無色透明な人生から冒険者になります〜色が全ての世界で無色透明なボクも最強になりたい〜

アヴィ丸

文字の大きさ
8 / 25
1巻

8話 戦い方の色

しおりを挟む
「ハァ!!!」
「踏み込みが甘いぞ!短剣ならなおのこと作った攻撃のチャンスを物にしろ!」

 ボクが戦いながら自身の傷を癒せるようになる頃にはゼインさんの攻撃を捌き、隙を見つけられるようになっていた。
 とはいえゼインさんが攻撃の練習をさせるためにワザと無理な体勢の攻撃を多用してくるからだ。普通に戦えば好きなど見せずに蹂躙されてしまうだろう。

 初めはこれだけでも文字通りボコボコにされたが、何度か回復するうちにワザと隙を作ってくれていることが分かると、その動きを予測することが出来るようになってきた。
 ゼインさんの力任せのわざとの大ぶりをいなすだけでも大変なのに、これよりも更に上があるなんてモンスターに産まれなくて幸せだと思ってしまう。

 色の出力が低いのに大剣を片手で振り回すのはどうなっているのだろう…
 ボクが気を抜いたことを察知した瞬間、大ぶりの攻撃の後、鋭く防御が間に合わない角度から攻撃が飛んでくる。

「読みやすい攻撃が捌けるようになったからって何をボサっとしている!有効打が入るまで終わらないぞ!」

 なぜあの大剣を振り回したあと、懐にはいられても攻撃が当たらないのだろう。黄色の出力も低いはずだからゼインさんの素の反応に近いはずなのに…

 さっきから避け、受け流して懐に入るのだが半歩引かれ、一撃目に使ってない腕をたたんでボクの間に攻撃を滑り込ませてくる。
 大剣の二刀なんていうユニークな武器を使っているのだから小さな相手にも不覚は無いようにしているのだろう。

 ボス相手には剛力の一撃を、群れ相手には二刀の殲滅をプレゼントするゼインさんのスタイルは、これだけ隙を見せられているにも関わらず、隙がないように思えてしまう。

(ほんとに色ほとんど使ってないんだよね…)

 化け物だ…。
 たった一撃入れるまで終わらないならこのボロボロな体をラヴァさんの炎で癒して貰えない。

 そんなの仕事終わりに汗を流せないのと同じだ。

 そう思うと色を使わなくても闘志が燃えてくる。

 短剣を逆手で体の正面に構え姿勢を低くする。姿勢は半身にし、切りおろしからの派生を避ける。
 今日のゼインさんはボクの先生だ。ボクがあからさまな誘いをしてもその意図を組んで攻撃してくれる。
 いつかは駆け引きもやらされるのだろうけど初日はこれくらいとゼインさんが決めているのだろう。

 ゼインさんの優しさに甘え、お望みの右なぎ払いを打ってもらう。
 いつもなら姿勢を低くし、短剣で反らし前に出るのだが、今回は体をめいいっぱい低くし短剣を使わずに避ける。
 ここからの攻撃はないと右の大剣を盾にしながら左の大剣を振り下ろそうと、ゼインさんが右の大剣を止めようとする。

 前に出れなくていい。

 ボクはその場で低い姿勢からめいっぱい踏み込み右大剣の背に蹴りを入れる。

「ほぅ…?」

 ゼインさんが今までにないパターンに興味を示す。
 振り切った大剣を蹴られ、自分の力+遠心力が乗っている剣は止めきれずにゼインさんの体を少しだけ回す。
 止めようとしたが体は素直で脚は踏み込んでおり、上半身が捻れる。

(ここからの攻撃よりボクの方が早い!)

 ゼインさんに甘え、予想通りの攻撃を組み立てられたボクは自分の描くとおりに攻撃しようと、着地後に直ぐに地面を蹴る。

それでも甘かった。

 ゼインさんは色だけでなく自分の素の力までセーブしていたらしい。
 巨大な体躯がねじれた体勢から、ギチギチと筋肉が振り絞られる音がする気がした。
 目の前で大きな体の筋肉が力みより大きく見える。

 瞬間ゼインさんの体が弾ける。

 ボッという空気が弾ける音と共に溜め込んだエネルギーを叩きつけるように、右の大剣を振り切った体勢から撃ち込む。
 ボクの攻撃が脇腹をとらえる前に前傾したボクの体は木刀で叩き潰されるはずだった。
 ゼインさんも死ななければいいと言わんばかりに振り切った一撃は

