージでも走り回り、アドレナリンが切れたら体は限界を迎えたことを思い出したように意識を刈りとる。
 当然ダメージを無視して走り続けた体は警告を無視したことを罰するかのように、しに一直線だったらしい。

「だからキミに少し赤を分けた」

 ん?赤を分けた?気のせいかボクは聞き間違いだと思いたい言葉が聞こえてくる。

「ワタシの赤は最上位だから…ワタシそのものが炎のようなものなの。だから、ワタシの赤が混じれば死ぬことはない」

 さも当然かのようにチートみたいな効果を説明される。赤の最上位まで来ると圧倒的的な火力に物理、と青以外の攻撃が無効、さらに青を受けても時間さえあれば不死鳥のように燃え、治るらしい。

 赤もこれだけ差があると火傷させるくらいの瞬殺された剣士が可哀想に思えてくる。

まぁ、ボクに色はないんだけど…。
 
 そんなことを思ってる間にラヴァさんの話は続く。

「ワタシの赤には少なからず治癒の効果もあるの。だから普通なら熱による過回復に耐えられないんだけど、このまま苦しんで死んじゃうくらいならって…」

 チートスペックを聞かされる意味がようやく分かった。彼女の力の中には炎による再生効果があるからそれで自分を助けた説明をしたかったらしい。

「助けてもらったのはありがたいのですが、耐えられないってどういうことでしょう…」

 ボクは話を聞いてるうちに緊張が解けてきて純粋な疑問を聞いた。

「えっと、それはね…見せた方が早いかな。」

 近くにあった花瓶から葉っぱを一枚とって指先で燃やしてみせた。超高音で燃やされた葉っぱは形も残らず窓から煤を飛ばす。

「今のは葉っぱの断面に赤を流した。燃えやすいとか関係なくワタシの赤はほかの生き物は燃え尽きて、物だとエネルギーが逃げなくて破裂しちゃうの。」

 さっき護衛の大男が話してたことを思い出す。彼女は生き物で試せない分なにか物に赤をこめて実験していたらしい。
 しかし、そうなるとおかしなことがある。

「なんでボクは燃えなかったんでしょう…」

 普通ならボクも燃えて苦しむまもなく順当な死を楽に迎えられていたのだろうが、彼女の賭けは成功したらしい。
 その証拠にボクの体は奇跡的に五体満足ですぐに退院出来た。

「赤の血が流れててもランクが違えばその熱量に耐えきれないのが普通。子供の頃それで父の怪我を治そうとしたことがあって…父は自分より強い赤に喜んでたけど、ワタシの回復は人には使えないって知ったの。」

 ラヴァさんが言うにはどれだけ力をコントロールできるようになっても、人が耐えれるエネルギーの量は決まってるらしく、赤の最上級である自分以外に赤は使えないらしい。

「だから手段がなくて苦しむくらいならどっちみにしろ楽にさせてあげようと思って、ほんの少しだけ赤を傷口にこめたら…
一命は取り留めたみたいだからゼインにギルドまで運ばせたの」

 死にかけながら感じた温かさはポーションじゃなくて彼女の赤だったらしい。あの時のことを思い出すあいだにも彼女の話は続く。

「ギルドに連れてったらキミは無色で冒険者じゃないからここじゃ治療できないと言われたらしいんだけど、ゼインがワタシの頼みを遂行できないのが嫌みたいで無理やり頼み込んだみたい」

ゆったりしている口調で気絶してる間の事の顛末を説明してくれる。

 そして最後に彼女がボクを呼び出した理由はおそらくこれだったのだろう。たった一言でボクの胸は熱くなった。

「えっとね、キミは多分だけど…無色じゃないよ?」
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