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那由多の進路

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「京、晩御飯準備手伝って。」
「は~い。」

 TVを見ていた那由多と京に母は声を掛けた。
 那由多と京は寄り添ってTVを見ている様はまるで恋人同士。 
 それを阻止するかの如く邪魔をする母。

「今日の晩御飯何?」
「今日は鰤が安かったから、鰤大根。」
「え~、鰤の照り焼きがいいなぁ。」
「鰤の切り身じゃないのよ、粗の部分だから。」
「……ま、いっか。お母さんの鰤大根美味しいし。」

 TVを見ながら、母と京の会話を聞く那由多。
 まるで嫁姑のように感じる那由多。
 そして、兄妹な事を恨む。
 何故、好きになった相手が妹なのか、と。

「ただいま~。いいにおいだな、お腹空いたよ。」
「お父さん、お帰りなさい。今日は鰤大根だよ。」
「本当か?」
「お父さん、鰤大根大好きだもんね。」
「早く着替えてくるよ。お母さん、今日は日本酒を頼むよ。」
「はいはい。」

 仲の良い両親。
 その両親から何故、近親相姦になりうる兄妹になったのか悔やまれた。

「那由多、進路決まったのか?」
「………うん、志望校はA高か、M高か、K高、滑り止めで私学のT校にしようかな、て。」
「凄いじゃないか、名門校志望するのか。」
「…………だけど、通うの大変だよね、それならG県立の高校のが通いやすいかな。志望校は全てN市だし。」

 夕飯を食べる間は家族団欒の時間だった。
 会話を楽しむ家族だが、本音は隠す母と子煩悩な父。
 京は那由多の志望校には不満だった。

「何でそんな遠い高校行くの?ここからじゃ、電車乗り継いで地下鉄乗らなきゃならないじゃん!」
「少しでも偏差値高い高校のがいいんだよ。」
(そう、少しでも京と離れていかないと、母さんに不信がられている今、京を傷付ける。)

 今の那由多では、京を守れないと思うからか、少しでも認められるように努力するしかない、と精一杯の抵抗だった。

「行きたい大学でもあるのか?那由多。」
「………出来ればT大かK大に行きたい。国立大だし、大人になった時、就職の幅効くだろ?」
「那由多は将来やりたい事は無いの?」
「やりたい事?」
(やりたい事は一つしかない、京と一緒に居たいだけだ。)
「……まだ決め兼ねてるよ、安定した公務員だっていいし、起業したっていいと思ってる。」
「そうか、視野を広げ、やりたい事を見つけろよ、那由多。父さんは応援してるから。ただ、道は外すなよ。」
「………分かってるよ、父さん。」

 食事も終わり、自室に戻って宿題をする那由多と京。
 お互いの気配を感じる唯一の場所がお互いの部屋だった。
 兄妹で愛し合う日は夢のまた夢。
 せめて、家で過ごす間だけは家族で居たいのに、欲望に駆られてしまう那由多。
 京もまた、壁1枚隔てた先に居る那由多を思うのだった。
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