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プロローグ
ゲーデル国内、片田舎の街に評判の美少女が今日も父の仕事を手伝い、商品を店に並べている。
「父さん、今日の仕入れ分これで終わり?」
「ああ」
普段からそんな会話を朝からしていた少女、メリッサは今日この日12歳になる。
「良い天気ね、今日も…………あんな夢見なきゃ最高の日なのに……」
「何か言ったか?」
「…………何でもない」
いつものように、いつもの日常。それがこの田舎町のいつもの光景。何も変わらない、と思っていた。店番を頼まれたメリッサは、来るお客の対応しては他愛のない会話をし、のんびり過ごしていた。
「…………何か、私欲求不満なのかな……好きな人も居ないし、あんな恥ずかしい夢見るきっかけなんてない筈なのに……」
夜中、メリッサが見た夢、それは房事の夢だった。知らない男数人に囲まれ、前と後から抱き締められた、卑猥な姿。今の年齢より大人びてはいたが、ビスチェやガーターベルトを着たままやらしく悶えた姿が鮮明に残っている。メリッサはまだ処女だ。だから、房事がどういうものかという理解も乏しい。
「メリッサ」
「………あ、お帰り、父さん…………お客様……の割に……は……」
「ご苦労だったな、エンゲルベルト」
「……あぁ」
口数が元々少ない父が、国の兵隊達を誘導する様にメリッサの前にやって来た。すると、全員がメリッサの前に跪く。
「お迎えにあがりました、メリッサ王女」
「……………は?………はい?」
「参りましょう、母上様が待っております」
「は?………母上?………ちょっと!父さん!どういう事!!」
全く訳が分からず、如何したんだ、まだ夢の続きか?ドッキリか?と周辺を見渡すが、街中の住民は『うんうん』と嬉しそうだ。『やっとか』や『めでたいめでたい』と迄言う。
「貴女様はゲーデル国女王、メリベル様の第一子メリッサ王女にでございます。本日12歳になりましたので、お迎えにあがりました。この街の民衆は、メリッサ王女の警護にあたっていた隠密兵、お気になさる事はございません」
「いやいやいやいや!!おかしいでしょ!私、王女?はぁ?しがないクソ親父の店の看板娘だよ!……………と、父さん?」
父と思っていたエンゲルベルトもメリッサの足元で跪いている。
「紛れもなく、貴女様はメリベル女王の第一子メリッサ王女です」
「………………どうなってんのぉ!!!誰か嘘だと言って~~~~~!!」
「メリッサ様、パニックになられとるぞ?」
「お忘れのようだな、2歳迄王宮に住んどったのに」
「2歳じゃ忘れるわ!」
「ははははははっ!!」
街中の人達から笑いが漏れる。見守ってくれていたのだと分かったのは、もっと後になるのだが、メリッサは笑われたショックを受けていた。
「一体何なのよ~~~~~!!」
小さな片田舎で1人発狂する中、町民達はケラケラと笑い、メリッサは馬車に押し込まれ、それを送り出した直後、町民達は散り散りになり忙しなく馬車を用意し、荷を積み込む。
「さて、取壊すか」
「女子供は先に行け、男衆は警備以外は町を跡形も無く壊せ!」
大槌を持ち抱えた、男達は次々と家を取り壊し、家畜達と共に住んでいた町を跡にしていったのは数日後。更地になった土地はまた何れ木々が生い茂るのを待つだけとなる。
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