迷宮のすゝめ〜現実世界に生成されるリアルダンジョンで働きます〜

アヴィ丸

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8話 ダンジョン

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「よし、だいたい2階は見終わったか。反対のビルはホームに降りた後様子を見ながら探索に行こう」
「2階が大人しいならB1でボスが湧いてる可能性が高くなった。ホームに降りたら直ぐに一度反対のビルにぬけたい」

 源さんは1階のホームエリアも先に見るべきだと言っている。もちろんそれは大事なのだが、2階を半分残しているせいか、それとも10年で培った感覚の警報なのか。俺はなぜだか嫌な予感がしていた。

「勇が言うなら先に2階を済ませようか。1階のホームは半分程度探索したあと対面の上り階段からビルを移る、いいな!」
「「「はい!」」」

 B1を探索してから2階に上がる。2階を後回しにするという不安を拭えたのはでかい。
 何もいないビルは俺の足音とハンマーの音、心臓の音をそれぞれ爆音で響かせているかのような静けさだった。

「よし、では端の16番線から降りて半分の探索を済ませる、隊列はそのままで降りて安全の確認が出来次第、1ホームに2人ずつで簡単なマッピングをしよう」

 確かにこれほど静かなら敵はB1の空間に生まれただろう。しかも新宿駅地下の2m数十cmの高さの天井では大したモンスターは生まれていないだろう。
 ボスクラスの化け物に出くわす危険が少ないのは朗報だが、B1で集団発生していたり、子周りの効く特殊なやつでも厄介だ。

 まぁつまり何が来てもただの人間の俺には厄介極まりないってことだ。
 
「行くで勇」
「あぁ」

 八木がぼーっとしている俺に丁寧に声をかけてくる。その声で妄想は終わりにして後に続く。

「階段も鉱石が張ってて通り辛いですね⋯」
「通路はダンジョンの構成的にも敵がわかないからな。律儀なダンジョンの構造的に仕方ないだろう。取れるものは取っておけ、新宿のダンジョンなんでレアだからな」
「相場いくら位になりますかね⋯」
「宝石みたいな価値がないのは残念だよな⋯企業しか買い手がいないことを考えてもgで100あたりじゃねぇかな⋯」
「難易度次第ってところですかね」

 口々に鉱石の値段を査定しながら腰の試験管の様な装備に削り落としていく。俺たち調査員は塊を持ち帰るのではなく、削った粉を持ち帰り結晶構造や通電性、耐熱、耐延性など様々な観点から物質を研究し、特徴が揃えば買い手となる企業がオークションをする。

 そこで決まった値段がその鉱物の価格となり、そのなかの1割ほどを受け取れる。
 俺ら調査員の大きな稼ぎのネタだ。

「そろそろ1階だ、総員警戒態勢。何も見落とすなよ」

 ホームが横並びになる1階には大きな空間が生まれる。普段電車に乗る時にはそのホーム無いしかない空間がダンジョン化すればたちまちひとつの大きな空間だ。ホームドアが低めに遮るだけの空間はボスが生まれるのに適している。

 それなのに俺たちはボスが生まれるのはB1の可能性が高いと踏んでいた。それはダンジョンの構造に起因する。
 ダンジョンとは本来、ラストにボス部屋があり特別な報酬があったり出口になってたりする。少なくとも入口がラスボスだったり道中にラスボスを配置しないのだ。

 先頭の空気が変わる。源さんの一声で閉めた空気は一気に冷えきった。

「おいおい、今回は迷宮の王かよ⋯」
「新宿駅だからってこれはシャレにならねぇぞ⋯」

 大きくしゃがみこみ隊員の間から覗き込んだ。迷宮の王⋯ミノタウロスがホームの中心あたりで斧を地面に突き立て仁王立ちしていた。
 それを目撃した先頭の源さんはつぶやく。

「総員⋯警戒レベルを二段階上げろ」

 高確率での死を覚悟しろと源さんが嫌いな言葉を吐いた。
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