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しおりを挟む拓真のポストは1つではない。
東條の重要取引先の国は先進国であるアメリカ。このアメリカのニュースを扱うテレビ局、SNS、そしてアメリカだけじゃなく、時差により朝のニュースに速報が流せる様に、ポチポチと拡散とリークをしている。
しかも、拓真が使うアカウントは海外アカウントで、別の裏アカウントを幾つか通じて、流したので、早々に見つける事は出来ず、尚且つ見つけた時点で拡散されているので、元を消しても遅いのだ。
「全て奪われやがれ」
拡散具合を監視しつつ、拓真は時計を確認し、海外ニュースに流せる様に情報を送っている。
東條の裏取引を含め、癒着や横領情報を表に出せば、日本では潰されかねなくても、海外からのリークならば、揉み消しは一気に難しくなる。しかも、事実確認を取る前にSNSで拡散されているのならば、フェイクニュースの可能性もあっても、流してしまうニュース番組も数打てば当たるのだ。
「拓真さん、お父さんを恨んでやってるんですか?」
「恨み?………それは無かったな………史人の様に思った事もあったが、それじゃあ足掻いて終わりそうだったし、知らない親父がどんな人間かを調べていく内に、あの記事の内容に行き着いた…………それが記者になろうと思ったきっかけだが、調べれば調べる程、国民を欺くアイツが許せなかっただけで、親子の情も無いよ………恨みもね」
「記者として、てなんですね」
「そうだな………にしても、スマホ鳴りっぱなしだが………」
電話を切った拓真だが、マナーモードにしておらず、ずっと非通知で鳴りっぱなしだ。それは恐らく、松山なのか東條なのかだろう。
「非通知ですし、留守番電話の録音も多くなってます」
「放っておけよ………多分、直ぐに収まるさ」
「そうでしょうか………」
「事実確認の国際電話も掛かって来るだろうから、その対応に追われて、夜眠れなくなるだろうなぁ………で、日本の朝のニュースで大騒ぎ間違いない」
「新聞も1面差し替え、て所ですね………若しくは号外…………す、凄い閲覧数……拓真さんにもコメント求められてますよ?」
「コメント受け付けない、て設定にしてある………あと、朝になったらもう1つ爆弾投下もするけどな………そっちは、コメント書き込み可にしたから、炎上は止まらないだろう」
淡々と、パソコンを操作し、拓真の賢さに感心が治まらない美香。
国立大学卒業は伊達ではなかった、と言わざる得ない拓真に、出来ない事は無いのでは、と思えてくる。
「本当………拓真さん、凄いです………私は頭良く無いから、何やってるかさっぱり分からないんですけど…………」
「え?美香も国立大学卒業だったろ?」
「県立並みの偏差値の底辺国立大学ですよ、私は…………国立だろうと、県立だろうと………何を学ぶかで変わるじゃないですか」
「そうだな…………人間は学歴で判断するべきじゃないよな………だから、あの親父とは話が合わん、と今更ながら思った。俺と同じ大学卒業らしいが」
「学ぶ事を間違えれば、悪い方へ道に逸れる証明になったんですね」
「なかなか辛辣な意見だな、美香………そういう所、俺は気に入ってるぞ」
「ふふふ………何か手伝える事ありますか?」
「いや………俺は徹夜でコレを管理しなきゃならないが、美香は寝てて良い…………肌が荒れるぞ」
拓真だって、睡眠時間を削るのは疲れるだろう。それを寝ずの番をし、尚且つ日本の朝のニュースをチェックする筈だ。
「寝れない日が続きます。明後日には初出社なんですから、無理して欲しくないです」
「起きてても、明日の朝9時ぐらい迄さ………後は勝手に独り歩きする」
「私も付き合います。仮眠取りながら2人で………ね?」
結局、2人共そんな話をしながら、朝迄起きてしまった。
日本の朝からのニュースは大騒動で、発信源が何故アメリカからなのかを、議論していた評論家も多かった。だが、その一方でよく調べられている、との評価も高く、それには拓真も満足気にしていたのには、美香も嬉しくて微笑んだ。
「さて………もう1発………」
もう1つの爆弾投下は、東條の性癖問題。上は27歳から下は5歳迄の隠し子が16人居るというもの。
拓真には同じ歳の兄、史人と妹が腹違いで居るという事実があった。勿論、父親は東條で母親は全員違う。産まれても認知はされず、現在の愛人関係の女は8人。妊娠中の女も居るという、次期総裁の呼び声高い政治家に有るまじき行為のスクープに、支持率は下がって行くだろう。特に女性からの支持率は底辺となり得る。
その記事は、拓真本人の名で拡散し、その拓真が東條の2人目の息子だと明らかにした。息子本人の言葉は信憑性もあり、アメリカからのスクープ記事で大打撃直後の度重なるスクープで、何処のテレビ局も、新聞社も出版社も、揉み消す気は無いとの判断を拓真はしていた。
総裁になる道を潰し、追い打ちを掛けられた東條は対応に追われ、拓真どころではなくなったのだ。
そして、正妻の子、大哉についても将来を絶たせてしまい、地盤を継がせる事も頓挫するに違いない。
政治家には女性スキャンダルや汚職、犯罪に関与した汚れた記事はご法度。後は、警察が癒着や横領を取調べれば良いだけの事。刑務所に入れられようが、拘置所に入れられようが、拓真には如何でも良い事だった。
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