秘密の花園で会いましょう【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
52 / 67

51

しおりを挟む

 拓真のポストは1つではない。
 東條の重要取引先の国は先進国であるアメリカ。このアメリカのニュースを扱うテレビ局、SNS、そしてアメリカだけじゃなく、時差により朝のニュースに速報が流せる様に、ポチポチと拡散とリークをしている。
 しかも、拓真が使うアカウントは海外アカウントで、別の裏アカウントを幾つか通じて、流したので、早々に見つける事は出来ず、尚且つ見つけた時点で拡散されているので、元を消しても遅いのだ。

「全て奪われやがれ」

 拡散具合を監視しつつ、拓真は時計を確認し、海外ニュースに流せる様に情報を送っている。
 東條の裏取引を含め、癒着や横領情報を表に出せば、日本では潰されかねなくても、海外からのリークならば、揉み消しは一気に難しくなる。しかも、事実確認を取る前にSNSで拡散されているのならば、フェイクニュースの可能性もあっても、流してしまうニュース番組も数打てば当たるのだ。

「拓真さん、お父さんを恨んでやってるんですか?」
「恨み?………それは無かったな………史人の様に思った事もあったが、それじゃあ足掻いて終わりそうだったし、知らない親父がどんな人間かを調べていく内に、あの記事の内容に行き着いた…………それが記者になろうと思ったきっかけだが、調べれば調べる程、国民を欺くアイツが許せなかっただけで、親子の情も無いよ………恨みもね」
「記者として、てなんですね」
「そうだな………にしても、スマホ鳴りっぱなしだが………」

 電話を切った拓真だが、マナーモードにしておらず、ずっと非通知で鳴りっぱなしだ。それは恐らく、松山なのか東條なのかだろう。

「非通知ですし、留守番電話の録音も多くなってます」
「放っておけよ………多分、直ぐに収まるさ」
「そうでしょうか………」
「事実確認の国際電話も掛かって来るだろうから、その対応に追われて、夜眠れなくなるだろうなぁ………で、日本の朝のニュースで大騒ぎ間違いない」
「新聞も1面差し替え、て所ですね………若しくは号外…………す、凄い閲覧数……拓真さんにもコメント求められてますよ?」
「コメント受け付けない、て設定にしてある………あと、朝になったらもう1つ爆弾投下もするけどな………そっちは、コメント書き込み可にしたから、炎上は止まらないだろう」

 淡々と、パソコンを操作し、拓真の賢さに感心が治まらない美香。
 国立大学卒業は伊達ではなかった、と言わざる得ない拓真に、出来ない事は無いのでは、と思えてくる。

「本当………拓真さん、凄いです………私は頭良く無いから、何やってるかさっぱり分からないんですけど…………」
「え?美香も国立大学卒業だったろ?」
「県立並みの偏差値の底辺国立大学ですよ、私は…………国立だろうと、県立だろうと………何を学ぶかで変わるじゃないですか」
「そうだな…………人間は学歴で判断するべきじゃないよな………だから、あの親父とは話が合わん、と今更ながら思った。俺と同じ大学卒業らしいが」
「学ぶ事を間違えれば、悪い方へ道に逸れる証明になったんですね」
「なかなか辛辣な意見だな、美香………そういう所、俺は気に入ってるぞ」
「ふふふ………何か手伝える事ありますか?」
「いや………俺は徹夜でコレを管理しなきゃならないが、美香は寝てて良い…………肌が荒れるぞ」

 拓真だって、睡眠時間を削るのは疲れるだろう。それを寝ずの番をし、尚且つ日本の朝のニュースをチェックする筈だ。

「寝れない日が続きます。明後日には初出社なんですから、無理して欲しくないです」
「起きてても、明日の朝9時ぐらい迄さ………後は勝手に独り歩きする」
「私も付き合います。仮眠取りながら2人で………ね?」

 結局、2人共そんな話をしながら、朝迄起きてしまった。
 日本の朝からのニュースは大騒動で、発信源が何故アメリカからなのかを、議論していた評論家も多かった。だが、その一方でよく調べられている、との評価も高く、それには拓真も満足気にしていたのには、美香も嬉しくて微笑んだ。

「さて………もう1発………」

 もう1つの爆弾投下は、東條の性癖問題。上は27歳から下は5歳迄の隠し子が16人居るというもの。
 拓真には同じ歳の兄、史人と妹が腹違いで居るという事実があった。勿論、父親は東條で母親は全員違う。産まれても認知はされず、現在の愛人関係の女は8人。妊娠中の女も居るという、次期総裁の呼び声高い政治家に有るまじき行為のスクープに、支持率は下がって行くだろう。特に女性からの支持率は底辺となり得る。
 その記事は、拓真本人の名で拡散し、その拓真が東條の2人目の息子だと明らかにした。息子本人の言葉は信憑性もあり、アメリカからのスクープ記事で大打撃直後の度重なるスクープで、何処のテレビ局も、新聞社も出版社も、揉み消す気は無いとの判断を拓真はしていた。
 総裁になる道を潰し、追い打ちを掛けられた東條は対応に追われ、拓真どころではなくなったのだ。
 そして、正妻の子、大哉についても将来を絶たせてしまい、地盤を継がせる事も頓挫するに違いない。
 政治家には女性スキャンダルや汚職、犯罪に関与した汚れた記事はご法度。後は、警察が癒着や横領を取調べれば良いだけの事。刑務所に入れられようが、拘置所に入れられようが、拓真には如何でも良い事だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

突然婚〜凄腕ドクターに献上されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
突然婚〜凄腕ドクターに献上されちゃいました

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

逃げても絶対に連れ戻すから

鳴宮鶉子
恋愛
逃げても絶対に連れ戻すから

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

社畜、やり手CEOから溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
社畜、やり手CEOから溺愛されちゃいました

処理中です...