秘密の花園で会いましょう【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 美香が思わず告白してしまった事で、拓真が美香に覆い被さる様に、顔を近付けて来ていた。
 しかし、美香は咄嗟に拓真を押し戻す。

「ま、待って下さい………は、話は………まだ……」
「……………ちぇっ……そうだったな………」

 あからさまに残念そうな顔を拓真にされたが、美香にはまだ話さなければならない事がある。
 拓真もまだ聞き出したい事でもあるから、キスを仕掛けるのを止めてくれた。抱き締める腕はそのままで、拓真の温もりが美香に滲み渡って来て、いつの間にか美香は震えが止まっていた。

「…………私は………兄が建てた家に住まわされています」
「1人暮らしだろ?」
「…………………ですが………実家は会社への通勤が不便で、兄が建てたんです………
「……………何でそんな事迄」
「……………私と結婚する為、て言ってました………」
「兄妹だろ!」
「……………はい……私はだと思ってます………兄妹になったあの日から今でも………」

 兄と言うのも烏滸がましいぐらいだが、戸籍上では兄であるし、その呼称しか思い付かない。兄にしたくないが、兄と呼ぶのは克也を名前で呼びたくないからだ。
 美香はポツリポツリと、克也の意図を拓真に話し、義父の克也への仕打ちや改善策で今の美香がある、と話した。

「…………悪いが、お前の親父さん間違ってる」
「…………だと思います………でも、両親が離婚して、それぞれ別に暮らしていても、兄なら私を追い掛けて来るでしょう………ストーカー規制法では今でこそ厳しくなりましたが、当時は厳しい物では無かった………まだ弟も産まれてなくて、義父の会社を兄に任せたい、と思ってたんだと思います」
「だとしてもだな………間違ってる」

 美香も拓真が言いたい事は分かっている。それでは美香を完全に守れてはいない。

「義父は………私を母の籍から完全に抜きました」
「ん?どういう事だ」
「除籍された私の戸籍は、義父の養女となってます…………なので、兄が私と結婚するには、両親が離婚すればそれで良い、とはならないんです。義父の承認も法的措置も複雑にした事で、兄の目論んだ事…………私との結婚は簡単には出来ないという事………そして、義父は兄が大学卒業後、義父の会社の海外事業部に配属させ、日本への帰国は年に数回しかさせない事で、私を守ってくれています」
「じゃあ、兄さんは今も海外か………」
「……………多分………」
「多分?」

 これからが、一番美香が恐れている事だ。
 再び口が重くなる美香は、拓真に抱き締められていても、唇を噛み締め、手に汗をかいていた。

「私が…………兄の家に帰っているのは理由がまだあるんです」
「うん………教えてくれ」

 この際だから聞ける事は聞いておこう、と真剣な目で美香は拓真に見つめられていた。

「海外に居ても、私が兄に監視されている、という事です」
「は?…………セキュリティチェックでもしなきゃ行動なんて………」
「してるんです………会う度に、私の持ち物にGPSを仕込み、スマホにもGPS機能でチェックされているんです…………だから、外泊なんてしたら…………兄は帰って来る………」
「なんて執着心なんだ………」
「…………以前、私は大学在学中、マンションで1人暮らししてました。勿論、兄には内緒で………実家には帰らずにいたので、確認の為だけに帰国してくる人なんです。マンションのロビーで大喧嘩し、住民に通報されてもこういう時はで済まされてしまいます。何度も繰り返されては、義父にも迷惑が掛かるので、義父も私を監視させていて………兄がもし帰国してきたら、直ぐに保護出来る様に、と」

 その時その時で、義父は対処してきてくれていた。本当の娘でもない美香を、連れ子ではなくにして迄、大学迄進学させてくれたし、生活には困らない様に、援助も惜しまない人なのだ。

「…………そういう事か……だが、やはり間違ってると思う………」

 性的虐待は犯罪で、それを隠している。

「義父の立場を優先したに過ぎません。兄が警察に関わってしまったら、義父の顔に泥を塗るでしょうし」
「兄さんは、来ると思うが、そうなった場合兄さんが美香にする行動は何だ?」
「っ!…………そ、それは………」

 美香は吃る。最悪な事を考えてしまうからだ。

「言ってくれ………俺に美香の事を関わらせてくれ」
「だ、駄目です!そ、それは拓真さんに迷惑が………」
「好きな女が、恋人にしたい女が悩んでて苦しんでるのが分かるのに、俺は何も出来ないってのか?俺は冗談で言ってるんじゃないんだ………お前は親父さんを頼るだろうが、それは間違ってるって分かってるだろ!俺を使え!知恵だって避難場所だってあるんだ!」
「…………うっ………助けて……下さい……拓真さ………」
「あぁ、助けてやる。だから教えろ、兄さんの行動パターンを」

 美香は箍が再び外れ、気が付けば拓真にぶち撒けていた。
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