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フェリクス・ポートフォリオ
「あぁ………スッキリ!」
「メリッサ………大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫……ごめんね……フェルドマン達に、心配掛けたくなかったから……」
思い切り泣いてスッキリしたメリッサ。フェリクスの存在が大きなものだったらしく、フェルドマン達は面白くはなさそうだ。
「甘えていいんですよ、メリッサ………私達にも」
「そうだぞ?心配してたんだし、弱い所があっていいんだ」
「頼りになりませんか?メリッサ」
「そうだよ……確かに私はこの中では若輩者だけど………」
それぞれの言い分が分かるから、メリッサは頼らなかったのかもしれない。フェルドマンは責任感が強い人だから、ラシードに警備を破られ、一番悔しい思いをしていたに違いないし、ゲルニカとオルサガの部下達が被害者になり、隊長としての不甲斐なさを思っていた筈だ。
「だから、ごめんね、てば………夫として信頼してるけど、甘えてこなかったな、て今気が付いたんだもん」
「ただ、俺は幼馴染でメリッサの性格を知ってるからやれただけ………幼馴染じゃなきゃ俺だって無理だと思う………メリッサは自分の痛みは抱え込むからな」
「………フェルは、そういう事よく見てくれてたもんね……」
「そんだけ、好きだったんだよ………告白も出来なくて、諦めるしかなくてむしゃくしゃして、一時期女手当り次第相手にしたけど、そんな時に話が舞い込んで来たんだよ……あ、俺にも好機が来た、とね」
フェリクスは、メリッサへの片想いを打ち明ける。子供の頃から見目と違い、活発でお転婆なメリッサが好きだった。落ち着きがなく街中を走り回り、街の者達を明るくさせた太陽の様な少女だった。のびのびと育っていくメリッサに同世代の男の子達は、恋心を募らせた者も居る。
「メリッサ、可愛くなったよなぁ」
「うん、可愛い可愛い」
「俺の伴侶にならないかなぁ?」
「馬鹿か、お前!俺だよ!」
友達のそんな声も聞こえる昨今、フェリクスはメリッサの家に買い物に行くと、メリッサは店の隅っこで泣いていた。店の周りには商品が散乱している。
「あれ?メリッサ……何で泣いてんだ?」
「!!………フェ、フェル!な、泣いてない!」
「店番してんだろ?………如何した?………メリッサ!!」
「だ、大丈夫だってば!………父さんには絶対に言わないで!!何も無かったし!未遂、て言うの?よく分かんないんだけど、アソコ思いっ切り蹴って追い出したから!」
服もボロボロになり、髪もボサボサになっているメリッサ。年頃の少年のフェリクスにはピンと来る。見目がいいメリッサを誰かが襲おうとした、と。
「追い出したんだな?……街の人間か?」
「…………知らない人だった……旅人だって言ってた……」
「怖かったな………頑張ったよメリッサ………店の片付け手伝ってやるから、今は泣け……俺が邪魔しちゃったし……おじさんはまだ帰って来ないだろ?仕入れに行ったんだろ?」
「…………うん……」
「じゃ、今の内に泣いておけ」
メリッサが、顔をぐしゃぐしゃにし、フェリクスに縋りついて泣いたのが最初で、泣きたくなる時は、いつもフェリクスに甘える様になっていったメリッサ。その甘えるメリッサが可愛くて、自然とフェリクスは恋心を持っていった。
「メリッサ、危ないぞ?」
「………でも、枝に…子猫が………」
「………え?………あ、本当だ」
木の上に登って降りられなくなった子猫を救おうと、木登りしているメリッサの、自分の姿を顧みず、下着が見える下から、フェリクスも顔が赤くなる。
「メリッサ!俺が行くから!」
「え!……何?…………もうちょっと…………あっ!」
子猫に手を伸ばそうとしたメリッサが子猫と共に滑り落ち、フェリクスも助けようとメリッサの下敷きになる。子猫はびっくりして咄嗟に逃げてしまい、無事の様だったが、フェリクスがその後捻挫をしてしまう。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「メリッサが無事ならいいんだ、怪我してたら、俺が父さんやおじさんに怒られるだろうしな」
「そんな馬鹿な話ある!?私が危ない事したんだよ!?何でフェリクスが助けたのに、もし私が怪我したら、フェリクス怒られなきゃならないの!?」
「知るかよ………父さんはメリッサに怪我させてたら、俺を殴る所だった、てさ……俺既に怪我してんのに………」
理にかなってない言葉をフェリクスは言われたらしいが、それでもフェリクスはメリッサに怪我が無く安心した。その意味を知るには、メリッサと会えなくなってからだったが、メリッサが武装したエンゲルベルトに連れて行かれたのを目にしたフェリクスは、もうこの初恋は終わったのだ、と思わずにいられなかった。
「………………どうなってんのぉ!!!誰か嘘だと言って~~~~~!!」
「メリッサ様、パニックになられとるぞ?」
「お忘れのようだな、2歳迄王宮に住んどったのに」
「2歳じゃ忘れるわ!」
「ははははははっ!!」
そんな声が聞こえ、胸騒ぎがしメリッサに近寄ろうとしたが、フェリクスの父親に止められる。
「何でだよ!!何でメリッサが連れて行かれるんだよ!父さん!」
フェリクスの父親は首を横に振る。
「諦めるんだ………メリッサは……いやメリッサ王女殿下は、これから先女王になる為の教育が待っている」
「…………王女………?嘘だ!王女なんて!」
「王女なんだよ!この街はメリッサ様の為だけに作られた街………今からこの街は取り壊す………お前も父さん達とゲーデルベルク、首都に帰るぞ」
「…………首都……」
「首都にメリッサ様は行かれた………何れまた会える時は、女王陛下になっている筈だ」
雷が落ちた様な衝撃が走る。もう会えなくなるどころか、雲の上の存在になってしまった初恋の少女を諦める事を余儀なくされたフェリクスだった。
しかし、転機が訪れる。メリッサが婚約者候補を募集すると聞き、何とか自分も、とその応募をしてみる。しかし、夫となる条件には当てはまらないフェリクスに、エンゲルベルトが会いに来た。
「メリッサ王女の幼馴染に通達をしているのだが、メリッサ王女の夫になる気はないか?フェリクス」
「…………は?……会えるのか?メリッサに……夫になれるのか?」
「挑戦してみるか?」
「…………あぁ………メリッサに会えるなら……」
そうして、かつての幼馴染で友人達を蹴落とし、フェリクスが婚約者候補に名乗り出たのだった。
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