 なぜか空を切った。

 ボクらの稽古を眺めていたラヴァさんが指を指し、木刀の大剣の柄から先を消す。

 残った柄がボクの鼻先をかすめ、風圧がくる。柄で風圧ってどんな力で振り下ろしてるんだ…。

「それは…死んじゃう。」
「一日ですごい吸収するものですから、つい熱くなりました…。」

 反省しているゼインさんは通常時より一回り小さく見える。
 いくら木刀とはいえあの力で肩から打たれたら…
 赤を使っているはずなのに考えるだけで真っ青だ。
 戦いの熱が一気に冷めるように、大剣が打たれるはずだった場所が冷たくなる。

「すごい頑張ったね。」

 ラヴァさんは稽古中上手く回復できないボクを何度も癒してくれたが、その一言が一番癒された気がする。
 ラヴァさんの優しい炎に包まれながら、寒気がした心まで温められる。

「明日からは駆け引きもやれそうだな。何度も死にかけて赤の回復の仕方を覚えるといい。」

 それからの数日間は過酷だった。
 日に日に攻撃の激しさは増し、ラヴァさんの回復が減る。
 戦闘中に自分で体を癒す。
 心休まる一時がどんどん短くなる。

 おまけに赤の力が濃くないため、傷は治ってもラヴァさんのように体力まで元通りとはいかない。
 戦いながら意識を色に割き、運動の熱と赤で体が熱くなる。

 体力精神力がともに削られ疲弊してきた頃にゼインさんは死ぬギリギリの攻撃を叩き込みにくる。
 なんでも、

「瀕死の時こそアイデアが浮かぶ。死なないために技を覚えるなら死ぬ間際を何度くぐり抜けるかだ。」

 らしい。
 さすが一流の冒険者。死地で磨いてきた技を教えるためには、生徒をセルフ死地に叩き込むらしい。

 ダンジョンに捨てられ帰ってこいと言われないだけマシなのだろうか。
 今日の死地コースは、高速の右突きを左に避ける、背中側を取るが体を回転させ左の大剣を斜めに振り下ろすのを軌道に合わせて跳躍して回避。短剣を握る拳と左手をつきバク転のように反動を使って少し飛ぶ。
 攻撃と防御のパターンが増え選択が早くなる。

 飛んだことでゼインさんの次の攻撃よりも早く背中の真後ろにピッタリとつく。
 ゼインさんが視界外に消えたボクを嫌って右の大剣を横なぎ。

 刀身を足場にさらに跳躍。またバク転に近い動きでゼインさんの横なぎ後の低い位置の左肩に手を付き体をたたむ。ボクの脚が空中から振り下ろされる。
 しかし、ゼインさんは横なぎの瞬間に視界から消えたボクが自分の肩を支えにしてることに気づくと、肩を下げ左脚を軸に横なぎの勢いのまま右の回し蹴り。

 肩が低い位置にあったのも次の攻撃モーションだった。
 伏せて避けるボクを警戒しての下げた肩から振り抜かれる下段横なぎのおかげで体勢が崩れたと思ったが、ボクが甘えた考えをしている時にはもう次の一手を打っていた。

 脇腹に突き刺さった回し蹴りは落ちてきている小柄なボクの体を横に無理やり飛ばす。
 体内の空気が無理やり外に押し出される。
 めり込んだ踵はボクの体を簡単に曲げる。数m飛んだ先で柔らかい草の上を何度も転がる。

 息の仕方が思い出せず、しばらくかわいた空気を吐き出すだけだ。反射的に回復を始め内蔵、折れた肋、内出血を順に燃やしていく。
 外まで治る頃には息も落ち着いたが激しい戦闘後のボクは芝生に倒れ込んだままだ。

「稽古は終わりにしよう。私との戦闘ばかりでは大剣相手ばかりの癖がついてしまう。もう君の回復力なら簡単にはやられないだろう。
明日からは私の仕事のダンジョン攻略の手伝いをしてもらう。」

 ゼインさんの激務のひとつであるダンジョン攻略のお供。マンツーマンで死にかけるまで戦うのと、ダンジョンでゼインさんの激務に付き合うののどちらが良いのかなんて…

 真っ白な頭では判断できなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった

竹桜
ファンタジー
 1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。  何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。  2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。  ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。     1周目と2週目で生きていた世界で。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...