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結婚の儀の前に新たな婚約者
メリッサが、あと3ヶ月で16歳になる頃、母メリベルと養父エンゲルベルトに呼び出された。
「…………あ……」
「お久しぶりでございます、メリッサ様」
「お母様………?」
「呼び出したのは、新たな婚約者候補が現れてな………1度会ってみてはどうか、と」
メリッサとフェルドマン、カイエンがメリベルの執務室に入り伝えられた言葉に少し驚いた。あと3ヶ月で結婚の儀を迎え、準備もしてきている。新たに婚約者を迎え、婚約の儀の予定も組まなければならないかもしれないのだ。
「結婚の儀の後、ですか?」
フェルドマンが、手帳を取り出す。スケジュール管理は全てフェルドマンが行うからだ。
「いや、その前でどうか、とな」
「父さん………て呼び方以外知らないから聞きますけど、何故この人が?」
メリベルの言葉に、メリッサが口を挟む。もう会う事はない、と言われて約3年、実際に会う事は無かった彼が、再び姿を見せたのだから。10年育てて貰った恩もあり、そっちの方が気になってしょうがない。
「エンゲルベルトは私の元夫だ………夫の任を解き、メリッサを育てたいと言って、育てて貰った………今、再び私の夫に戻ってくれている」
「「…………は?」」
メリッサとフェルドマンは同時に声を発する。お互い見合い、またエンゲルベルトを見た。
「黙っていてすまなかったな………メリッサ……フェルドマン……だったか?モートン・ゲルニカと12歳になる前にメリッサに会いに街に来た……」
「は?……………モートン!!私に会いに来た事あるの!?」
「…………な、何故貴方が!」
「訳があるのさ」
メリベルがメリッサを産み、2歳になる迄夫の内の1人が育てる事になり、それがエンゲルベルトだという。一旦、夫では無くなり、本人の希望があればまた夫に戻る事も可能なのだという。
「な、何番目の夫なの?」
「6番目だ………幼馴染でな……育った街も一緒だった…………で、話を戻すが……メリッサの育った街の同世代の異性から、夫を選ぶ事が出来、今1人お前の夫になりたい、と名乗り出た者が居る…………お前さえ良ければ、婚約者になり夫となるが………会ってみるか?」
「誰ですか?」
「フェリクス・ポートフォリオ………覚えているか?」
「フェル!?…………何で彼が!」
「今、ゲーデルベルクに居る……学者をしている」
メリッサの顔が嬉しそうだ。その表情はフェルドマンもカイエンも嫉妬しそうだが、メリッサの夫になる相手になりそうなら、フェルドマンは会ってメリッサに合うかを確認が必要だった。
「会う!フェルに会いたい!」
そうして、会う予定を決めたフェルドマンは、メリッサの勉強部屋にフェリクスを呼んだ。メリッサは断固として、普通のドレスがいい、と言い張り、部屋で婚約者達と共に待つ。
コンコン。
「はい………」
『フェリクス・ポートフォリオです』
フェルドマンが第1夫になる者として、フェリクスを向かい入れる為に扉を開ける。フェリクスは、緊張もせずクールな印象の美青年。学者だという話だが、知的というより世あたり上手そうな軽い印象だった。
「どうぞ………メリッサ王女が中に」
「失礼します」
メリッサは、フェリクスを見ると駆け寄って行く。しかし、ゲルニカに引き止められた。
「待て、メリッサ!王女らしく!」
「…………いいじゃない……幼馴染に久しぶりに合うのに……」
「それでも!」
「……………メリッサ……久しぶりだね」
「フェリクス………元気だった?」
幼馴染のフェリクスは、メリッサにとって初恋の男の子だった。メリッサの4つ年上でお兄ちゃん的存在。明るく社交的な印象だった男の子で、人気があった人が、メリッサの前に居る。社交的な面は目の前に立つフェリクスとは面影は無いが、顔はフェリクスだ。
「あぁ…………あの後、ゲーデルベルクに引っ越して、メリッサの事を聞いたんだ。王女だと知ったのはその時さ………好きな子と会えなくなって、落ち込んだんだぜ?」
「…………好きな子?………またまたぁ!フェルの周りはいつも女の子ばっかり囲まれてたじゃないの……本命は誰だ、ていつも噂話ばっかりで………」
「あんなのは取り巻きに過ぎないよ………だが、君の親父さん……エンゲルベルトや周りの大人達に釘刺されて、あれ以上近付けなくてさ」
メリッサが育った街は、メリッサの為だけに作られた街。大人達は警護の兵士達とその家族。フェリクスの父もエンゲルベルトの部下の1人だった。子供達にメリッサの立場を隠したまま、10年の歳月を幼馴染として過ごさせた。理由も分からず引っ越しし、理由を知った時は既に王女として城に住み、夫を迎える為の準備をしていると聞かされた。
「…………他の子達は?会ってるの?」
「まぁ、何人かは………メリッサの事はもう皆知ってる筈だ………夫になりたい、て奴も何人か居たけど、俺が勝ち取った」
「…………勝ち取った?」
「そう、勝ち取った………学問、剣術、体技の試験があってその全てにおいて、成績が良かった幼馴染が1人選ばれ、夫になる権利を与えられる………結婚の儀の前に俺が決まったんだ」
「…………な、何で幼馴染の中から?」
メリッサだけでなく、婚約者達は初めて聞くような内容で、不思議そうにフェリクスを見つめる。
「夫となる者達の中で気心知れた者を1人は居る事が決まりらしくてね、幼馴染から選ばれる………それは兄弟姉妹が多い家系等は関係ない……女王として王女としての役割から逃げたかった時の支えの役割になるのが俺……あ、勿論、房事は参加するけどね………第1夫のフェルドマンが知らないのは、女王であるメリベル陛下がエンゲルベルトと決めた事なんだ………幼馴染の中から1人選ぶのは、親である王が決めるらしい」
「陛下が………」
「メリッサ………以前、襲われたろ?」
「!!………う、うん」
「そういう時に縋れる様に、と夫の中でも昔から知っている者が居た方がいいじゃないか、とね」
カイエンの兄、ラシードから襲われた時は、メリッサも切り替える事が難しく、王女の立場を投げ出したかったし、育った環境の友達達に会いたかった。それをフェリクスが請け負うというのか。メリッサは婚約者達に縋れていない、泣きたくても4人の前で泣いたのはあの日だけ。その後は、一次避難した部屋で1人で居る時だけだったのだ。
「……………あ……」
思い出して、メリッサは涙を溢す。すると、フェリクスは両手を広げ、メリッサに聞いた。
「泣くか?メリッサ」
「……………うん……」
メリッサはフェリクスの胸に飛び込むと、大きな声で泣き叫ぶのだった。
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